最終話 それは人々の物語
「おおっ! カイト!」
サンを無事に倒した俺たちは、玉座の間に戻り王様に報告した。
「見事であった……! これでこの国は平和になるだろう」
王様は1人頷きながら話す。
だが、これで終わりではない。
「いえ、まだまだこれからですよ」
「ん? というと?」
俺の発言に対して疑問を持つ王様。
ラキアたちも頭上にハテナマークを浮かべていた。
「この国には問題点が山積みなはずです。食料が行き届いていないところもあれば、荒くれ者が住むところもあります。そういった問題点を、今度は解決していきたいと思います」
俺は王様の前で跪いた。
これは、みんなの想いでもある。
「王様、俺たちを勇者の任から解除していただき、城の人間として働かせてください!」
「な……にぃ!」
最初に驚いたのは王様ではなくバルトだった。
初めて聞いたと言わんばかりの表情で俺を見る。
「ちょ……急展開すぎねぇかそれは」
「バルトは最初からそのつもりだっただろう? それにオリビアは勇者として功績を成した以上騎士団に戻るのが筋だし、俺とラキアはこの国をよくしていきたいと心から思っている。なにもおかしくないはずだ」
「って言ってもよう……」
バルトがモゴモゴしている間に、ラキアが隣で跪いた。
「私からも……お願いします!」
俺とラキアが跪き、次いでオリビア、バルトと跪いていく。
王様は当初困惑していたが、大きく鼻から息を吸い込み話し始めた。
「みな顔をあげるがいい。私の失策を追及することなく、自分たちも統治に加わろうとする心意気、誠に感服した。今からお前たちは勇者ではない。この城で働く者の一員だ。役職については後ほど考えさせてもらう」
「王様……!」
俺は立ちあがり全員の手を取って喜んだ。
これでこの国も変わっていく。変えていくんだ。
◇
月と街灯だけが頼りになる時刻。
俺は城のバルコニーで夜風に吹かれていた。
玉座の間での一件後、俺たちは城内の大食堂に招かれ、見たことも食べたこともない料理を食していた。
いつもより多く食べてしまったせいで胃袋が悲鳴をあげ、一休みしていた。
「大丈夫ですか?」
カチャリとバルコニーの扉が開けられて声をかけられる。
「ラキア……大丈夫だよ。ちょっと食い過ぎたから外に出てただけだ」
振り向いてラキアを見つめる。
初めて出会ったときと変わらない澄んだ瞳。こんな美しい人間がいるのだと感心したものだった。
「ラキアこそどうしたんだ?」
「……カイトさんとお話ししたくて……」
そう言ってラキアは俺の横にきて手すりに背中を預けた。
「…………カイトさん。ありがとうございます」
「どうした急に」
「カイトさんが私を同じパーティに入れてくれたから、私も自分の目標に向かって頑張ることができました」
ラキアは人がいなくなることを極端に恐れる女の子だ。
ある意味俺と同じ目標と言ってもいいだろう。
「けどそれを言うなら、俺のほうこそ感謝だよ。俺が自分の存在に悩んでいたとき、ラキアは信じていてくれたから。だから――――――――」
俺が言葉の先を言わないことにラキアはきょとんとしている。
言え……言うんだ……!
これまでずっと秘めていた思い。
俺が人間として在れた大事な存在に対して、真っ直ぐ伝えるんだ。
「――――ラキア、愛してる」
ラキアはまるで俺が覚醒スキルを使ったときのようにピタリと動きを止めた。
まずい、言い方を誤ったか……?
訂正しようとしたとき、ラキアの唇が俺の口を塞いだ。
「――――――!!?」
処理が追いつかない。ラキアが……ラキアの……俺に……俺の……!?
数秒唇同士が触れ合い、フッと離れてラキアははにかんだ。
「先に言われてしまって悔しかったので……」
「……ってことは……」
分かりきっている回答だが、急いてしまう。
そんな俺を焦らすようにラキアは手すりから離れてバルコニーの出口に向かっていく。
「もう恥ずかしなっちゃったから言いません!」
「そ……そんなぁ」
これまでで1番情けない声をあげてしまった。
ラキアを追いかけるように俺も出口へと向かう。
人間と魔獣の戦いは終わりを告げた。
俺自身、不安定な部分もあったが、ラキアのおかげで自分を取り戻すことができた。
けれど、まだまだ王国内ではやらなければならないことが沢山ある。
さらに王国を豊かにし、人々が安全に暮らせるよう、俺は、俺たちは尽力していく。
きっとそれは、後々まで語り継がれていき、未来は明るいものになっていることだろう。
〜 Fin 〜




