第1話 「笑っている男」
宇宙が燃えているーー
青い星は壊れかけていた。
その前で——
一人の男が笑っている。
血まみれでーー
全身を砕かれながら。
それでもなお…笑っていた。
「……やっと終わりか」
目の前には世界を終焉へと導く
ーー巨大な影
人の“悪意”が形になった存在。
それを前にして——
男は…
逃げない。
恐れない。
ただ笑う。
その時ーー
遠くから聞こえる...
…届くはずのない声。
「死なないで。」
「約束したでしょ!!」
男は目を閉じーー
小さく呟く…
「約束…守れそうにねぇわ」
「勘弁な…」
そしてーー
少し寂しそうに笑った。
その時…
ふと脳裏を過る
父の声。
『…どんな世界でも』
『いつでも笑っていられる男でいろよ…』
自分に言い聞かせるように…
吐き出した最後の言葉ーー
「……必ず…守ってみせるさ」
次の瞬間!!!
巨大な閃光がーー
宇宙を裂いた。
儚く…そして鮮烈に……
——その男は
終焉と共にーー消えたーー
ーーーーーーー
数年前。
夜のコンビニは
妙に静かだった。
店先のベンチ。
制服姿の二人がジュースを飲んでいる。
キリカが空を見上げる。
「ねぇ、コトちゃん」
「ん?」
「世界ってさ……たまに壊れてるよね」
その時の二人は…
その言葉の重さをまだ知らなかった。
コトハが苦笑する。
「キリちゃん、またそれ?」
店内のテレビ。
――通り魔事件
――汚職
――戦争
乾いたニュース音声。
ドンッ。
鈍い音。
路地の奥。
スーツ姿の男が女性を壁に押しつけていた。
「全部お前のせいだ!」
呼吸が荒い。
ハァ……ハァ……
その音が途中で濁るーー
影が滲む。
背中が歪む。
骨が軋む。
皮膚が裂ける。
「……ゴ……ロ…ス」
声とも呻き声ともとれる
声にならない声ーー
赤い目が開いたーー
黒い怪物。
腕を振り上げ女性に襲いかかるーー
キリカが飛び出そうとした
その瞬間――
「おーい」
ダルそうな声。
コンビニの灯りの下。
パーカー姿の男。
片手にポテチ。
眠そうな目。
「夜中に騒ぐなよ」
「近所迷惑だろーが!」
怪物が唸り声をあげるーー
リントは呆れて笑う。
「……やれやれ」
その瞬間リントの周りの
空気が張り詰めるーー
身体からーー黒い影が静かに
溢れ出すーー
怪物の"それ"とは違う。
濁りのない凛とした影。
「顕化」ーー
影はリントの身体を覆い
鎧のような装甲と化すーー
次の瞬間!!
怪物の一撃。
衝撃波が飛散する。
しかし…止まる!?
片手で受け止めていた。
リントが笑う。
「悪いな」
首を鳴らす。
「今日は機嫌悪いんだ」
拳を握る。
「消えろ!」
衝撃が突き抜け怪物は吹き飛ぶーー
そして…黒い霧となって散った。
静寂…
コトハが駆け寄る。
「リント!」
リントは肩をすくめる。
「あー腹減った」
キリカとコトハ二人の声が重なる。
「空気読め!!」
リントは何食わぬ顔で笑う。
だが――
その時--
ポケットのスマホが鳴った。
【社長】
一瞬だけ、笑みが消えた。
「……もしもし」
低い声。
「リントくん。今日も“出た”のか?」
リントは空を見る。
「さぁねぇ」
電話の向こうの男が静かに言う。
「始まったんだ…」
「あの夜と同じ現象が」
リントの目が細くなる。
「マリスが増えている…」
その一言を残しーー
電話が切れる。
キリカが聞く。
「誰?」
リント
「あん?…間違い電話」
コトハが睨む。
「絶対嘘」
リントは歩き出す。
ポテチを食べながら。
いつも通りの、だるそうな背中。
だけど——
その目は笑っていなかった。
遠くの空を見つめて、
小さく呟く。
「……親父」
「……約束は守るからよ」
その時、ほんの一瞬だけ——
リントの影が、揺れた。
いや…
“揺れた”というより——
自分の意思で、動いたように見えた。
リントの足が止まりーー
足元を見る。
影は、ただの影に戻っている。
「……気のせいか」
小さく笑った。
夜は静かだーーだがその裏で。
悪意はーー
確かに生まれている。
そして――
それを壊す者たちがいる。
だがまだ誰も知らない。
その男がーー
世界を……
!!!???
「きゃーっ!」
その時ーー
街のどこかで、悲鳴が上がった。
「やれやれ……またかよ…ったく」
リントが呆れた感じで笑う。
………………………………
…………結局ーーその男が
世界に“何を残すのか”は、まだ誰も知らない。
初めて書きました、ご指摘などあれば宜しくお願いします。
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