前哨戦
知ってる?
人魚姫の肉を食べると、
不老になれるんだって……。
そして、永久の命も手に入るそうだよ……。
「大丈夫? 怪我は?」
「……平気」
「ほら、手を貸して。俺の家に行こう!」
「……嫌」
「なんで? お母さん、待ってるとか?」
「違う。殺すんでしょ? あんたも」
「は……?」
「殺して、ぼくの肉を食べたいんでしょ?」
ぼくの肉を食べれば、不老に長寿命を得ることが出来る。
だから、みんなぼくを殺そうとする。そうしてぼくの肉を……。
「なんで、そんなことしなきゃいけないの?」
「なんで、ぼくを殺すんじゃ……?」
「だって、こんな死にかけの状態の子供殺してどうするの?」
そう言って手を差し伸べた人間はぼく以上の異常人だった。
「名前は?」
「リロス……です」
「俺は、マンクだ」
「……おかしな名前」
彼の握られた手は、暖かかった。
ぼくの手っていつも冷たいから他人の体温を感じやすいんだ。
でもね、この人の手は今まで握った人の誰よりも暖かくって優しい手だった。
その人の家は、豪邸……って言うか城だった。
赤い帽子とメタボリックな体型が特徴的な
世界一有名な配管工さんが、大好きなお姫様が住んでるお城にそっくりだった。
「リロス。ココが今日からお前の家だぞ! いいな?」
「……はぁ」
マンクは嬉しそうに手を引っ張ってぼくを城に迎え入れた。
「ウィリス。この子にあの服を」
「かしこまりました」
ウィリスという名のメイドはニコニコしながら、ぼくを着替えさせた。
無言で……。
「リーロース! 着替え終わった? わっ! やっぱ、すんごく似合ってる」
着せられた服は、深海のような青色に真中を裂いたように入った淡い水色が綺麗なドレスだった。
「あ……のぉ?」
「ん? なぁに? リロス」
「これ……は、一体?」
「ん? お母様が予言したの。お前が今日この城に来るって!
だから持成してんの」
「……はぁ」
いらないお持て成し。だな。だって、こんなことしたって見返りなんてないのに。
意地でも、ぼくは死なないから。肉は絶対に渡さない。
でも、それとは関係ないことでぼくは『重要』になる。
着替えてすぐに、ぼくは『国王の間』という所に案内された。
そこには、何段あるか分からない赤絨毯付き階段の上にある
立派な椅子に座った中年くらいの男女がいた。
まず、女の方が口を開いた。
「待っていましたよ。リロス・アントアネット。いいえ、可愛い。人魚姫さん」
「……ぼくは、死にませんよ。絶対に」
「まさか、人魚の肉が目的だと思いで?」
「違うのでございますか?」
次に男の方が口を開く。
「リロス殿。我々は貴方様に助けを求めているのです」
「た……すけ?」
場の空気が一瞬にして固まった。




