第10話 山の神社で景色を見ながら話そう!
二見さんが学校から出てきた!
バイクに乗せて、レッツゴー!
しばらく走って、目的の場所にやって来た! 私たちは山のふもとに来ると、バイクから降りていく。
山のふもとから、石段が頂上にかけて続いていた。 二見さんはバイクを降りて山を眺めていたが、荷物をまとめている私に聞いてくる。
「ここ?」
私は頷いて返事をすると、荷物を持って山に向かって歩き出した。
石段を歩き出すと、空気が変わった。 8月の真っ盛りだが、でも涼しく感じられてくる。
周りを見ると緑ばかりで、さあさあと、葉っぱがこすれる音が聞こえる。
私たちは黙ったまま、自然の音を聞きながら石段を歩いていった。 二見さんは体力がないのか、すぐに息を切らし始めた。
そういえば、ここ一週間で二見さんの小説も読んだ。
二見さんも弱小ながら、固定読者をいくらか持っているみたいだ。 読んでる人の多さは、私と同じぐらいだ。
まだ高校2年生なのに、社会人の副業レベルで稼げてるなんて、いかにもこの『小説大時代』らしい。
でも、内容はよく分からなかった。
ファンタジーではなく、普通の現実での恋愛ものとか、ちょっとした日常の中での出来事を書いたようなものだ。
内容もテーマも一貫性がなく、主人公たちの行動原理もよく分からない。 現実を舞台にしている作品が多いが、何を言っているのかよく分からない感じで始まって終わるのだ。
たいていは、物語を読むとその作者が抱えているものが分かってくるものだ。 人間関係にイライラしてるとか、解放感を求めてるとか……。 でも、そういったものも強く感じたものはなかった。
私は人を見る目に多少は自信があるのだが、二見さんが考えていることは全く分からない。
書いた小説まで読んだのに、考えてることが分からないとは驚きである。
最初見たときは特徴がないと思ったが、果たして彼女には本当に何もないんだろうか? さっきは学校でイライラしてるような様子だったけど、彼女はいったい何を考えてるんだろう?
私たちは石段を上り、目的の神社についた。
さっそく、神社の周りや境内を歩き始める。 メモ帳を取り出して、気づいたことや感じたことなどを書きつけていく。
二見さんは神社を眺めたり、周りの景色を見たりしているみたいだ。 近くを歩きながら、私に聞いてきた。
「ここって、有名な神社なの?」
「いや、全然。 なんとなく雰囲気が好きそうだったから、来てみただけ」
「へぇ」
私はおおむね書き終えると、メモ帳を仕舞った。 ふと気づくと、神社の近くの古い木造の建物から、人が出てきている。 おそらくこの神社の神主さんだろう。
話を聞きたい。
私は一歩前に歩こうとしたが、途端に不安にかられて引き返した。 二見さんが困惑したように聞いてくる。
「え? 話、聞かなくていいの?」
私は黙って、そのまま歩き続けた。
あー、もうっ! こういう時、私は話しかけられないのだ。
本当は聞きに行って、あれこれ話を聞いてみたい。 でも忙しいかもとか、嫌な顔をされるかもとか、自分がどんな風に見られるかとか、色々考えてしまう。
うまく話を聞ける人は、いくらでもいる。 でも、私がそれをやれる自信がないのだ。
……うまく話せる人は、なんであんなにうまく話せるんだろう?
神社から少し離れたところには、同じ山の中に小さな駄菓子屋があった。 木造で、築100年ぐらいたってそうなボロボロの店だ。 私たちは、そこでアイスを買った。
この山の頂上付近は、見晴らしが良かった。 石段の途中に腰かけて、二見さんがアイスを食べている。 木陰になっているところで、暑さをしのげそうだ。
花を摘んでいた私も一緒に横に座り、アイスを食べ始めた。
風に揺られながら前を見ると、結構高い場所だから、遠くの方まで景色が見渡せる。
私はふと『部活』のことを思い出して、話を始めた。
「あ、そうだ。 葉月と何か話した?」
「いや。 黒縁さんは?」
「うーん、私もほとんどやり取りしてない」
二見さんも話してないのか。 葉月は一体どうしたんだろう? 別の用事で忙しいんだろうか。
私はここ一週間で考えたことを話した。
「部活を学外でするのは別にいいけど、活動場所とか集合時間とかの問題もあるし」
二見さんは理解するように頷くと、違う視点から話し始めた。
「葉月さん、なんで私に声かけたんだろうって。 私と葉月さんの小説って、全然好みが違うと思うから」
確かに、なんで葉月はこの3人を集めたんだろう?
二見さんの言うように、3人とも、まったく違うタイプだし好みを持っている。 私たちの小説を読んで、葉月は何かを感じたんだろうか。
ただ現実での場所が近かったから、というだけではないだろう。
「うーん、そうだね」
「……黒縁さんの小説も読んだけど。 ……ちょっと、よく分かんなかったけど」
話の流れで、私もなぜか言われてしまった。 ぎゃーっ、なんか痛いぞっ!ww
でも、私も正直に言ってみる。
「うん。……私も、二見さんの小説よく分かんなかった」
そう言うと、2人で面白おかしく笑った。 不思議と嫌な感じはしないが、なんでだろう。
お互いの小説を読んだと分かると、私たちの会話は滑らかになった。 まだ会って2回目なのに、スルスルと会話が進んでいく。
「二見さんって、2年生だっけ」
「うん。 本当は、もう受験勉強しなきゃいけないんだけど。……最近、ずっと悩んでて」
「何を?」
「受験のこととか、将来のこととか……」
「ふーん」
「親にも、塾に行けって毎日言われてるし……。本当は、この夏休み中にも行き始めなきゃいけなかったんだけど……」
まあ、そうだろう。 高校2年の夏といえば、進路を決めなきゃいけない重要な時期だ。
最初に二見さんと会った日、公園のテーブルに座っていたが、なんとなく虚無的な雰囲気も感じた。 夏休みが始まっても、塾に行かずに、将来のことで悩んでいたからだろうか。
二見さんは少し黙ると、今度は私に聞いてきた。
「黒縁さんって、退学したの?」
あれ、言ったっけ。 もしかしたら、葉月に聞いたのかもしれない。
それとも、私の小説の主人公が毎回学校やめてるからそう思ったのかな。 そんなことやってたら、さすがにバレるか。ハハっ!!w
私は適当にうなずいた。
「あぁ、うん」
「ふーん……」
二見さんは考えるように頷きながら、遠くの景色を見つめている。 思うことがあるのか、自分の中でその情報を確かめるように転がしてる感じだ。
二見さんは振り返って、唐突に聞いてきた。
「ねぇ、黒縁さんの家に行ってみてもいい?」
「え”ぇっ?」
予想外すぎる言葉に、私は危うく食べていたアイスを落としかけた。
えぇ、どういうこと?! いきなり家を見てみたいって、どういうことだろう。
二見さんは、ただ私を真っすぐに見つめてきている。 相変わらず、二見さんの言動はさっぱり分からない。
私がまごついていると、二見さんは押すように聞いてきた。
「ダメ?」
「いえkm●☆fd%y…………うん、いいよ」
変に口ごもりながら、結局私はうなずいた。
お寿司食べたい。(黒縁)




