105話:「説明」
「・・・・というわけだ」
サマエルとの間に起こった出来事を洗いざらいリナたちに説明した。
彼の説明を聞いた彼女たちの反応は総じて同じ反応だった。
目を見開き驚く者、半眼でこちらを睨む者、難しい顔を張り付ける者と
表情はさまざまなれどその反応は好色の色ではない非難の色を湛えていた。
「ヤマト様、何をやっているのですか? 友達? ふざけないでください」
彼の取った行動を最初に非難したのはリナだった。
彼女の非難に他の者たちも無言で同意する。
魔王討伐を使命とする大和たち勇者一行にとって魔族は討つべき存在なのだ。
にもかかわらずその魔族と友になったと宣う彼の行動を理解しろというのが難しかった。
リナの非難に続いて他の者たちも大和の行為を咎める意見が出た。
「我々の使命をお忘れですか?」とか「何やってるですのん」とか
彼女らの言いたいこともわからなくはないのだが大和は自分の意見を彼女たちにぶつける。
「そもそも俺たちの目的ってさ魔王討伐であって魔族根絶じゃないじゃないか!
いや、そもそも俺は魔王すら討伐の必要はないと思ってるぞ」
大和の発した言葉に今日一番の驚愕の声が上がった。
そして、その宣言の意図を汲み取ろうとするように彼に問い詰めてくる。
「ヤマト様それは一体どういう意味なのですか?
この世界を支配する魔王を討伐し平和をもたらす。 それがこの旅の最終目的ではなかったのですかっ!!」
今までの旅を否定する彼の言葉にエルノアが語気を強める。
その問いかけに対し、大和は正直な気持ちを打ち明けた。
「あのさ、今問題となってるのって魔王がこの世界を支配してて
この世界の人たちが困ってるわけだろ? だったら魔王にこの世界を支配するの止めてくれって頼めばいいじゃん」
大和のまるで子供のような意見に場の空気が緩んでしまったが
すぐにリナたちの集中砲火を浴びてしまう。
そんな状況にこの事態を招いたもう一人の当事者が大和に声を掛けてきた。
「ヤマトの兄貴、大丈夫ですかい?」
「どうやら俺の価値観はこの世界では異質らしいな・・・・」
右手を頭に乗せながら困った表情でサマエルに返答する大和に対し
サマエルが真剣な表情で問いかけてきた。
「兄貴、本当にこれでよかったんですかね?」
「ん?なにがだ?」
「その・・・・魔族の俺なんかと友達になるとか。
俺は魔族だし、兄貴は勇者で・・・・・・」
そう言い終わる前にサマエルの言葉を遮るように彼の肩に両手を乗せる。
そして柔らかな笑顔で大和は答えた。
「そんなの関係ねえだろ? 俺はお前のことが気に入った、だからお前と友達になったそれだけだ。
まあ今のお前の立場で俺と友達だって言うのはかなり厳しいことだと思ってる。
だからこそ俺はこの世界に平和を取り戻す。 お前のためにもそして何より俺のためにも」
そう力強く宣言する彼の瞳を少し潤んだ瞳で見つめ返しながらサマエルは「兄貴・・・・」と呟く。
大和は大和で彼に爽やかな笑顔で答えサマエルと視線を交わす。
男の友情を噛みしめながらその思いに浸っていると何か妙な視線を感じたのでそちらに目を向けてみる、すると。
そこには疑心に満ちた視線や何かいけないことをしているといった感じの目が二人に向けられていた。
一人だけ嬉々として目を輝かせている者もいたが何か奇妙なものを見たような視線が主だった。
「ヤマト様はその・・・・そういう趣味もあるのですか?」
今まで閉じていた口を開き問い掛けてきたのはマチルダだった。
まるで道端に捨てられた子犬のような目で縋るように問いかけてくる彼女に
彼女の質問の答え如何で状況が一変すると鋭敏に察した大和は彼女が求めているであろう答えを口にすることにした。
「何言ってんだよ俺にそんな趣味はない!
俺が好きなのは女だ!!」
その答えに安堵の表情を浮かべ「ホッ」とため息を漏らすマチルダに対し
大和の答えを聞いた他の女が発情した雌犬のように問いただしてくる。
「でっでは今晩私と一緒に寝ましょう!!
女性が好きと言うことであるならなんら問題はないですよね!? ですよね!!?」
「問題ありありだ!!」
だらしない顔で鼻の下を伸ばすリナにいつものチョップをお見舞いし黙らせる。
それを見たエルノアが何か言いかけようとしたのを止め、マーリンも何か言いたそうな雰囲気だったが
リナが頭から煙が出ているのを見て口を閉ざした。
一旦状況を整理するために大和はゴホンと大きく咳ばらいをすると
改めて事態の確認をする。
サマエルの話では他の大幹部3人も大和を倒すべく兵を集めているらしい。
お互いの状況を一通り聞き終わると今後の方針について話すことにした。
「まずはサマエル、お前たちはこのまま姿を眩ました方がいいかもな
勇者と友達になったことが知れたら最悪裏切り者扱いされてしまうだろ?」
「そうですね、とりあえず魔力の衝突があったことはメフィスト達にバレてますから
戦闘があったことは向こうにも伝わったはずです。
ですけど、兄貴と友達になったことは気付かれてないはず。
勇者に深手を負わされたという体で俺はしばらく身を隠します」
次にメフィスト達の勢力と戦わなければならないためその方針をみんなに求めた。
魔族の大幹部3人を同時に相手どらなければならないことに一同の顔は暗いものだったが
相手が攻勢に出てくる以上逃げることはおそらくできないだろう。
「まあとりあえずフィス達とは戦うということで決まりね。
急いで町に戻って戦いの準備をしようか」
こうして大幹部の一人サマエルとの戦いに幕が閉じられる。
そして大和たちに新たなる戦いの始まりが告げられようとしていた。




