石と友達
「たす……け?」
「そう。助け」
「……ぷ。あはははは~……あのさぁ、こう言っちゃぁなんですが、
生憎ぼくは人を助けるために使う技なんか持ち合わせちゃいませんよ~」
そう言って大爆笑し続けた。
ぼくが、人を救う? 笑わせないでよ……人の為に闘う術なんてぼく知らないよぉ!
そう内心思ってた。なのに、男と女は顔色一つ変えずに言った。
「いいえ。変えられるわ。貴方ならきっと」
そういいながら、2人は一段一段丁寧に階段を下りてきた。それと同時にぼくの笑い声も消えた。
「だから。そうだと思ったから君をわが息子に迎えさせた」
「あ~。マンクさん……でしたっけ?」
「そうだ。そいつまで、借り出して行かせたってことは我が国は本気だ。頼むこの通りだ」
階段を下り終えた2人はぼくに頭を下げた。
人間が頭を下げる図をぼくは初めて見た。
でも、優越感に浸る気にもなんとなくなれなかった。
「条件は?」
「やってくださるのですね?」
「条件次第。生贄になら意地でもなりませんよ?」
「大丈夫です。ただ、この石を持っていただければ……」
そういいながら、男が渡してきたのは
白にほんのり水色をいれたような色の小さな水晶玉だった。
「なにこれ? 真珠じゃないもんね?」
「時が来れば、分かります」
「ふぅ~ん。それだけなら、いいですけど」
「ありがとうございます! マンク!! この方を部屋へ案内させないさい!!!」
「ん? ほいほぉ~い。了解でございますよぉ~! 母上」
そう言って、ぼくの手を引っ張って部屋をあっさり退却した。
「リロスが、あの仕事請け負ってくれてよかった」
「なに? あの石。呪われてでもいるんですか?」
「いやいや。呪われてたら、今頃父上死んでるじゃん?」
「まぁ……そうか」
「いやさ。俺さ、城内からあんまりでないから友達がずっと家にいるみたいで嬉しいんだよねぇ~!」
歩きながら、マンクは背伸びした。
「……。友達、いないのか?」
「いないわけじゃないよ。外に出れば沢山いるけど、父上と母上が許してくれなくってさ~」
「へぇ~……」
そうこうしてるうちに、部屋に着いた。
この家ってか、城って広すぎてどこに自分の部屋があるか分んなくなりそうだ。
「さ、入って」
そう言ってマンクはドアを開けてくれた。
「ありがとう」
「広すぎて、迷子になったら召使の誰かに聞くといい。誰でも優しく答えてくれるから。じゃぁね」
そう言って、ドアをパタンと閉めた。
「さて……あの子に会いに行くとするかね」
僕は部屋のドアを開けた。
この国のはずれにある森の中の小さな小屋。
木製で、暖かそうなその家のドアをたたいた。
すると、10秒もしないうちにドアを開けた人物がいた。
「こんにちは。リロス。久しぶり。この世界じゃぁ、もう15年が経っちゃったわ」
「本当ね。でも、変わりないようね。千珠」
千珠は、化け狐なんだよね。でも、この世界の最初の友達なんだ。
まぁ、妖怪だと知ったときの衝撃は計り知れなかったけどさ。
「まぁ、立ち話も何だから入りな」
「お邪魔しまぁす」
後ろにあるドアに指をひっかけ閉めた。
「んで? あんた、久しぶりに来て何か御用?」
「やー。あのね」
と、一連の素性を話してみたところ……
「はぁ!? 暫くこっちに住む事になったぁ!!? しかも、人間の家で?」
と、勢い良く叫ばれた。
「う、うん……。怪しい奴らじゃないし。この近所の城の住民さんだったみたいだし……」
「近所? あ~。ヴァレリア国? まぁ、いい奴らばかりだけど……」
「なに?」
「変な言い伝えがあるんだよねぇ~。しかも、あんたに関係した!」
「え? ぼくに??」
「いや、直接的に関係してるかどうかはあれだけど」
昔、ヴァレリア国の近くにある海に深夜に行った者がいた。
すると遠目ではあったが上半身は人間、下半身は魚の姿をした生物がいた。
その生物は、哀しそうな声でいつも歌っていたという。
聞いたこともない歌だったという。綺麗で、透き通ったその声で、
はっきりと聞こえたのはこの一言だけだったそうだ。
「もう一度、逢いたいの。あの人に……」
暫くして、その生物を見た青年の一人は生物と会話をしてると噂になった。
いつしか、恋に落ちたとも噂になった。
その噂が流れるのとほぼ同時期に、その生物は消えた。
青年に不思議な石を残して……。
数年後――――――。国に大きな自然災害が訪れた。
青年は、逃げ遅れもう助からないと思われたが、
瓦礫の下から自力で這い上がり、ほぼ無傷で助かったのだという。
その時、青年は言っていたそうだ。
―――この石が光るのと同時に自分に降りかかってこようとする瓦礫は、
全て何かにはじかれたように自分を避けた。
と。それ以来、石は全てを守る救世主とされた。
上手く力を使いこなせれば、この世のどんな災難からも救って下さると……。
それには、力を持つものが必要になる。
そう。この石を青年に渡したあの生物のように……。
「だから、不思議な力を持つ者はその石を持たされ国を守るように命じられんのさ」
「ふ~ん。でもさ、その言い伝え。前半部分はどこかで聞いたことがあるような……?」
「へぇ~? どこで?」
「……忘れた」
「あんたねぇ。ってか、貰ったその石。見せてくんない?」
「あ、いいよぉ~」
そういいながらガサゴソとポケットの中をあさって、すぐに石を取り出した。
そして、千珠の手のひらにそれを置いた。
「随分、小さいねぇ~。でも」
「でも?」
「あんたに似てるね。流石、人魚の石だけあるわ~」
「人魚の石?」
「そ。人魚の石だよ」
「なに? それ……」
「それはね……」




