第十六話 決着
お館様とよしねは、屋敷内の庭にきていた。
「ここなら、思う存分力を使って大丈夫よ」
微笑んだお館様は、よしねと距離をとる。
「私をとめるのでしょ? さぁ、かかってきなさい」
お館様は、笑みを絶やさず余裕を見せていた。
よしねは杖を構え、意識を集中させる。
「あら、どうしたの? 攻撃しないなら……」
すると、周りの風が集まり、お館様を浮かせる。
「こちらから行くわよ!」
風をまとったお館様が距離をつめてきた。
「風刃!」
それを見計らったように、よしねは風の刃を放つ。
しかし、お館様は難なく避けた。
優雅に、そして軽やかに避けたのだ。
「くっ、風の舞!」
よしねも風を集め、お館様に放つ。
だが、お館様は扇を開き、優しくあおいだ。
すると風は止み、お館様はくすりと微笑む。
「ふふっ、もう終わりかしら?」
「まだです!」
よしねは杖を空に向け、くるりと回す。
「ゆりねのようにはできないかもしれないけど、やってみるしか……」
どんどん風が集まり、蛇の形をつくっていく。
「かの者を捕えなさい、風蛇!」
風の蛇はうねりを上げて、お館様へと向かっていく。
しかし、お館様は避けるどころか、動かない。
そして扇を閉じ、素早く横に動かした。
すると、風の蛇は三分割にされ消えていった。
「うそっ、なんで……」
「がっかりね。見よう見まねでできるものじゃないのよ」
お館様は、また扇を開いて口元を隠す。
「だってその技は、私が教えたものなんだもの」
「えっ……」
驚くよしねに、お館様はにっこりと笑う。
「なら、見せてあげるわ」
お館様は扇を閉じ、空に向ける。
「そして後悔しなさい。あなたがどんなものを相手にしているかをね」
風がどんどんうねりを上げ、やがて大蛇の姿となる。
「うそっ、なんて大きさ……」
「絡めとりなさい、大蛇!」
大蛇はすさまじい音を立てて、よしねに向かってくる。
「風刃!」
いくつもの風の刃が大蛇に当たるが、傷ひとつつかなかった。
やがてよしねの元にくると、体に巻きついてくる。
「ぐっ……」
「そのままつぶされてしまいなさい」
お館様は扇を開き、口元を隠した。
よしねは締めつけられながらも、突破するための策を考えていた。
「このままじゃ、本当につぶされちゃう……」
苦しみの中、ふとゆりねの言葉がよみがえる。
「お願いよしね……お館様をとめて……」
「そうだ……こんなところで、苦しんでいる場合じゃない!」
よしねは目を閉じ、意識を集中させる。
「あら? 風の気配が変わったわね」
「はぁぁ……」
よしねを中心とするように、風が集まってくる。
「はあぁっ!」
すると、風圧で大蛇は消し飛んだ。
「あらら、まさか内側から消すなんてね」
「お館様、もう終わりにしましょう」
「なに言っているの。それで勝ったつもり?」
お館様は笑うのをやめ、扇を閉じて横に振った。
「私に敵うはずないわ。烈風!」
熱を帯びた風が、勢いを増してよしねに向かってきた。
「お館様……」
よしねはもう一度杖を握りしめ、お館様を見つめる。
そして杖を前に持ち、意識を集中させる。
「姉上、私が必ずお館様をとめます……」
よしねは目を開け、杖を突きだした。
「はあぁーっ!」
よしねのかけ声とともに、竜巻が出現する。
それは勢いよくお館様へと向かっていった。
「うそっ、私の力を巻きこんで、威力を上げた?!」
竜巻は周囲の風を巻きこんでいく。
「あんな小娘に、私が負けるなど……っ!」
お館様は防ごうとしたが、間に合わず竜巻が頬をかすった。
その際に、長い黒髪も切断され、地面に落ちた。
「はぁ……はぁ……」
「ふふっ……この私に一撃を入れるなんてね」
お館様は、顔を引きつらせながら笑っていた。
そして、ふらふらと屋敷へと戻っていく。
「お館様、どちらに?」
よしねの問いに、お館様は返事をしなかった。
そのまま中に入ると、ふすまを閉めてしまう。
「お館様?!」
慌てたよしねは駆けだそうとしたが、それは無理だった。
「きゃぁっ!」
なぜなら、突然爆発音がして炎が上がったからである。
よしねは、爆風で吹き飛ばされる。
「うそっ、爆発?! お館様、一体なにをされたんですか!」
「こっちにこないで!」
よしねが近づこうとした時、お館様の凛とした声が響く。
「よしね、あなたはもう終わりにすると言ったわね」
「そ、そうですが……」
「だから、終わりにするのよ。何もかもなくなってしまえばいいんだわ」
炎は激しさを増し、屋敷全体に広がっていく。
「お館様、早まってはいけません! 早く出てきてください!」
「いいのよ、よしね。これが私の末路なんだから、もう構わないで……」
「お館様ーっ!」
★★★
隼人と罪刃の剣は、まだ戦っていた。
お互い傷だらけである。
「はぁ……はぁ……」
「へっ、なかなかやるじゃねぇか。次で終わりに……」
すると、屋敷の方から爆発音が聞こえた。
「なんだ? 向こうはやけに派手だな」
「違う、屋敷が燃えているんだ!」
「なら、嬢ちゃんが勝ったってことか?」
「よしね様……」
「へっ……もうここらが潮時かな」
罪刃の剣は大剣を背負い、にやりと笑った。
「また、どこかで合ったら戦おうぜ、眼帯野郎」
「貴様とは、しばらく戦いたくないな」
隼人は苦笑いをして、屋敷へと向かった。
「さて、今度はどんな奴らと戦えるかな……」
罪刃の剣は呟き、静かに歩きだしたのだった。




