1話 死亡
……はい、一年近く失踪していた小兼です。
まぁというわけでまずはゴメンナサイ。
活動再開します。
この作品は大体3年前くらいから構想してたもので、何となく書いてみるか!ていう感じで書き始めたものです。ちゃんと完結させる予定です。
毎日投稿したいと思います……一応、しばらくは。
それでは『磁石無双』、本編へどうぞ。
俺の名前は望月葵。見た目はいい意味でも悪い意味でも、普通の高校生だ。
普通の中学校を卒業したのち、第一志望であった、県内トップクラスの高校に入学した。そこは将来有望とされる者達が――言ってしまえば、勝ち組の人間が集まる高校だ。俺の最高の人生は、もう約束されたも同然。そう思っていた。
そして今、隣を歩いているのは同じクラスの十河誠治。俺と同じく、どこにでも居そうな高校生……訂正。顔だけは俺の倍くらいいいヤツだ。くそう、テストの点も成績も、十河に負けたことは一度もないのに。顔だけが、唯一の敗北ポイントだ。
でも、フラれた回数は勝ってるからな!
とはいえ仲は良く、休日になるとこうしてよく一緒に遊んでいる。今日も午前中にゲーセンをはしごしたところだ。
ちなみに十河にはボコボコにされた。あいつは顔だけじゃなくゲームも上手い。
俺が必死に覚えたコマンドで打った技も、十河は涼しい顔でボタンぽちぽちで返してくる。くそ、どうしてこうも全てを持って生まれる奴がいるんだ?
お、そろそろ昼飯の時間だ。
「おい、そろそろ昼だし腹減ってきたから、焼き肉行こうぜ。俺が奢ってやるからさ」
「えー? 俺、焼き肉よりも寿司食いたいんだけど」
「寿司は高ぇだろ。誰が金払うと思ってんだよ」
「焼き肉だって高いだろーが。そもそも普段から十万持ち歩いてるくせに、なんで値段気にすんだよ」
「それ外で言うな! 誰かに聞かれてスリにあったらどうする! とりあえず、焼き肉な!」
強引に焼き肉に決めさせ、近くの焼肉屋へと向かう。そこまではほぼ一本道なので、歩いていれば着く。
その焼肉屋、とにかく届くのが早いのだ。代わりに火力が弱くて、全く火が通らないせいで3回ほど中毒になりかけているが。
その間暇だなと思いながら、俺はスマホを取り出した。
SNSに通知が来ていないか確認して、好きな配信者が更新していないかも見て、おすすめ動画も少しだけ……のつもりだった。
が、いったんスマホを開いたら気になるものを片っ端から確認してしまうのが俺の悪い癖で、気づけば意識が完全にスマホの画面へと吸い込まれていた。
「おい、いつになったら着くんだ?」
十河の声にハッと顔を上げると、見慣れない景色が広がっている。どこだ、ここ。
慌ててマップを確認すると、焼き肉屋を500メートル以上通り過ぎていた。
「ごめん、通り過ぎてた! 戻るぞ!」
「おいおい、案内役が間違えんなよ……」
十河の呆れた声を背に、俺は来た道を引き返して全力で走り出した。
風の音が耳元でごうごうと響く。早く戻って、早く肉を食おう。焼き肉か寿司かなんて些細な問題だ、腹が減っていれば何でもうまい。
そうして半分ほど進んだところで、突然、風が止んだ。
足音。周囲の音。十河の声。
「待っ……! 上!」
上?
走りながら何気なく視線を持ち上げる。ちょうど真上に近い位置に太陽があって、まぶしくて思わず目を細めた。
くそ、何で上なんか見せようとするんだ十河のやつ。
だが、そのまぶしさの中に、黒い影が見えた。
小さな影が、だんだんと大きくなっている。
いや、違う。落ちてきている。
俺の、顔に向かって。
気づいた時にはもう遅かった。
ガッチャン!
「葵ぃ!」
遠くから、十河の声が聞こえる。が、そんなことに構っていられない。
痛い、痛い、痛い。俺は顔を押さえて地面に蹲る。
うっすらと目を開くと、周囲には大量の土と花と、茶色い破片が散らばっていた。植木鉢。落ちてきたのは、植木鉢だ。
移動中にピンポイントで頭に植木鉢が落ちてくるとか、どんな確率だよ。その確率を宝くじに使えたら人生が変わっていたのに。
なんて現実逃避気味の思考をしている間にも、俺の意識はどんどんと薄れていく。
視界が赤く染まっていく。地面に赤い水溜まりができている。頭の感触がおかしい。手で押さえた頭蓋骨が、砕けていた。
これは、もう助からない。
最期に見る景色が自分の血の海なんてなぁ……せめて青空とかお花畑がよかったな。
「葵! 大丈夫か!」
何言ってんだ。これが大丈夫に見えるか。見えるなら節穴だぞ。
手足の感覚がもうない。目も、何も見えなくなった。残り時間は三十秒もないだろう。
「そご、う……最期に、頼みたいことがある……」
「最期とか言うな! まだ助かるかもしんねぇだろ!」
無理だ。脳がやられている。これで助かるわけがない。まだ生きていることの方が不思議なくらいで、もう感覚のない身体で、俺にできることはただ一つだけ。
「いいから聞け……皆に、『ありがとう』と、伝えてほしい……」
「……わかった」
ありがとう。頼んだぞ――
そう思ったところで、俺の意識は途切れた。
...
..
.
そうして、俺はそのまま死ぬ――はずだった。
薄れていくはずの意識が、上にグンッと引っ張られ、元に戻っていく。
気づいたら、俺は全く知らない場所で寝転がっていたのだった。
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