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プレミアムノート  作者: 月島裕
20/22

運命の日

『人とは面白い生き物だ…

時代が変われば価値観、思考も変わる…

だからこそ…儚く美しい…

我々の求める世界になるのだろうか…

それとも同じ運命を辿るのだろうか…

我の居た世界の様になってしまうのだろうか…

壊れゆく世界の歯車を変えられるとしたら…今しかないのだ… 』

 


「館長。準備が整いました。こちらのスイッチを押して頂ければ、すべての装置が作動します。」

「そうですか…あと十分後にスイッチを入れます。皆さん、もしもの時のために準備しておいて下さい。」

「はい。装置作動後、2~3日で結果が出る予定です。他の支部の方々にも伝えてあります。」

「そうですか。それでは私は装置作動後、閣下の下に新垣様をお連れしなくてはなりませんので、少し席を離れますので代行は三輪に任せます。」

「解りました。閣下の容態は大丈夫なのですか?」

「あまり、良いとは言えません……この結果次第で閣下の幾末も変わってしまいます。いい結果が出る事を祈るしかありません…」

「そうですね…そろそろお時間です。」


“10・9・8・7・6・5・4・3・2・1・作動開始”


「始まりましたね…世界が少し沈黙しますね…」

「はい。」

「それでは、宜しくお願いします。」

「お気をつけて行ってらっしゃいませ。」





「新垣様、お待たせ致しました。それでは閣下の所に行きましょう。」

「館長さん…なんだか、外が急に静かになったんですが……」

「装置が動き始めたんです。しばらくは沈黙が続きます。閣下の所へは地下の通路から行きますので外は確認出来ませんが…閣下にお会いになった後でモニターで確認しますので、一緒にご確認しますか?」

「はい。あなた達はいったい何をしようとしてるんですか?」

「革命です。それがいい方向に行くとは限らないですが…これは賭けです。」

「……」

「こちらの乗り物にお座り下さい。」

「これは?」

「地下道を高速で移動出来る乗り物でございます。」

「なんだか変じゃないですか?今の世の中に、こんな技術ないですよね……それにあの装置も…」

「お気づきの通りでございます。私共は、こちらの世界の人間ではありません。この作戦が成功すれば、我々のいた世界はパラレルワールドになります。ですが…それでも…破壊を止めたいんです。この地球が大切なんです。」

「えっ……なんだか意味が分からないんですが…」

「理解出来ないのは仕方ないです。難しい事なので。もう少しで閣下の居る所に着きます。」

「あっというまでしたね。スピードの割に乗っていて身体に負担がなかった…」

「技術は日々進化していますので。さぁ、こちらに…」

「ここが…」 

「閣下は新垣様にお会い出来るのを楽しみになさっているんですよ。貴方は閣下のご友人の先祖なのですから。」

「えっ…」

「このシステムを考えた方は貴方の子孫なんですから。詳しい話は閣下に直接お聞き下さい。」

「はい……」


「閣下、失礼致します。新垣様をお連れ致しました。先ほど装置も作動致しました。」


“そうか…無事に事が進む事を祈る……新垣、もっと近くに来てくれ…”


「あの……」

「怖がらなくても大丈夫ですよ。そちらの席にお座り下さい。私は飲み物を取りに行ってきますので、閣下に質問などありましたらお聞き下さい。優しい方ですので大丈夫ですよ。」


“新垣…久しぶりだな…と言っても先祖なのだな…”


「あの…僕の子孫は、そんなに僕に似ているんですか?」


“瓜二つとは、この事だ……新垣とは、今でいう幼なじみだった…魂の記憶の研究を始めたのも新垣の夢が始まりだった……いつも見る夢が、ただの夢なのか…記憶なのか…調べたいと……”


「僕の子孫は、どうなったんですか?」


“昔から奴は身体が弱くてな…空気汚染が原因で生まれてからずっと生命維持装置をつけられていた……ある日、装置が完成した……それを見届けるかのように息を引き取った…”


「………」


“だから、我々は奴の意志を継いだ……そしてキーマンになるであろう…君を見つけた…ファイルには、君の今の居所も誰がどの記憶を持っているのかも書いてあったのだが……私の不注意で、この世界に来た時に落としてしまったのだ……まさか、君が持っていたとは運命とは不思議だな……”


「僕には、あのファイルの中身は分かりませんでした…そんなに重要な事が書いてあったとは………」


“我々だけが分かる暗号で作られているからな……他の人間に解読されないようにしてあるんだ…”


「貴方たちは、どこから来たのですか?」


“今より1000年後の時代からだ……我々の世界は…酷い世界だ…”


「そんなに酷い世界になってしまうのですか?」


“今頃からエコなどをやってはいるが…汚す人間は減らなかった……それのしわ寄せが我々の世界だ…

人口も減り…病で死ぬ者もいる……そんな世界だ…健康な人間なんて一握り……”


「そんなに……」


“だからこそ我々は行動するしかなかった…運命を変える事が出来るのであれば……”


「ですが、何故この時代なんですか?もう少し先の時代の方が良かったのでは?」


“時代、時代に我々は行ってきた…だが、変化をもたらそうとすればするだけ…修復しようとする時代の渦に巻き込まれた……我を見よ……この様な形でしか生きていられない……話す事も歩く事も出来はしない……”


「そのカプセルのような所から出たら、どうなるのですか?」

 

“生きられないだろうな……”


「………」


“これが最後の賭けなのだ…もう我はもたないだろう…後は服部に任せるしかない……時間のようだ……新垣……会えて良かった……”


「えっ……」


“また、次の時代で……会えればいいな……”


「服部さん!服部さん!」


「どうかなさいましたか?……閣下…」


“後の事は、お前に任せる……ありがとう…”


「閣下……私は閣下が居なければ……生きてはいけません……」

 

「服部さん……閣下が貴方にすべて任せると言っていました……」


「はい……。」



服部さんは、それからカプセルを見つめながら泣く事もせず黙ったままだった……

僕には掛けてあげられる言葉は見つからず服部さんを見てる事しか出来なかった……



「新垣様…長々と申し訳ありませんでした……もう一度、施設に戻りましょう…」

「大丈夫ですか?」

「大丈夫です…閣下の意志は私共が引き継ぎます。

閣下の死を無駄にしないためにも成功させなくてはなりませんので……」


そう言ってまたカプセルを見つめて、乗ってきた乗り物に乗った…

来た時とは違って笑顔は無くなっていた…






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