㊲
SIDE:カオリとレイコ
「そういえばレイコって、美鈴が使えるって言ってた避妊の魔法も使えるの?」
「え?いやそんなの使えないよ」
「そうなんだ、あれば便利だけどね」
「そうかな…」
大樹たちと別れてからマインズのダンジョンの攻略を始め、いつしか20階層まで進んでいた。2人組なのに着々と進んで行く姿が話題になっており、知名度も上がっていたのだった。
元々体育会系で努力する事に慣れているレイコは、訓練と場数を熟す事によって上がっていく自分の魔法に希望を持ち、多少の事では挫けない精神を持ってダンジョン攻略に臨んでいたのだが、カオリはダメだったようだ。
知名度が上がってよく声をかけられるようになってから調子に乗るようになっていた。
「レイコも魔法使いなんだから、浄化の魔法だけじゃなくてもっと都合の良い魔法とか覚えなさいよね、それじゃあ私は飲みに行ってくるから、じゃあね」
ギルドの窓口で換金を終えると、カオリは近くで待っていた男性パーティと共に町へと消えていった。
「はぁ…カオリも大概だなぁ。これは今からでもおじさんを追っかけた方が良いのかな、このままだと私も巻き添えで襲われてしまいそう。私は正直男なんてどうでもいいんだけどね」
あの調子じゃ潰れるまで飲まされて、そのまま犯されて妊娠して…とか、そんな未来しか見えない状況になってきているのが不安の種になっていた。
「考えてみたらあのおじさん、一度も私の事嫌らしい目で見てこなかったな。私の考えが浅はかなのと見る目が無かったって事だけは良くわかったわ」
ギルドから出て、とりあえず今後どうするかを考えながら宿に向かうのだった。
「追いかけるのなら早い方が良いよね、追いつかなくなっても困るし、カオリは放っておけばその内どこかのパーティに入っただろうし、一緒にいれば私も連れ出されて慰み者って落ちしかなさそうだから無視して出て行こう」
レイコは明日行動に移そうと決め、今日はしっかり体を休めようと早寝するのであった
SIDE:来栖大樹
美鈴が起きてから朝食を済ませ、戦闘訓練という名の蹂躙を始めた。やはり数を熟したのが良かったのか、俺でさえもブラッドウルフ程度であれば近接で倒せるようになっていた。武器はサバイバルナイフの長いやつだ、リーチは短いがちょうどいい重さで取り回しがしやすく、体もうまい事動いてくれて満足のいく結果になった。
そんな俺を見た美鈴もサバイバルナイフを欲しがり、一度貸してやって使わせたところ、美鈴もなんだか使いこなしていた。これが若さか…
正直撲殺している霞はともかく、刃物で斬って血しぶきが舞う状況なんて女子高生に耐えられる訳が無いと思い込んでいたが、なんともあっさりとしたもんで驚いた。
しかしリーチの無い刃物での近接戦は、どうしても返り血を浴びてしまうのでこれはどうにかしたいところだな。
昼まで狩りをして、ブラッドウルフを16匹、ゴブリンを8匹仕留めてゴブリンの魔石を回収し、ウルフは物置にポイっと。
昼食の前に汗を流して一息入れる、調理を女性陣に任せて美鈴用のナイフと軽くて取り回しの良さそうな盾を探してみる。無理して使う必要は無いかもしれないけど護身術と思って覚える事にした。
「お昼出来たよー、オムライスだけど」
「いいじゃんオムライス、俺はケチャップ大量にかけるけどね」
昼食を食べながら午後からの動きについて話し合ってみた
「個人的には貴族料理がどれほどの物か…という感じね」
「それは私も気になっているけれど、でも接触しようとした理由についても気になるわね」
「一応、本当に万が一の話だけど、もしもハワード伯爵が俺達を権力でどうにかしようと企んでいた場合、どう立ち回るか…だな」
「それねー、霞なら傷つけないよう手加減できるんだろうけど、私とおじさんは銃だからねぇ。どんなに手加減って思ってたって絶対怪我させちゃうからね」
「私だってあまり手加減できないかもしれないわ。スカートで足を振り上げるなんてしたくないから銃を使うかもしれないし」
「一応武器はすぐに取り出せるように物置に置いて、問題が起こったら霞に前衛を任せてその隙に取り出す、そんな感じでいいか?とりあえずだけど」
「まぁ武器を持って入れるわけじゃないだろうからそれしかないかもね」
「でも、おじさんが収納スキル持ちだと思われているんでしょう?そういったチェックってどうするのかしらね。しかも生きた人間の入る収納ってのも伝わっていると思うし」
「さぁな、まぁ収納の中身を全部出せとか言われたら帰ればいいんじゃないか?もしくは今入れているブラッドウルフを出してやるとかね」
「じゃあウルフを売るのは明日にしよっか、物置に他にもダミーでなんか入れておく?」
「それがいいかもしれないな、そこまでやるとは思えないけど一応な。武器はガレージに入れるとするか、ダミーは服でも入れとけばいいだろう。女性が2人いるからおかしくないだろうし」
「それじゃあ午後は物置に生活感を与えるって事でいいね?」
物置に生活感ってなんだって思うけど、言っている意味は分かる。普段から利用していれば、物の配置や量などで使い込まれているかなんとなくわかるからな。
それぞれが自分の部屋に置いてある着替えなどを纏めてそれっぽく配置していく、もちろん貯金箱も。中にはちゃんと貨幣が入っているしばっちりだろう。
そんなこんなで、奥の方に個人の物がごちゃっと置かれ、手前にブラッドウルフを鎮座させて終了した。気が付くと午後3時になっていたのでマイホームを出て町に向かうのだった
「お、帰って来たか。ちょうどいい時間かもしれないな、伯爵邸まで案内は出来ないけどよろしく頼むな」
「わかっているよ、俺達も貴族の食事に興味あるからな」
すっかり顔見知りになった警備隊の男と軽く話し、町の中へと入っていった。町の中心部にある伯爵邸に向かいながら、扉を出せそうな人目に付かない場所も探る。というかなかなかそういった場所ってないもんだな、こうなったら着替えは持参してあると言って伯爵邸で部屋を借りるのも有りかなと思い始めた所、建物と建物の隙間が広く、路地になっている場所があったのでひっそりと入り込み、扉を出して中に入る。最初はシャワー室とか言っていたけど、別にホームに入ったって問題ないので、それぞれ個別で着替える事となった。
それじゃあ伯爵邸に行ってみるかね、鬼が出るか蛇が出るか、どうなるかな。




