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人魚姫の末路  作者: 妹明
3/10

人魚の石

 「まぁ、元々は人魚がこれを常に持っておかないと死んでしまう。まぁ、一心同体みたいな物だよ」

「へぇ~。でもぼく持ってないよ? それになんでその石が人間の手に?」

「あんたさ~、一応人魚なんでしょ? だったら、それくらい知っとけよ」

「え~! 教えてくんないの?」

「教えるよ!」



 さっきの伝説。実は本当のことで、生物=人魚なのだ。

あの石は本来その人魚の命の綱だったのだが、その人魚は知っていた。

その『人魚の石』に力を注ぎこめばこの石との契約が切れ、

石を他人に渡しても問題がなくなることを。

そして、その石は所有者の身を守ったり、本気で願う願い事を叶えてくれるのだと。

あるものを引き換えに……。


それは、その世界では禁忌(タブー)とされて来たことだ。

禁忌を犯せば大切なものを失うのは当然だ。その、大切なものは―――――。

自分自身の命だった。

数週間後。人魚姫は死んでいった。



 「ふ~ん。可哀そうに。って言うかさ、なんで千珠(せんじゅ)がそんなことを?」

「昔、って言ってもあっちで5、6年前のことだけど、聞いたのよねぇ~。知り合いに」

「へぇ~。じゃぁ、この石は持ち主のもとに帰って来たみたいなもんなんだ!」

そう言いながら、机の上にある石を指でコロコロ回した。

机に突っ伏していたから目の高さでコロコロ遊んでいたら、鐘の音がした。


 その音に驚いてあたりを見回すと、

昼間電気をつけていないこの部屋は真っ赤に染まっていた。

「夕方の鐘だ。帰らなきゃ。心配されちゃう……」

「送っていくかい?」

「ううん。大丈夫。今日はありがとう! また来るね」

「ああ。こっちに誰も知り合いいないから暇なんだ。また来ておくれよ!」

そう言って手を振ってくれる千珠を見ながらゆっくり、ドアを閉めた。



 帰り道、ついでなのであたりを見ることにした。って言っても帰ってるので

あまりゆっくり見れるわけじゃないけどね。

街の小さな女の子が私の服の袖を引っ張ってきた。

「?」

「……知らない子だ」

「??」

「マンク兄ちゃんが言ってた、人魚さん?」

「……まぁ、ね」

そう答えると、女の子の顔色が一気にパァっと明るくなった。

「あたし、スイラ。マンク兄ちゃんによろしくって言っておいて!」

「マンク様のお友達?」

「ううん。お兄ちゃんがお友達。同じ武術の稽古場に通ってるの」

「そうなの? じゃぁ、言っておくね」

「うん!」


 「その必要はないぞ!」

後ろから聞いたことがある声がして、振り返ると

「な……?」

「あ! マンク兄ちゃんだぁ~!」

その声に街の住民たちが一斉に反応して振り返った。そして

「よぉ! 久しぶりだな。マンク! 元気してたか?」

「元気だよ!」

「これ、この前頼まれた帽子だよ。サイズは合うかい?」

「……うん! ピッタリ。流石、街一番の帽子屋だな」

「シャルネのところしかないんだけどね~」

などと、笑いながら話してた。それを見て、あ……本当に、あの人は一人じゃないんだって思った。


その様子をただただ茫然と見てたら

「何してるんだ? リロス、お前もこっちに来い!」

そう言ってマンクは手を差し伸べてきた。

一瞬……本当に一瞬だけだったけど、大人っぽく……王子様らしく見えた。(本当に王子なんだけど)

若干震え気味の手を軽く置いたら、その手をしっかり握り、その握った手をそのまま上に突き上げ

「皆の衆! よく聞け! この少女がこの国を救う救世主様だー!」

と、大声で叫んだ。

「ぅえ!? ちょ、ま……」

「名をリロス・アントアネットという! みんな仲良くしてやってくれ!」

とまた大声で言った。一瞬にして、顔が熱くなった。それ以上に握られた手が熱かった。


手を下した直後、さっきの勢いで周りに街の人々が一斉に集まり

「ねぇねぇ、今度綺麗なドレスを仕立ててあげようか? 君に似合うやつ!」

「稽古場に遊びにおいでよ!」「帽子をおひとついかが?」

「これ、この世界のリンゴ! よかったら、後で食べて」

「これはうちが育てた花なんだ。良かったら貰って!」

などなど……色んなものをもらったり、色々話しかけたりで大変だった。



 お城に帰れたのは、千珠の家を出て約2時間後(本来なら10分程度)のことだった。

「あれ? マンク様、お部屋に戻られないのですか?」

お城に帰って、ぼくの部屋にずっといるのを疑問に思って聞いてみた。

「え? なんで? だって、ココ俺の部屋だもん♪」

「……え? ぼ、ぼく部屋を間違えましたか!?」

「ううん。ここは、リロス。お前の部屋だよ。だけど、俺の部屋でもある。それだけ~」

そう言いながら笑ってこっちに向けてブイサインをしてきた。

それに呼応するかのように、顔が熱くなるのを感じた。


「で、でも……ここって部屋数かなり多いじゃないですか。なのに……相部屋って」

「え~! いいじゃん。ここって、使用人たちにも個室部屋があるから、結構限界迎えてんだよ」

「だ、だったら、せめて使用人様たちの部屋を……」

「でもさ、個人部屋って契約内容にあるしね。俺は相部屋でもいいんだけど。嫌だったか?」

「め! ……滅相もございません」

「よかった!」

また、笑った。

なんだろう……? あの人が笑うたびに、顔がどんどん熱くなった。



 ―――――――――深夜。窓を開けると、海風に煽られて長い髪が揺れた。

王子はもう眠った。静かに、誰にも気づかれないように、小さなバルコニーから飛び降りた。




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