第8話「塔が降る日」
昼下がり。
小さな定食屋。
リントは机に突っ伏している。
「あぁ…腹減った…」
キリカ
「さっき食べたでしょ!」
コトハ
「--3時間前」
リント
「いつの話だ」
店内に笑い。
定食が置かれる。
山盛り!
リントの目が輝く(かがやく)!!
「神…」
キリカ
「食べ物を神扱い(あつかい)すんな!」
いつもの光景。
いつもの空気。
リントは窓の外を見る。
子供たちが走っている。
少女の姿が一瞬重なる。
「こわく……なかった」
リントの箸が止まる--
キリカ
「どうしたの?」
リントは笑う。
「いや…」
「平和だなって」
コトハ
「珍しい(めずらしい)こと言う」
リント
「奇跡みたいなもんだろ」
――ドン。
地面が揺れる(ゆれる)。
店のコップが鳴る。
キリカ
「え?」
外から悲鳴。
もう一度。
ドォン。
空気が変わる。
冷たい。
重い。
リントの表情が消える。
外へ出る。
空。
雲が裂ける(さける)。
黒い亀裂。
そして――
巨大な塔が落ちてくる!!?
ドォォォォン!!!
街が揺れる。
ガラスが砕ける。
煙。
悲鳴。
キリカが震える(ふるえる)。
「なに…あれ…」
塔の表面に文字が走るーー
見たことのない記号。
リントの頭の奥に響く(ひびく)声。
『顕化体確認』
『対象:リント』
リントの目が開く。
塔の側面が開くーー
暗闇から男が出てくる。
黒いコート。
男
「やっと見つけた」
リント
「誰だよ」
男が微笑む(ほほえむ)。
「君たちが倒してきた怪物」
「全て、実験体だ」
キリカ
「……は?」
男
「我々は悪意を制御しようとしている」
「世界を一段上へ進めるために」
リント
「人殺しが進化かよ」
男は肩をすくめる。
「犠牲は必要だ!」
「そして君は…」
「最高の観測対象だ」
リントが一歩出る。
「断る!!」
次の瞬間。
男の背から顕化が溢れる(あふれる)。
だが--
リントの顕化は--
---より深い。
衝突。
ドォン!!
道路が砕ける(くだける)。
拳。
蹴り。
リントが圧倒する。
男が吹き飛ぶ。
血を吐く。
「……バ、バカな」
リントが胸ぐらを掴む(つかむ)。
「実験?」
低い声。
「命で遊ぶな」
拳を振り上げる。
その瞬間。
男が笑う--
「取得完了」
リントが一瞬止まる。
男の身体が崩れる。
人工顕化体---
黒い霧状のものへと姿を変え、
空に消えた…
リントの背筋に冷たいものが走った。
空。
雲の向こう。
黒い影。
一つ。
二つ。
三つ。
四つ…
巨大な塔が…
世界各地へ降り注ぐ!!!
キリカが震える。
「嘘でしょ……」
コトハが呟く(つぶやく)。
「これ……日本だけじゃない」
リントは空を見上げる。
少女マリスの顔がよぎる…
『こわくなかった…』
その世界が---
今---
壊され(こわされ)ようとしている。
リントは拳を握り(にぎり)、
ただ静かに言う。
「……面白くなってきたな」
キリカが横を見た。
その横顔は、
どこか悲しげに笑っていた。
でも…その瞳には、
熱い何かが優しい光と共に宿って(やどって)いた。
遠くの空。
さらに巨大な影が、
雲の奥で蠢く(うごめく)。
まだ落ちない。
だが、
“本命”はそこにある。
その日--
世界は知る--
『顕化』という力を。
そして…
塔の降る時代の始まりを…
リントはまだ知らない。
これは序章に過ぎないことを。
だが…
彼は『笑う』
守るために。
壊れないために。
リントの腕の紋章が――
静かに…
だが確かに…
“変化”していた。
第一章 完
「第一章完です。ここまで読んでくれてありがとうございます。」
次回より第二章突入です。
宜しければ引き続きお願いします。
更新は基本毎日19:00~21:00にしております。




