不満
次の実験体は
渡部佐知27才
中学校卒業
現在、風俗業勤務
今回の実験場所は上野駅の端に施設を設置
標的が現れるのを待つ
“標的発見”
”接近開始“
「お客様、素敵なお店が近くにオープンしたんです。お時間宜しかったら寄って行きませんか?」
「ホストクラブなら行くけど…居酒屋とか?こんな所にホストクラブある訳ないもんね(笑)」
「そんな事はありません。素敵な方たちがいますよ」
「本当に?!値段わ?」
「お安いですよ。こちらへどうぞ。」
“標的確保、誘導開始“
「こちらの椅子にお座り下さい。」
「えっ何もないじゃん…」
「すぐに解りますよ」
「座ったよ…」
「それでは、行ってらっしゃいませ」
えっ…
意識が薄れていく…
私の人生行き当たりばったりだったな…
結局、何がしたかったのかな…
たくさん夢があったはずなのに…
今の自分には何もない…
目を開けて見たら見たことのない景色が広がっていた…
森?
そして着物の様な汚ない服を着た男の人
「早く来い」
痛い…捕まれてる手が痛い…
「嫌だ離して…」
「お前の親がお前を売ったんだ。言うことを聞け」
「嫌だ…おっかさん…」
連れて行かれた場所は綺麗な町並みだった
「今日から、お前は此処で奉公するんだ。分かったな。」
泣いてる私に男は言った
「また、可愛いげのないガキ連れてきたね。今日から此処がお前の家だよ。頑張って働きな。」
知らない、叔母さんが話しかけてくる…
「返事ぐらいしな!」
顔に痛みが…
「返事も出来ないガキなんて要らないよ」
「はい」
逃げ出したい…おっかさんに会いたい…
それからの日々は地獄のように辛かった…
少しの汚れも許してはくれない…
すぐに叩かれた…
そして、叔母さんに呼ばれ
「今日は掃除しなくていいから、この人のお相手をおし」
「あの…何をすれば…」
「寝てるだけで終わるから」
怖い…どうすれば…
「お嬢ちゃん、初めてなんだろう?大丈夫、私に任せなさい」
嫌だ…怖い…助けて…おっかさん…
その瞬間、意識が遠退いていく…
痛みと恐怖
私…何されたんだろう…
あの子どうなったのかな…
次に目を開けて見たら私の亡くなったお母さんがいた…
「佐知、貴方の未来が幸せに満ちた人生でありますように」
素敵な笑顔で微笑んでいる…
お母さん…
「きっと、お母さんに似て美人で素敵な女性になるよ」
そう言って笑顔のお父さん…
ごめんなさい…
小学校四年生の時に交通事故で私の大好きだった優しいお母さんが亡くなった…
私は人が亡くなるという事の辛さを知った…
それから、お父さんは必死で私を一人で育ててくれた…
大変だったはずなのに…
中学校二年生の夏に、お父さんが連れてきた女の人が嫌いだった…
お父さんは、お母さんの事を忘れようとしてるようで…
その人は、すごく優しい人だったのに意地悪な事しか言えなかった…
自分の幼さが嫌だった…
「中学校卒業したぐらいで仕事なんてないんだぞ。世の中そんなに甘くないんだぞ。分かってるのか佐知!」
「こんな家に居たくないから高校なんて行きたくないんだよ。住み込みのバイトでも探すからいいんだよ…」
「佐知!お前は、それでいいのか?亡くなったお母さんも心配してるぞ!」
「はっ?お父さんは、今の人がいいんでしょ?!お母さんの事こんな時に出さないで。お父さんは、お母さんの事忘れようとしてるんでしょ…」
「佐知…」
頬に痛みが走った…
「こんな家、今すぐ出てってやるよ」
「佐知」
お父さんに叩かれたのは初めてだった…
お父さんがお母さんを忘れようとする訳ない事なんて分かってるのに…
言ってはいけない事を言ってしまった…
あの事を謝る事も出来ず…
合う事さえもしていない…
私は結局、逃げてばっかりだった…
お父さんがチャンスを何回もくれていたのに…
そして意識が薄れていく…
「お疲れ様でした。いかがでしたか?」
「結局、今のはなんだったの?お父さんは分かったけど、最初に見た女の子は?」
「江戸から明治時代にあった遊郭に売られた女の子です。まだ幼かった女の子に、お客さんをとらせたんです。体が、まだ出来上がっていなかったため、その時に亡くなりました。」
「なんで、そんな酷い事…」
「人は、それを時代だったと言います。一区切りにしてしまいます。貴方もそう思いますか?時代のせいだと?」
「分からない…でも時代だとも言えるかもしれない…でも、それを良しとした人間に問題があったんじゃないかな…結局は決めるのは人間だから…」
「そうかもしれませんね。何かかわった事はありますか?」
「お父さんに謝りに行きたい…そして自分を大切にします。」
「そうですか。お気をつけて」
“標的に変化あり”
渡部佐知は、その後父親に会い和解
今は就職活動中
“引き続き監察“
「閣下、今の所順調に進んでおります。第一段階が終わりましたら予定通り第二段階に移ります。この世界の行く末が楽しみですね」




