第1話「笑っている男」
夜空が燃えている。
宇宙。
青い星が、遠くに浮かぶ。
その前に、男は立っている。
砕けた装甲。
滲む(にじむ)血。
浅い呼吸。
それでもーー笑っていた。
「……やっと終わりか」
眼前に蠢く(うごめく)巨大な影。
【セブンスピラーΩ】
遠くから聞こえる...
…届くはずのない声。
「リント!!」
「死なないで。」
「約束したでしょ!!」
男は目を閉じる。
そしてーー
懐中時計を握る。
『リント…どんな世界でも』
『いつでも笑っていられる男でいろよ…』
父の声。
男は笑った。
「……守ってみせるさ」
次の瞬間。
巨大な光がーー
宇宙を裂く(さく)。
世界は救われた。
その代償として――ー
数年前。
夜のコンビニは
妙に静かだった。
店先のベンチ。
制服姿の二人がジュースを飲んでいる。
キリカが空を見上げる。
「ねぇ、コトちゃん」
「ん?」
「世界ってさ……たまに壊れてるよね」
その言葉の意味を…
その時の二人は…まだ知らなかった。
コトハが苦笑する。
「キリちゃん、またそれ?」
店内のテレビ。
――通り魔事件
――汚職
――戦争
乾いたニュース音声。
ドンッ。
鈍い音。
路地の奥。
スーツ姿の男が女性を壁に押しつけていた。
「全部お前のせいだ!」
呼吸が荒い。
ハァ……ハァ……
その音が途中で濁る(にごる)ーー
影が滲む(にじむ)。
背中が歪む(ゆがむ)。
骨が軋む(きしむ)。
皮膚が裂ける(さける)。
「……ゴ……ロ……ス」
声とも呻き声ともとれる
声にならない声ーー
赤い目が開いたーー
黒い怪物。
振り上がる腕ーー
キリカが飛び出す!
その瞬間――
「おーい」
間延び(まのび)した声。
コンビニの灯り(あかり)の下。
パーカー姿の男。
片手にポテチ。
眠そうな目。
「夜中に騒ぐ(さわぐ)なよ」
怪物が唸る(うなる)。
リントは一歩前へ。
「……出たか」
空気が張り詰める。
黒い影が静かに溢れ(あふれ)出すーー
怪物とは違う。
濁り(にごり)のない凛とした影。
「顕化」ーー
装甲が展開。
怪物の拳。
衝撃。
止まるーー
片手で受け止めていた。
リントが笑う。
「悪いな」
首を鳴らす。
「今日は機嫌悪いんだ」
拳を握る。
「消えろ」
衝撃。
怪物は吹き飛び
黒い霧となって散った。
静寂…
コトハが駆け(かけ)寄る。
「リント!」
リントは肩をすくめる。
「腹減った」
「空気読め!!」
キリカとコトハ二人の声が重なる。
リントは笑う。
だが――
その時--
ポケットのスマホが鳴った。
【社長】
一瞬だけ、笑みが消えた。
「……もしもし」
低い声。
「リントくん。今日も“出た”のか?」
リントは空を見る。
「さぁねぇ」
電話の向こうの男が静かに言う。
「始まったんだ」
沈黙。
「あの夜と同じ現象が」
リントの目が細くなる。
「マリスが増えている」
夜風が吹くーー
電話が切れる。
キリカが聞く。
「誰?」
「仕事の電話」
コトハが睨む(にらむ)。
「絶対嘘」
リントは歩き出す。
ポテチを食べながら。
しかしその目はーー
笑っていなかった。
遠くの空を見つめて、
小さく呟く(つぶやく)。
「……親父」
「……約束は守るよ」
夜は静かだ。
だがその裏で。
悪意はーー
確かに生まれている。
そして――
それを壊す者たちがいる。
だがまだ誰も知らない。
その男がーー
世界を救うことも。
そして――
消えていくことも。
初めて書きました、ご指摘などあれば宜しくお願いします。
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