8話 空腹
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森の中、俺の声とダチョウどもの鳴き声が響き渡る。
「『磁極付与』、『磁極付与!』」
「ギギャァァァァア」
「ギギッキッ!ギッ!」
大岩にくっつき、動けなくなるダチョウの群れ。
そこへ、
「『磁極付与』」
ビュンッ、ドスドスッ、ザクッ、ズバッ!
「ギャァァァアア!」
「ギギギ……ギッ!」
《レベルが上がりました》
《レベルが108になりました》
よし、ダチョウ4体の討伐完了。このダチョウの魔物、ほぼ必ず群れで現れる上に、数も多い。
レベル上げにはちょうどいい。
それに、『磁極付与』の(複数選択)はかなり便利だった。
(複数選択)は、その名の通り複数の対象に同時に『磁極付与』がてきる。
だが、S極とN極を同時に『磁極付与』出来ない。
また、複数に『磁極付与』した場合、消費魔力は20ではなく、20×対象の数になる。
まあ、それでもかなり強いし、いいんだけど。
とりあえず、ステータスの確認。
「ステータスオープン」
ステータス
アオイ・モチヅキ
種族:人間
年齢:17
レベル:108
体力:5,400/5,400
魔力:5,400/5,400
攻撃力:5,400
防御力:5,400
素早さ:5,400
固有スキル:『磁石』
ついに、ステータスの数値が5,000を越えた。
これで充分かと言われると、そうではない。
俺のステータスは、あの城にいる中で一番弱い騎士よりも低い、とあのクソ野郎は言っていた。
そして、その弱い騎士の、レベル1のステータス値が100だったとする。
そうなると、その騎士がレベル55になっただけで、俺のステータス値を抜かれる。レベル55とは、分かりやすく言えばあのダチョウ約10体分である。
それに、他の騎士のレベル1のステータス値は、最低でも500はあるだろう。
それだと、その騎士はレベル11になるだけで、俺を抜かせる。
つまり――まだまだ、足りない。
あのクソ野郎に関しては、少なく見積もって、1,000を越えているだろう。
この程度で、満足していてはいけない。もっと、強くならねば――その時。
グゥゥウ……
「……痛ぇ……」
お腹が、ふいに痛くなった。
なんだ、食中毒?……そうか、空腹か。
空腹のあまり、腹が痛くなっているのか。
そういえば、あのクソ女神に追放されてから約1日、何も食べていない。
あのクソ女神、水も食料も渡してくれなかったしな。
まあ、渡してくれたところで、クソ女神に貰ったものを食いたくはないが。
だが、このままでは、魔物に殺される前に力尽きてしまう。
「……食料を確保しないとな」
周囲を見渡すと、先ほど倒したダチョウの死体が転がっている。
ダチョウ。鳥。肉。鳥肉。
「……魔物の肉って、食えるんだろうか」
ダチョウの肉の見た目は、普通の鳥類に近いが、色が毒々しい。食べたら確実に腹を壊しそうだ。
だが、今はあれしか……食べるしかないか?生で?
いや、さすがに生肉はだめか。ほぼ確定で、食中毒になる。
そこを襲われたら、終わりだ。
そうだな……火を使えれば、いいんだが。
「『磁極付与』」
地面に落ちている石にS極を付与。
「『磁極付与』」
ナイフに、N極を付与――パチンッ!
「ゲホッゲホッ!――ハァ」
一瞬火花が散ったものの、石が砕けて粉になってしまった。その粉を吸い込んでしまった。
その状態まま、粉がナイフに引き寄せられ、慌てて『磁極付与』を解除する。
これじゃあ、無理だな。
仕方ない、原始的な方法で火を起こすか。
「『磁極付与』」
今度は木の枝にS極を付与。
「『磁極付与』」
別の枝にN極を付与。
そして、枝同士がくっつく。
ゴシゴシッ!
枝を掴んで、前後に動かす。枝同士は『磁極付与』でくっついてるため、枝が離れることはない。
摩擦熱で煙が立ち上る。もう一押しだ。
さらに強く擦り続け――ポッ。
小さな炎が灯った。
「やった!」
急いで枯れ葉を集め、火を大きくする。
そして、ダチョウの肉をナイフで切り分け、急いで作った串に刺して焼き始める。
「……うまそうだ」
脂がジュージューと音を立て、食欲をそそる匂いが漂う。
しばらく待って、肉に火が通ったのを確認し、一口――。
「……熱っ!」
慌てて口の中で肉を転がす。それでも、肉の味はしっかり感じられた。
意外と美味い。野生の味か……。
「もっと獲っておくか」
残りのダチョウからも肉を切り取り、焼いて保存する。
そうだ、もしかしたら、あの猪とかも食えるか?前の世界では、そういう人もいたし……止めよう。
食べれたとしても、食べたくない。気持ち的に。
とりあえず、これでしばらくは食料に困らないだろう。
さて、次は水か。
水筒……は、作れないか。
一応、すぐそこに川があるんだよな。
かなり川上の方で、動物の糞などは混じっていないだろう。
とりあえず、少し飲んで喉を潤わす。
さて、この水持ち運べないかな。
……そうだ。水を、『磁極付与』で圧縮できないかな。さっそく実験。
まず、1滴ほどの量の水に、S極付与。
そしてその周囲、半径30センチメートルほどの水にN極付与。
すると、水は中央へと集まっていき……小さな、水の玉になった。
川のなかに沈む前に、その水の玉を掴む。
……重っ。
当たり前か。直径30cmの水が、この小さな玉になってるんだ。
とりあえず、このまま持ち運ぶか。
ズボンにでも――パシャ。
「……冷てぇ……」
ズボンにいれ、布に触れた瞬間――水がズボンに染み込んでいった。
「『磁極付与』、『磁極付与』」
『磁極付与』でズボンの水にS極を、すぐそばの岩にN極を付与し、ズボンから水を剥がす。完全には引き剥がせなかったが、少しはマシになった。
……持ち運びは、無理か。
あれ?ていうか、そもそも川に沿って歩けばいいんじゃ?
そうすれば、いつかは人里に着くだろ……。
あっれ俺、召喚されて頭悪くなった?
主人公は勘違いしてます。レベルの概念があるのは、異世界から召喚された者のみです。
魔物はもちろん、騎士や女神にもありません。その代わり、騎士や女神は最初からステータス値が高かったり、特殊な武具などを使うなど、何かしら対策をたてています。
……それでも、まだ負けていますけどね。




