魔女の住居
ジャック「グレーテ。目を開けてみなよ。上からの景色がとてもキレイだよ」
私「ムリっ!絶対ームリーだから…」
私は落ちる怖さのあまりグリフォンを抱き枕状態にしてしがみついていた。
ジャック「ふーん。こんな体験滅多にないのに...」
ジャック「着くまでずっとそうしてグリフィンの背中に抱きつくのかい?」
ジャック「少しは体を上げてみなよっ!もう落ち着いたから怖くないって」
私「落ちない?」
ジャック「大丈夫だよ」
私「あなたの『大丈夫』は信用できないんだからっ!」
私「精霊の森の時だって、私落ちたでしょっ!」
ジャック「あー。そうゆうこともあったねー...」
私「あったねー。じゃないー」
ジャック「まぁまぁ。今回は本当に大丈夫。たぶんキミが落ちるなら僕も一緒に落ちるだろうし...」
私「それ『大丈夫』じゃないからっ!」
ジャック「っというより、グリフォンがずっとキミに締め付けられていて苦しそうだけれど…」
ジャック「その方が嫌われて振り落とされそうだけど...」
グリフォンを見ると本当に苦しそうだった。
グリフォン「グワァーッ!」
私「えっ 本当だ!ごっごめんっ!」
私は目を瞑ったままグリフォンの体から離して体を起こした。
私「コッコワいぃー…」
ジャック「そりゃ怖いだろうさ。目をつむったまま体を起こしたんだから...」
ジャック「目を開けてみなよ」
ジャック「そのままだったらいつまで経っても怖いままだよ...」
私「う〜ん...」
私は恐る恐る目を開けた。
目を開けると上から見る広大な自然の景色が焼きつくように私の視界に飛び込んできた。
私「わぁ!すごい!」
ジャック「そうだろ?」
私「うん!」
グリフォンがバサバサと翼の音を立てる。
私「私、空を飛んでいるんだぁ!」
私「もうこれだけ高いと逆に怖いって感覚じゃないのかも」
私「わぁー…」
ジャック「ほら。あそこ!」
ジャックが指差した方向には、ジャックの看病の際に私が水を汲みに行った川があった。
私「もうここまで来たの?!」
ジャック「うん。 早いね」
グリフォン「グガァーゴォ!」
グリフォンが鳴き叫んだ。
ジャック「ん?もしかして、あとちょっとで着くのかもね」
ジャック「グリフォンが降下し始めたよ」
ジャック「さっきの鳴き声は降下するよって合図だったのかな」
私「グリフォンお願いっ!出来るだけゆっくり、ゆっくーり、降りくれると嬉しいなぁ...」
グリフォン「グァーーっ!」
私「ちゃんと伝わりましたか?」
グリフォン「グァーーっ!」
私「もー!人の言葉で話してくれないと分からないよー」
ジャック「無理言うよ。本当にキミは」
グリフォンがゆっくりと降下し始めた。
ジャック「だいぶ降りてきたね」
私「やっぱり…やっぱりムリっ!」
私は再びグリフォンを抱き枕状態にした。
「バサッ バサッ ガァー...ゴゴゴ...」
ジャック「可哀想に…」
グリフォンが地上に足を付けた。
ジャック「着いたね」
ジャック「グレーテ着いたよ。もう離してあげてっ 」
ジャック「グリフォンが白目になって、泡を吹いているよ」
私「ごめんっ着地する時、すごく怖くて首絞めてたかも」
ジャック「次乗る時は僕が前になるよ」
ジャック「グリフォンが可哀想だからね...」
見渡すと一面に田園が広がっており、のどかな風景が広がっていた。
私「ここが...魔女メーディアの元住んでいたところ...」
私「なんか私が思ってたのと違う」
私「なんかもっと禍々しいかと...」
ジャック「地図によるとあそこだね」
ジャックが指差した方には小さな小屋があった。
私「ふーん。あそこかー」
私たちはグリフォンを連れて小屋まで向かった。
私「庭には畑もあるし...農作業とかしてたのかな..」
私「ふーん。なんだか普通だね...」
ジャック「うん。そうだね」
ジャック「でも手入れはされていないようだから、暫く誰も立ち入ってはいないようだけれど」
小屋の前には木があり、その木の元には石碑のような物があった。
私「何か書いてある」
私「....ィア?」
私「かすれていて読めない...」
ジャック「誰もいなさそうだし中に入ってみようか...」
私「うん」
私たちは恐る恐るメーディアの元家に入った。
部屋の中はとても暗く、所狭しと本が山のように積み重ねられていた。
私「中はいかにも魔女の家って感じ...」
私たちは持っていたロウソクに火を付けて、手がかりになるようなものを探し始めた。
ジャック「これはなんだろう...」
魔女が使っていたと思われるデスクの上には一冊の手記があった。
ジャック「動物実験其の一…実験結果 失敗」
ジャック「動物を使って何かの実験をしていたようだね...」
ジャック「何の実験だ…」
「実験記録 マウスに致命的外傷を与え、生命活動停止後、生命体の完全治癒を試みた」
「数時間後、マウスは目を覚ました。実験は成功したと思われた…」
「しかし、そのマウスはエサを与えても食べる様子はなく、自らによる生命活動はその後行わずに息絶えた」
「この結果から、やはり生命活動停止後、生態から何かしらのものが抜け出していると思われる」
「何匹も試したが、同じ結果となった」
「これでは、本体で試みることはできない...」
ジャック「本体ってなんだ?」
ジャック「魔女は甦りの実験をしていたのかな...」
ジャック「でも何で、わからない...」
私「何でだろうね...」
私「他にも何か手がかりになるような物があるかもしれない...」
私「探してみよう」
その後、部屋を探し回ったがこれといった手がかりは見つけられなかった。
私「ないねー...」
ジャック「そうだね...」
ジャック「ここにある本や手記もすべて生物の甦りについてのものばかり」
私「メーディアは相当大切なペットを失ったのかな…」
ジャック「…そう…だね...」
ジャックの顔がまた少し曇ったような気がした。
私 ( やはり、何か私にまだ隠してる...)
私 ( この際、思い切って聞いてみるか)
私「ねぇ!ジャック」
ジャック「ん?何だい?」
私「前から気になってたことなんだけど、何か私にまだ話していないことない?」
ジャック「ハハッ…どうしたんだい。急に...」
私「今の嘘笑いよね...」
私「あなたが嘘をつく時って、顔が少し曇ったようになって、そうやって笑うの」
ジャック「気付かれていたか...」
ジャック「じゃあ、もう仕方ないね...」
ジャックのいつもにこやかなの表情が一変して、まるで別人かのように目つきが変わった。