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第09話 瑞をバイクに乗せてGO!

 葉月たちと出会って一週間たったが、動きはなし!

 ある日の朝、私は荷物を用意して出かける用意をしていた。

 準備を整えて鏡を見ると、自分の姿が目に映る。 (かた)がけカバンを背負って、キャップ帽子をかぶった私の姿だ。

 上半身はチェック(がら)の半そでを着ていて、下半身は普通のズボンである。 ダサいのかもしれないが、私はこれでいいのだ。

 というか、『(まち)に出ても目立たない格好』を目指してるのであって、別にオシャレしようとしてるわけではない。

 別に、逮捕されないなら素っ裸でもいいんだけど。 ……いや、さすがにそれは無理か。


 私はレンタカー屋に行くと、ありったけの金をつぎ込んでどでかいバイクを借りた。 公道に出ると、爆速で走りだす。

 ファァアアァァッッッっっ!!!!!!wwwwwwwwwww気持ちいいいいぃぃわあああああああああああああああっっっ!!!!!!!!!!!!!!!

 あぁ、この快感よねぇっ!! 私はバイクが好きなのだ。 特にデカいバイクをギュルギュル言わせてるときに、生きがいを感じるのである。

 高速で流れていく景色と、吹きつける風っ! あぁ、最高ねww


 葉月と一言だけメッセージをやり取りしてから、また数日がたった。

 結局、返事はなく、何事もなく日々が過ぎ去っている。

 気にはなるけど、仕方ない。 『部長』じゃない私にできることは、待つことぐらいな気がするのだ。


 今日こうして出かけているのは、小説の取材のためである。 目的地は、この町から少し離れた山にある神社だ。

 今書いている小説の中で、その神社をモデルにした神社を出そうと思っているのだ。


 夏の青空のもと、バイクの振動を感じながら、私は運転していく。

 向こうの方に、未来的で綺麗(きれい)な学校の校舎が見えてきた。

 あれは、二見(ふたみ)さんの学校だ。 ちょうど前回、会合をした辺りの地域を走っていたようだ。 私は意味もなく、なんとなく近寄ってみることにした。

 校舎に近づくと、二見さんの学校はやはり未来的な雰囲気(ふんいき)だった。 校舎はガラス張りで、キラキラと太陽の光を反射している。

 敷地(しきち)自体は広くはなく、校舎もそこまで大きいわけではない。 後で調べると、設立されてからそんなに時間も経っておらず、ほぼ新設の高校らしい。

 私の通っていた、ネズミや猫が通る穴すら放置している、あのホコリっぽい高校とは雲泥(うんでい)の差である。


「へぇー、すごっ……」


 私は思わず驚きの声を漏らしながら、校舎の横をバイクを押して歩いていく。

 見ると、授業中の教室の様子がほんの小さく見える。 あら、授業中なの。 夏休み中だが、補修(ほしゅう)か何かで授業をやっているみたいで、生徒の姿は普通に見えるみたいだ。

 ……と思ってると、見覚えのある姿が見えた。 ちょうど窓際の席に、最近見た女の子の姿が見える。

 よく見ると、二見さんだ。 なんてことだ、なんか運命を感じるっ!

 二見さんは何をするわけでもなく、普通にぼうっと授業を受けているみたいだ。

 まったく、最近の若いのは無気力ねぇ。 あんなので40分もただ座って過ごすのかしら。 ……って授業なんだから当然か。ははっ!w


 二見さんを見つけて、私は意味不明にテンションが上がり、彼女と交流したい衝動(しょうどう)にかられた。

 でも交流するって言ったって、どうするんだろう? ここからだったら、(さけ)ぶしかないじゃんっ!w

 周りを見ると、誰もいない。 この通りは大通りの反対側で、車の通りも少ないようだ。

 私はワクワクしながら、思い切って叫んでみたっ!!


「二・見・さーーーーんっっ!!!!!」


 結構大きな声で呼んだが、微妙(びみょう)だったみたいだ。 声の反響が小さい。 自分の耳にだけは響いているのに、周囲の環境には響いてない感じだ。 あれ、まだ足りないのか。

 えーっと、二見さんの下の名前って何だっけ? たしか『二見(ふたみ) (みず)』とかだった気がする。

 私は今度は、思い切って名前を呼んでみたっ!


(みず)ちゃーーーーーんっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!」


 ありったけの声を出して名前を呼ぶと、二見さんが反応した。 顔をこっちに向けて、私のいる道路を見つめている。

 キャーーーーっ!!瑞ちゃーーーーんっ!!!!!www 私はテンション上がって嬉しくなり、大きくブンブンと手を振った。

 私が交流をしていると、道の向こうから、人が歩いてくるのが見えた。 あっ、ヤバッ!!w 警備員の人だっ!

 警備員のおじさんは走ってくると、私に話しかけてきた。


「君! 何してるの?!」


 すみません、の言葉がとっさに出ずに、私は(あわ)てて挙動不審になる。 同時に、校舎の方から紙飛行機が落ちてくるのが見えた。 二見さんの教室から落ちてきているようだ。

 まさか、二見さんが紙飛行機で返事をしてくれてるのかもっ!!?

 私は近づいてくる警備員をすり抜けて、思い切って校門の中へと飛び込んでいった。


「あっ、君いいぃぃっ!!! 待ちなさいっ!!」


 校門からほど近いところに、紙飛行機は落ちてきた。 拾い上げて中身を見ると、『待ってて』と書かれている。

 待ってて? どういうこと、もう授業が終わるのかな。

 私はのんきに考えていると、警備員のおっちゃんが私の(うで)を捕まえてきた。


「おい、何してんだ。 いい加減にしろ!」


 低い声の圧力が、ズシンと体に響いてくる。

 ぎゃーっ!怖いっ!!w でも仕方ないのよ、許してええぇぇっ!!ww

 私はおじさんともみ合いになりながら、身振り手振りで謝った。


 警備員のおっちゃんの頭から蒸気が出ているのを置いて、私は校門から少し離れた。

 終業を知らせるチャイムが鳴った。 授業が終わったみたいだ。

 私は言う通りにして、そのまま待つことにした。 バイクを学校のそばで()めたまま、フェンス越しに、グラウンドや校舎を(なが)める。

 少しすると、校舎の奥の方から一人の女の子が走ってきた。 二見さんだ。


黒縁(くろぶち)さん、何やってんの?!!」


 二見さんは走ってくると、フェンスに勢いよく手をかけて聞いてきた。 少し高い位置にグラウンドがあるため、ほんの少し見上げながら私は答える。


「いやー、なんとなく。 姿が見えたから、思わず……」

「今、何してるの?」


 二見さんは、私の後ろにあったデカすぎるバイクに目をやって、怪訝(けげん)な顔で聞いてきた。

 私はバイクの方に振り返りながら、説明する。


「えーとねぇ、これから小説の取材に行くところで……」

「ちょっと待っててっ!」


 二見さんはそう言うと、背中を見せて校舎の方へ走り去っていった。

 あぁ、ちょっと! まったく、最近の高校生は元気がいいわねぇ。 ……って、年は一つしか変わんないでしょ。 最近自分がおばさん臭くて嫌になるわぁ。ははっ!w

 スマホを取り出して時間を確認すると、まだ11時にもなっていない。

 高校の時間割って、どんなんだっけ? 私はもう忘れたけど、まだ3時間目ぐらいじゃないの。

 待ってって、どれだけ待つのかな。 言い忘れたが、私はせっかちなのである。

 しかし5分もしないうちに、二見さんはバッグを抱えて全速力で走ってきた!

 あれ、もう授業終わったの? まだ誰も校舎から出ていこうとする人はいないんだけど。

 私は(いぶか)しく思いながらバイクを押して、校門へ近づいていく。

 二見さんは校門に勢いよく近づいてくると、制服を引きちぎるように脱いで絶叫(ぜっきょう)した。


「私も行く””っ”っっっ!!!!」


 目を丸くしてびっくりしている警備員のおっちゃんの前を素通りして、二見さんは校門を全速力で()け抜けてきた。

 私が呆然(ぼうぜん)として何も言えないでいると、すぐに目の前に来て、バイクの後ろに荷物をドカンと置いてくる。


「あれ? 学校終わったの?」

「終わったっっっ!!!」


 二見さんは私の顔も見ずに、制服をブチブチと脱いでいっている。

 この暑い夏というのに下にも着るものがあったようで、暖かくて(やわ)らかい色の薄いシャツを着ていた。 制服を脱ぎ終えると、学校カバンの中に無理やりねじ込んでいる。

 一体、何があったの。 そんなに嫌なことがあったんだろうか。 普通に授業を受けてるだけに見えたけど。

 こんなに勢いのある子だとは思わなかった。 大人しくて、毒気(どっけ)のなさそうな子だと思っていたのに。

 ヤバいわね、この子。 思ったよりヤバい子かもしれない。


「でもヘルメット一つしか無くて……」

「いいから!! 早く行ってっっ!!!!」


 二見さんは(はげ)しくどつくように言うと、バイクに大足を上げてまたがってくる。 おぉ、なかなか豪快でいいじゃない。 気に入ったっ!w

 私は自分のヘルメットを二見さんに被せると、アクセルを踏んで走りだした。

 風が激しく吹き付けてきて、また圧倒的な快楽に頭が支配されるううぅぅつっ!!!ww

 二見さんは、私の体をぎゅっと抱きしめてきている。 体全体を通して温かい体温が伝わってくる。 予想外の方に細かく動いてきて、思い通りにならないような、生物らしい刺々(とげとげ)しさを感じる。

 あぁ、人に抱きしめられたのなんていつ振りかしら。 心臓が高鳴るわ。



 町を離れて走っていくと、景色は田んぼが広がってきた。

 暑いのに、田んぼの空気が心地よく感じる。 泥臭(どろくさ)くて、でも軽やかな(にお)いが全身に行き渡っていく。

 運転してるだけなのに、いつの間にか息が上がり、呼吸が乱れてくる。

 心なしか、後ろの二見さんの心臓の音が聞こえてくる気がする。 どんどん早くなってきているように感じられる。

 あー……。そうめん食べたいわ。(黒縁)

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