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着替えが終わり、外に出て改めて伯爵邸に向かった。一応念のため、俺だけジャケットの下にホルスターを付けてデザートイーグルを入れてある。霞は平気だろうし美鈴は防御する魔法があるので、一時凌ぎであるならば大丈夫だそうだ。


 なるほど、俺だけ攻撃力も無ければ防御力も無かったのか…まぁしょうがない、武闘家や聖女と比べられても困るしな。


 立派な門には門衛が立っている、人件費すごそうだなーと他人事ながら思ってしまう自分がいた。門衛に招待状を見せてみた


「話は聞いている、中に入って良し」


 なんだか随分と偉そうな態度だったが、そんなもん日本でサラリーマンやってりゃなんて事は無い、もっと馬鹿でアホな奴をたくさん見てきたからな。美鈴と霞から少しイラっとした空気を感じたので、背中を押して前に進ませる。


「なにあれ感じ悪い、招待しておいてあんな態度ってどうなの?」

「まぁ落ち着けよ、相手は貴族なんだし、偉そうにしなきゃ死んでしまう病気なんだよ」

「ふふっなにそれ」

「日本でも社会人やってるとな、あんな奴は普通にゴロゴロしてるぞ?」

「そうなの?もし帰れたら私もそんな会社で働かないといけないのかー」

「ま、全部がそうだとは言わないけどな。少なくとも営業職にとって、取引先ってのは横柄な態度をされても言い返せない事情があるからな。どんな理不尽な言い分でもこっちが謝罪する事になるし」


 外門を歩いて行き、建物の入り口らしき豪華な扉の前に着く。そこにも使用人が待ち構えていて扉を開けてくれた


「どうぞ中へ」


 どことなくぶっきらぼうな言い方で中へと入れてくれた。


「これはアレね、伯爵家だから、ここで働いている使用人も貴族なのかもしれないわね。子爵とか男爵家の次女三女って感じかしら、それで私達平民の相手をするのが嫌だけど仕事だしって態度だと思うわ」

「なるほど、そういう事か。こりゃあ中に入ってから何か起こりそうな気がするな」

「もう帰っちゃう?礼をするからって呼び出しておいてこの態度だし、わざわざ付き合わなくてもいいんじゃない?」

「んーどうしようかね」


 わりかし大きめの声で、侍女達にあえて聞こえるように喋る美鈴と霞。まぁあまり我慢のできる年頃じゃないだろうし、日本でこんな態度をされれば速攻で苦情ものだから仕方がないだろうけど、ここは少し抑えてもらうとするか


「まぁアレだ、伯爵にあったら言ってみればいいんだ、招待客に対する対応について。それでも『それが何か?』みたいな態度を取って来たなら帰ろう。邪魔するなら薙ぎ払ってでもな」

「わかったわ、戦闘準備をしておくわ」


 侍女の中にはギョっとした顔をしてた人もいたが、まぁ知った事じゃないのでスルーだな。


 案内されて着いた部屋は、広めの応接室といった感じの落ち着いた部屋だった。それとなく調度品が置かれ、いかにも貴族の屋敷といった感じだ。


「こちらでしばらくお待ちください」


 侍女の言葉に軽く頷き、待つ事にした。


「貴族の言うしばらくってどれくらいなんだろうね」

「気づいたら明日の朝だったりしてな」

「ありえそうで怖いね。というか、私達が日本人だからそう思うんだろうね。時間に追われて生きている民族だもんね」

「それはあるかもしれないな、待たせたり遅刻したりすると白い目で見られるからな、日本だと」


 この部屋に通されてから10分ほど経ったが、一向に現れる気配は無い。まぁ招待されたのは夕食だから、料理の準備とかあるだろうし、伯爵家での夕食の時間ってのもあるだろう。しかし応接室らしき部屋に通されてからお茶すら出てこない、出すまでもない客だって事なんだろうな


「おじさん、申し訳ないんだけどマイホームに入らせてもらえない?ちょっと紅茶を自分で用意したいと思って」

「構わないぞ、ついでと言っちゃなんだけど、俺にカフェオレを頼めるか?」

「私は紅茶でいい」


 マイホームへの扉を出すと霞が1人で中に入っていった。そして5分ほど経つと、お盆に大きめの紙コップを乗せて戻ってきた


「甘さは控えめにしてきたわ」

「それじゃあ勝手にお茶でもするか」


 持ってきたお盆の上にはチョコクッキーも乗せてあり、すっかりリラックスした感じでお茶菓子を頂いていた。


「そういえば、ここまで持ち物チェックとか一切されなかったな。美鈴も一応装備しておくか?問題が起きそうな気配もあるし」

「んー、おじさん持ってるんだよね?だったら今はいいかな。私は防御の魔法も使えるしね」

「そういやそうだったな、なんたって聖女様だしな」

「そうそう、魔法障壁だけでブラッドウルフ程度なら昏倒させられるからね!」

「それよりも随分と待たせるわね、個人的には貴族の食事とかもういいからもうここから出たいわ」

「全くだな、俺もすでにどうでもよくなってきてる」

「それじゃあ貴族様が来たら挨拶だけして帰っちゃう?報奨金ももらってあるからこの町にいる理由はないしね」

「そうする?おじさんに任せるけど個人的には出ていきたいわ」

「そうするか、お?誰か来たようだな」


 部屋の外から複数の足音が聞こえてきた、自腹で用意したお茶菓子はささっと倉庫に放り投げて隠してみた。


 すると、ノックも無しにドアが開かれ、髪の毛をビシッと固めた ザ・貴族!という風体の男が先頭で入ってきた。その後に続くのは見覚えのあるお嬢さんと執事だった


「待たせたようだな、俺がハワード伯だ、盗賊どもの捕縛と娘の救助に対して礼を言う」

「いえいえ、成り行きでの行動だったんで気にしないでください」


 対貴族の対応なんてわからないから、一応丁寧に話してみるが、ガチガチの敬語じゃなくてもいいだろう。平民にそこまで期待してないだろうしこれでも足りないというのなら敬語すらやめよう


「3人揃って珍しい黒髪とは、お前達は親子関係だったりするのか?」

「いえ、俺達の生まれ育った国ではほとんどの者が黒髪なんで、特に血縁はありませんね」

「黒髪が普通なのか、まぁそれはいい。ところで盗賊を捕縛してから、生きたまま収納に入れてきたと聞いたが、どのようにやったのだ?」

「すいませんが、そういった個人情報は話すことは出来ません。身内であるならともかく、あまり外に広めると致命的になりかねませんので」

「ふむ、そうか。まぁ良い、それでは食堂に案内するとしようか」

「それなんですが、せっかくですけど辞退させていただきます」

「ん?どうしてだ?今日は食事に招待すると伝えてあったはずだが」

「貴族家の食事に興味があってお受けしましたが、門からこの部屋に通されるまでの間、この家の従者が余りにも不愉快な対応をしてきたので、とても食事などという気分ではなくなりました。なのでご挨拶のみでお暇させてもらいます」


 ハワード伯爵の顔に青筋のようなものが…

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