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オンラインゲームしてたらいつの間にやら勇者になってました(笑)  作者: こばやん2号
2部【アース大陸横断編】 第1章 「目指せドグロブニク 漫遊編」
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81話:「大和のRPG座談会」

リナ、エルノア、マーリンは固唾かたずを飲んで見守っていた。

今彼女たちの目の前にいるのは魔王の右腕と称される最悪の魔族メフィストフェレスその人。

見た目の派手さとは裏腹に纏っているオーラは禍々しく強大で近づくことさえできない。

それは物理的なものではなく心情的なものだと彼女たちの心が訴えかけてくる。

近づけば待っているのは【死】、それは揺るぎない事実だった。


そんな圧倒的な力を保持する相手に対峙している一人の男がいた。

小橋大和、この世界に転移し魔王討伐を目指して彼女らと共に旅をする勇者である。

この場にいる者の中でメフィストに唯一対抗できるのは彼だけだろう。

まるで母親がいなくて不安だという顔をした子供の様に大和の背中をリナは見つめた。


ごくごく平均的な背丈と黒髪短髪を生やした青年だが見た目はこの世のものとは思えないほどの

美を纏った美青年―――最もこの世界の美的センスで言えばの話だが―――が口を開く。


「それはいくら何でも早すぎるよっ!」


彼の一言で場の空気が変わった。

なぜなら大和の放った言葉でメフィストの殺気が薄れたからだ。

その言葉を聞いて怪訝な表情を浮かべたメフィストが彼に問いただす。


「それはどういう意味だい?」


そう彼が問いかけると大和はメフィストにこっちに来いと手招きをする。

メフィストもまたやれやれと言った感じで肩を竦めるとトコトコと彼のもとまで歩み寄った。

そして大和と彼の距離が人ひとり分の距離まで縮まった時大和がその場に座り込む。

どこからか拾ってきた手ごろな棒っ切れをペン代わりにして地面に何か書き込んでいく。


メフィストも彼が何を書いているのか気になったようで彼のすぐ隣にしゃがみ込んで両膝の上に

握った両手を乗せながら彼の書き終わるのを静かに待つ。


「よし大体こんな感じかな・・・・」


目的のものが書き終わったのか手を止め先ほど使っていた棒で指し示しながら説明をし出した。


「いいかここが今いるアース大陸な、でこっちがビルド大陸になってて

その下がサルバン大陸でさらに南にあるのがゲムニ大陸まあ大体だけどこれで合ってるよな?」


大和が彼に問いかけると何をいまさらそんなことをという顔をしつつもコクリと頷く。

それを確認すると大和はさらに続けた。


「でだ、魔王の本拠地があるのはゲムニ大陸で俺らはここを目指してるわけだが

今俺たちがいるのはアース大陸西部のここら辺だ」


「そうだねそこら辺だね」


まるで地理の授業のように地面に書かれた大雑把なこの世界の大陸図を棒で指しながら

目の前の生徒に一つ一つ順序立てて説明する。


「ここからが本題だが俺らの現在地はここ、目的地はここだろ?

 目的地まで二つの大陸と海があるわけだ。 もうわかるだろ、俺の言いたいこと?」


「いいや、わからないよ?」


膝の上に軽く握った拳をちょこんと乗せながら首を左右に振る彼を見て

憤慨ふんがいしたかのように大和が語気を荒げながら説明を加える。


「だからぁ! 俺らの魔王討伐の旅はまだ序盤もいいとこなわけだよ。

 そんな序盤に魔王の右腕のフィスが出てきたらこの後の展開としては

薄い内容になるって話なわけだよっ!!」


「んん~?」


一瞬大和が何を言っているのかわからなかったメフィストは

眉間に皺を寄せながら地面の大陸図を凝視する。

その反応を見てさらに捕捉説明を大和が付け加える。


「仮にここでフィスと本気で戦って俺が勝ったとしよう」

「ちょっと待って僕が負ける前提なのかい?」


自分の預かり知らぬところで敗北の烙印を押されたことに憤りを感じたのか

彼が反論しようとするのを手で遮り続きを話す。


「いいから聞けって、仮に勝ったとしよう。

 ああ、因みに聞くけどフィスより強い魔族って魔王だけ?」


「ああそうなるね魔王様の次は僕になるね」


そう答えた彼は少しばかり自慢気だった。


「てことは仮にこの場でフィスを倒してしまうとこの先俺たちを食い止める魔族は

フィスより弱い魔族だけということになってしまって物語的にめちゃくちゃにならないか?」


「なるほどねそういうことかっ!」


彼が大和の言いたいことを理解したところで今度は逆のパターンを彼に提示する。


「逆に俺がフィスに殺されちゃったらさ

ビルド大陸とサルバン大陸にいる魔族たちの役割が無くなっちゃうじゃん!

 もう勇者である俺がこの世界に来てることは知れ渡っているわけだから

当然こことここの大陸にいる魔族も俺に備えて何か策を準備してるわけだろ?

 それを今お前と戦って殺されたら前もって準備してたこいつらの努力が無駄になるじゃないか!!」


王道RPGにおいて物語が進むにつれて出現する敵がドンドン強くなっていくシステム

通称【パワーインフレ】というものがある。

そのシステムに沿って行くのであれば旅の序盤に出てきたナンバー2のフィスと本気で戦うことは

RPGの概念を覆す展開なのだ。

それこそ序盤にラスボスが登場してその戦いに勝ってしまったら

一体何を目指して進めばいいのかわからなくなってしまうのではないだろうか?


「そもそもRPGにおいて序盤にラスボスが出てくるというパターンのものはだねっ・・・・」


ここから十数分間大和のRPG座談が展開された。

RPGはこうあるべきだのあのRPGはもっとこうしたほうがおもしろかっただの

彼が今まで向けてきた情熱を目の前の魔王の右腕にぶつけた。


そして彼も大和の話すことを静かに聞いていた。

専門的な言葉もあったが自分がわかる範囲で彼の言っていることを理解しようとしていたのだ。


「だからそう言うわけでこのタイミングで俺とお前が本気で戦うのは良くないのだ!!」


と締めくくった。

大和の頬は熱を帯びたように赤く火照っている。

自分のRPGの価値観を久々に熱く語ってしまったが得も知れない満足感が彼の体を支配していた。


彼の言い分を全て聞き終えたメフィストは先ほど彼が言った言葉をかみ砕いて

自らの価値観と照らし合わせていく。 その結果。


「ふふふふふふっ」


最初は小さな笑い声だったが次第に声は大きくなり

最後には腹を抱えるほど大きな声で笑っていた。

ひとしきり笑い終えると目に溜まった涙を手で拭うと彼に向き直る。


「ヤマトってやっぱり面白いっ!!」


そして彼が時折見せる本当の笑顔を顔に浮かべながら


「君の言いたいことは何となくわかったよ。

 つまり楽しみは後にとっておいた方がいいってことかい?」


「まあ端的に言えばそんなもんだ!」


自分の言いたいことを理解してくれたのが嬉しい大和と

彼の言いたいことを理解できたのが嬉しいメフィストがお互い視線を交わし

声に出して笑い合った。



「じゃあ僕はこのまま帰ることにするよ」

「そうしてくれるとこっちも助かる」


そう言うとメフィストは大和に背中を見せながら歩いていき十数歩進んだところで大和に向き直る。


「でもヤマトよく覚えておいて、僕と君はいずれ本気で戦わなきゃならないってことをさ!」


「当たり前だ! 俺が勇者、お前が魔族である限り俺たちはいずれ本気で戦わなきゃならない。

 でも今はまだその時ではないと言うことだよ!!」


大和の言葉を聞いて満足したのかメフィストの体の周りから闇の霧が発生すると彼の体を覆いつくした。

そしてその霧が消えていくと彼の姿もまた闇と共に消えていったのだった。

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