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モノクロの世界で、愛を語る  作者: 一色 サラ


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03

 陽菜に事前に何の情報も伝えてくれなかった杏子に騙されてしまった気がして居心地が悪かった。健介と別れたことは言っていたし、仕方がない。でも、健介と別れてまだ2週間しか経ってない。新しい男性と出会うことなんて、望んでいなかったはずだ。

「まあ、まあ。今日はただの食事会と思って、陽菜ちゃん」

杏子の彼氏らしき人に、馴れ馴れしく名前を呼ばれて、何となく嫌な気分になってしまった。どこか騙された気分がおさまらず、座ることにためらいを覚えてしまう。

「陽菜、座って、お願い。」

「ごめん」

床のカゴに荷物を入れて、席に座った。

「陽菜、こちら、私の彼氏の城川しろかわ蒼馬そうま。で、こっちが碓井うすい紺来こうきくん。美術講師だよ。よろしくね。で、私の友達の朝代陽菜ね」

「いや、非常勤だけど」

 碓井と呼ばれた男が、ぶっきらぼうに言った。少し空気がピリつくのを感じた。

「まあまあ、挨拶はそれぐらいでいいじゃない。蒼馬って呼んで、こいつは紺来で」

 杏子の彼氏である城川に、その場の空気をどうにかしようとはしているがうまくいっている様子はない。

「もう注文したの?」

「うん。適当に頼んだよ」

 目の前に座っている碓井が言った。

「紺来くん、また痩せた?」

「さあ、生きてはいるよ」

「まあ、こいつはいつものことだからほっとけばいいよ」

 3人は普段から会ってるような感じで、出来上がっている関係性の中に、何も知らない陽菜は居心地が悪かった。

「まあ、食べるの面倒だし」

「そうなんだ。ちゃんと食べたほういいよ」

 3人が仲良く話しているのを聞いていると、陽菜はここにいることが場違いな気がした。どこか愛想笑しようとするが顔が固まって3人の会話が流れて、陽菜はただ顔と気持ちが引きずっている。この場にいることは正解なのだろうか。

 「お待たせしました」

 ウエイターがテリーヌをテーブルの置いた。コンソメゼリーの中に海老とオクラが入っているのが見えた。

 あまり食べたことがないけど、海老のプリっとしたてオクラもシャキシャキな歯ごたえで、ほんのりコンソメの味がして美味しかった。

「陽菜、おいしい」

「うん」

 隣に座る杏子を見た。皿のテリーヌはあまり減っていなかった。何となく恋人同士の杏子と彼氏である城川が話を振ってくれて、最近のテレビの話題やニュースなど、世間一般的な話題をして、その場はある程度の空気で進んいくのを感じていた。そして、陽菜と碓井は直接、会話を交わすことはなかった。碓井は、ただ会話を受け流しているようにも見えた。それから、バスタや魚料理などが運ばれてきて食べていた。それに、最後の林檎のジェラシートが本当に美味しかった。

「紺来、陽菜ちゃんのことよろしくね」

「えっ、1人で帰れます」

「まあ、まあ。紺来のことよろしくね」

 城川と碓井が、すでにお金を支払っていたようで、すぐに店を出れてしまった。

「じゃあ、陽菜また連絡するね」

待ってと引き留めるも、杏子は城川の腕を組んで、歩いて行ってしまった。

「どうする? 家来る?」

「えっ、それはできません。1人で帰ります」

「一応、来てくれない」

 このまま、逃げるように帰ってしまったら、杏子に合わせる顔がなかった。杏子は碓井に着いていくしかなかった。タクシーを停めて、後部座席に2人で座った。碓井は行き先を告げたが、陽菜は住所を教えていない。

「あの、家に帰りたいんですが」

「ああ、ちょっと寄りたから」

 そのまま、窓の外を見るし話しづらい空気が流れてきて、陽菜は帰りたいと言っても帰るきがしなかった。運転手にも話しかけることもなかった。

 陽菜も何を聞いたらいいのかもわからなかったので、大人しく座って行く末を考えるしかなかった。窓の外眺めてながら、なんで、杏子は碓井を陽菜に会わせたかったのだろう。何となくモテそうな感じがして、陽菜とは釣り合わない感じない。 今まで付き合ったのが健介しかいないので、健介としか比較する対象がいなかった。健介はどちらかというと明るいというか、楽観的な感じがして、ただ頼りがいはなかった。碓井は、もの静かなで多くを語らないが、なんか大人の落ち着いた雰囲気を醸し出している感じがした。やっぱり比較できないほど、ただ、健介に物足りなさを感じて別れてよかったという考えが頭によぎってしまった。

タクシーが停まった。

「じゃあ行こうか。」

碓井は先に降りて、先を歩いていく。そして高層マンションのエントランスに入って行く。

「ここに住んでるんですか?」

「まあね。」

スタスタと陽菜を置ていくように、碓井は先に歩いていく。寄りたいところが碓井の部屋と分かったのに、陽菜は付いてきたしまった。陽菜は自分の判断が分からくなってしまっている。1人の部屋に戻ることが嫌だったのだろうか、それとも碓井に興味があったのだろうか。自分の判断に答えがでない。

エレベーターのドアが開いた。

「乗って」

碓井に先導されて、エレベーターに乗った。12階のボタンが光っていた。12階に着いて、ドアが開いた。左右を確認すると、ただ広い廊下がずっと続いていた。

「そんなにキョロキョロしないほうがいいよ。で、部屋はこっちだよ」

「あ、ごめんなさい」

1202と書かれた部屋で碓井は止まって、鍵を開けた。

「まあ、入って」

碓井は部屋の中に入って行った。仕方なく、陽菜も入るしかなかった。玄関のようなものはなく、土足のまま部屋に入ることができた。入ってすぐ廊下もなく、ただ広い部屋が広がっていた。そこには、小さな棚と2人用のダイニングテーブルと椅子1脚しか部屋に置かれていなかった。そのほかにドアが2.3個かドアがあった。たぶん、寝室とお風呂とトイレだと思う。全面がコンクリートの壁で覆いつくしていた。なので、少し寂しい空間に思えてきた。電気はつけても、少し暗くて物寂しさがある気がした。

 陽菜は今更でけど、何でこんなに警戒心がないのか不思議だった。知らない男の人の部屋なのに、なぜか怖さがなかった。殺風景で、ほとんだお、何もない部屋。

「物を置くのが面倒なんだ。絵を描くのが好きだけど…」

「でも、絵を描く道具も、置いてないんですね…」

「ああ、絵は違う場所で描いてるから、違う場所に置いてある」

 それ以上は話が続かない。沈黙が始まった。2人きり、だんだんと空気が重くなっていくのを感じる。

「あの、今年で何歳になったんですか?」

話題が見つからず、そういえば、聞いてないかもと思って、年齢を聞いてしまった。

「26だよ。まあ早生まれだから。来年の2月で27になるけど。それが何かあるの?」

 陽菜より20㎝ほど碓井は身長が高かった。見下ろされている態勢で、キョトンとした目が陽菜に映る。

「えっーと、何もないです。さっき、レストランで、年齢を聞いたなかったなと思っただけです」

 恥ずかしくなった。下を向くが、顔が段々と熱ぽくなっていく。

「まあそうだね。女性は年齢が大事みたいだね。よく年齢聞かれるよ。僕は」 

「こんな高層マンションに住んでいたら、生計立てるの大変そうですね」

 思い浮かんだ言葉がどんどんと出てくる。

「そうでもないよ。生計が立てられないから、絵の教室で教えてたり、高校で非常勤講師をしてるんだけどね。」

ボソッと、淡々と一音一音しっかり聞こえるように、碓井は話す。

「陽菜ちゃんは、どんな男性が好みなの?」

「何ですか?その質問。」

「はい」

冷えたビールの缶を渡された。いつまにか、冷蔵庫から盛って来ていた。

「僕もよく分からないんだよね。恋愛が不得意で、乾杯」

そのビールをゴクゴクと飲んでいる。

「何なんですか?」

「白黒は曖昧でいたのよね」

「なんの話ですか?」

碓井は笑って、窓の外を眺めていた。漆黒な夜空が広がっていた。

「俺と付き合ってみる?」


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