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第56話 「未完の研究」

キングピラー内部【中層】

研究区画ーー



呼吸の音がーー

不規則な時を刻む以外ーー



研究所内は溶け入るように

静かだった…


さっきまで暴れていた 実験体は…



全身が崩れ落ちた瞬間ーー

黒い霧となって 消えていった。



その静寂の中キリカは立ちつくす。



熱く燃えさかっていた目の光は

徐々に冷静さを帯びーー


元の瞳へと戻っていく。



肩を少し震わせながら…

何かを考えているようだった。



コトハが声をかける。

「キリちゃん……」



キリカは少し息を吐く。

「……大丈夫」



そう言うが…


まだ瞳の奥には消しきれない怒りが

少し残っていた。



その時ーー



コトハが声を上げる。

「リント!」



リントが振り向く。



白衣の男。

まだ息があったーー


床に血を流して 倒れている。



リントが近づく。



男は苦しそうに言う。

「すまない……」


「子供達を……」


「守れなかった」



リントは何も言わない。



男はポケットから

小さなカードを取り出す。



震える手。

「これは……」


「Dr.ジンの研究データだ」



コトハが息を()む。



男は続ける。

「ジンさんは……」


「マリスとは違う力を」


「見つけていた」



コトハが小さく言う。

「……リベラ」



男はゆっくり(うなず)く。

「そうだ」


「善意の感情」


「人を守ろうとする力」



男はリントを見る。

「ジンさんは言っていた」


「感情は……進化すると」



その言葉に…

コトハの目が揺れる。



男は苦しそうに笑う。

「研究は……まだ途中だ」


「だが…」


「希望は残したぞ」


「頼む……」



男の手から

カードが落ちるーー



男は最後の言葉を(つむ)

まるで時が止まったかのように

     全てが静止したーー



キリカが小さく言う。

「……くそ」



コトハは

ガラスのカプセルを見る。



中で眠る子供達。

小さな体。

たくさんの装置。



コトハの手が 少しふるえる。

「どうして……」


「こんな事……」



ルディが静かに言う。

「……人間」


「……だから」



リントはカードを拾う。

カードにはーー



【研究データ】

       の文字。


その中にーー

一つの言葉があった。



 【感情進化】



リントが小さく笑う。

「感情は進化する……か」



コトハは…

その言葉を見つめる。


その目に…

小さな光が生まれていた。



キングピラー研究施設ーー


そこに残されていたのは――



“進化する感情”



…というまだ誰も知らない   


        可能性だった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


もし宜しければブックマークお願いいたします。



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