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非科学的潜在力女子2  作者: ゆずさくら


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20/40

(20)

「……」

 警察車両のドアが開くと、清川が出てきた。

「亜夢ちゃん!」

 アキナを包むようにしている亜夢に、清川が飛びついてくる。

「清川さん……」

「ご、ごめんね。大丈夫? えっと……」

(もり)明菜(あきな)です」

 中谷が助手席で何か探している。

「亜夢ちゃんは大丈夫なの?」

「私も、キツイです……」

 中谷がヘッドホンを二つ、持ち上げて見せる。

 一つは亜夢も見慣れている白いもの。もう一つは新しい赤いものだった。

「中谷さん、それ」

「キャンセラーを慌ててもう一つ作ったのさ。間に合って良かった。白は乱橋くん。赤いのは……」

 中谷はアキナの前に立ち、耳を押さえているアキナの手をどけた。そしてスイッチを入れた赤いヘッドホンを、アキナの耳にそっとつけてあげると、言った。

「どう?」

 急にアキナは目を開いた。

 苦痛に歪んでいた口元が緩み、笑顔になった。

「すごい! すごいよ、中谷さん!」

 アキナは手を広げて待ちかまえていた中谷に、抱きついた。

 中谷も、アキナもお互い満面の笑顔だった。

 その時、中谷の手がアキナの背中から少し下にさがっていった。

 アキナは一瞬にして、中谷の腕をとり、体を回して腰で中谷を跳ね上げた。

 そのまま腕を地面に向かって勢いよく引き下げると、中谷の体が綺麗に回転して地面に叩きつけられた。

「調子に乗らないでください。」

「ゴ、ゴメンなさい」

「中谷さん」

 亜夢が小さい子をしかるような口調でそういう。

 中谷は自分の腰をさすりながら、ゆっくりと立ち上がる。

 清川は一人で拍手をしていた。

「アキナちゃん、すごい背負い投げだね。どっかで習ったの?」

「独学なんです」

「けど、技の切れがオリンピック選手みたい」

「さっきのは非科学的潜在力(アシスト)した結果ですから」

 清川が運転席につき、助手席を空けて中谷が後部座席の中央に座った。

 アキナが運転席の真後ろ、亜夢が助手席の後ろに座る。

 高速道路へ入ろうとしたが、インターに行く道が渋滞していた。

「事故じゃない? 清川くん、警察無線」

 中谷に言われて清川が無線をいれると、確かに事故の状況や、いつ現場に付けそうか、とかを言い合っている。

「下道で行きます」

 横道をぐるりと回ると、反対車線側に合流した。

 すると、サイドミラーに何か映った。

「?」

 清川と亜夢は、ミラーに映った後方の車両を同時に確認した。

「あのバイクの女!」

 清川は振り切ろうとスピードを上げたが、信号で追いつかれてしまう。

 運転席側にバイクが入り込んでくる。

「!」

 バイクの女が、コツっと窓を叩くと、あっさりと窓がドアの中に落ちてしまう。

「えっ?」

「清川くん、ドアの下からガラスを支えている部分をはずしたんだ」

「用意、ドン」

 バイクの女がそう叫んだ。

 信号が青になり、清川もアクセルを踏み込むものの、バイクの加速にはかなわなかった。

「清川くん。相手にしないで、横道に入っちゃおう。何事もなく署に帰る方がせんけ……」

「ムカつく! 絶対にぶち抜く」

 アキナと亜夢は顔を見合わせる。

 アキナは驚いたような表情。亜夢は困ったことになった、という顔をしている。

「えっ? ちょっと、清川くん?」

「うっさい中谷。負けっぱなしでは気が済まないんだよ!」

 次の信号は二車線あり、バイク女は先に止まってい待っていた。

 清川の運転のパトカーが近づくとバイク女が振り返って、引き込むように大きく手を振った。

「なめんな!」

 亜夢は、背中をシートにぴったりつけ、シートベルトをぎゅっとつかんだ。

 アキナが恐る恐る運転席の清川の肩を叩いて言う。

「き、清川さん、あの、パトカーが公道でレースをしちゃまずいんじゃ?」

「そうだよ清川くん、相手を先に行かせて、横道を進もう」

 そう言う中谷も足をつっぱって、背中をシートにつけて顎を引いていた。

「う・る・さ・い。黙っとけ」

 切れた清川は、二人を振り返りもしなかった。

 ただ信号をじっと見つめて、発進のタイミングをうかがっている。

 信号が変わると、ものすごいタイヤの音をさせて発進する。バイクは何か操作ミスしたのか、加速が鈍い。

 物凄い風が、車内に入り込んでくる。特にアキナのあたりに風がまいている。

 顔に風が吹き付け、苦しく感じたのか、アキナが言う。

「き、清川さん、振り切ったから…… もうスピード落として」

「そうだぞ、清川くん、我々は警察なんだから法定速度をまもらないと」

「ふぅーふぅーふぅー」

 清川は肩で息をしている。

 聞こえていないのか、スピードは一切落ちていない。

「清川くん!」

「清川さん!」

「は、はい!」

 清川はそう言うと、急に正気を取り戻したようにブレーキを踏んでスピードを落とす。

 スピードが落ちると亜夢は後ろを見た。バイク女はついてきていない。確かにすごいスピードだしてはいたが、こんな短時間で振り切れるほどではないはずだ。亜夢は左右上下を注意して確認したが、バイクは見当たらなかった。

「振り切ったようね」

「ああ。事故が起こらず本当によかった」

 その後もしばらく走り続けた後、道路わきのコンビニに車を止めた。

「乱橋さんも森さんもちょっとコンビに入らない?」

「はい」

「亜夢がいくなら、私もいく」

 中谷は車の中に残って、三人はコンビニに入る。

 しばらくして、三人がコンビニ内をウロウロしていると、野太いエンジン音が聞こえた。

「亜夢、さっきのバイク!」

「アキナ、また競争にならないように、清川さんを店の奥に連れてって」

「亜夢はどうするの?」

「なんで私達をつけてくるのか聞いてくる」

「えっ?」

「アキナ、清川さんをお願いね」

 アキナは首を縦に振ると、清川の腕をとっておくへ行った。

 亜夢はコンビニから出てバイクの女に近づく。

 女は黒いフェイスマスク、サングラスに、黒の半帽をかぶっていた。

「制服じゃないんだ?」

 バイクの女から口を開いた。

「ヒカジョの制服着ないのかい? あんたプライドないのかい?」

 亜夢はコンビニの方を振り返って、そのガラスに映る自分の姿を見た。都心でヒカジョの制服をみて、非科学的潜在力があることがバレてしまった経験から、亜夢もアキナも私服を着ていたのだ。

「ほら、余裕ぶっこいてんじゃないよ。こっちを向きな。ほら!」

 黒い半帽をバイクのミラーに引っかけ、亜夢に突進してきた。

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