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EC-009 王太子と公爵令嬢の自明 2

※初心者故、気になったタイミングでこまめに加筆や修正を行います。何卒ご了承下さいませ。

※更新頻度は緩やかです。


▶︎静かなる攻防戦の裏側です。





 白東屋(ホワイト・ガゼボ)の軒下で淡紫(藤の花)が春色に揺れる。エクセルシウォルは眼前の女性を注意深く観察していた。


 レクレデイ公爵家が掌中の珠と愛してやまぬ公女、クラリオラ嬢。社交界でその名を知らぬ者はない。また、その姿を知る者も——。


 公爵夫妻や公子達が彼女を溺愛していると、本人達から直接聞いた事もある——が、それだけだ。


 蝶よ花よと真綿に(くる)まれるように大切に育てられた令嬢なのだ。(さぞ)かし無垢で純粋な心の持ち主なのだろう。


 そうして現れた公女はやはり、春の妖精か女神の化身かと思うほどの美しさで——エクセルシウォルは想像通りか、と眉を顰めた。


 頼りなげで可憐な笑みを浮かべるその姿が、記憶の彼方に仕舞い込んだ()()を彷彿とさせたからだ。


 ——無駄な時間を()()()()()のは酷だ。


 自分には可能性がないのだ、と悟らせねばならない。


 未来は甘い想像とは違うのだと。


 一刻も早く判らせねばならない。


 輝く希望が、望む期待が、黒く染まっていく地獄を味わう前に——。





 「——まるで仮面のような笑顔だ」




***




 クラリオラは感嘆していた。


 完璧に「公爵令嬢の仮面」を被っていたのに。


 手を抜いたつもりはない。


 相手は王族であり、この国の王太子であり、パルクドゥート王国の奇跡と謳われる御方。半端な覚悟でこの場に臨んだつもりはなかった、が——見抜かれた。


 


 

 「お分かりになるのですか?」




***




 意外な返しにエクセルシウォルは眉尻を上げる。反射的に問い返した。


 「認めるのか?」


 「はい、殿下」


 またもや即答。


 更に増す可憐な笑み、秘色の瞳のその奥に真意は映らない。問答を繰り返す事に意味はあるのか。または純粋さ故の好奇心からか。


 今まで浴びた事がないであろう侮蔑の言葉を前に落胆の色すら見せない。淡々と返答する公女は、自分の意図を探ろうとしているようにも見える。


 「非礼な態度で何を得るつもりだ」


 純粋に疑問が言葉となった。


 やや詰問口調となった問いを前に、やはり公女は微笑みを崩さない。




***




 この方は、()()()私を選ぶ気などないのだわ——。


 クラリオラは得心がいった。


 感情が見えない石灰色の瞳が、何かしらの意思を持って微かに虹色を映している。


 間違いない。


 王太子殿下は、敢えてこの様な態度を取っていらっしゃるのだ。


 ならば私は、()()にお答えするのみ。


 「——なにも」





 ——なにも得ようとなど思っておりません。






イメージは、鍔迫り合い中の剣士(笑)

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