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忘れ屋さん
『嫌なこと、忘れさせます。』
看板に大きく描かれた文字は沢山の人の視線を引いた。
人には必ず嫌な記憶がある。
それは虐待の記憶だったり、失敗の記憶だったり....
私はその記憶を喰べることができます。
私は記憶喪失でした。
ですが、その失ってしまった記憶には不思議なほどに執着がありませんでした。
きっと、人から記憶を貰う(喰べるとも)ことができると本能で察していたからでしょう。
まあ、私が忘れ屋さんを営んでいるのはそんな、記憶喪失を治すためだとか、そんな壮大なことをするためでなく、ただただ知的探求心、知的欲求を満たすためです。私からしたら、いじめや虐待の悲惨な記憶も、失敗の記憶も、面白い随筆でしか無いのです。道徳心に欠けるだとか、言われても仕方ないと思っていますが、まあ、人の記憶なんて他人から見たらその程度なのです。
おっと、お客さんが来たようです。
それでは少し失礼します。
口から少し、涎が垂れた。




