【15才】大人の階段の二歩目を登る♡
オベリン様が王宮から、ぷりぷりして戻って来られた。
「レンリー、お前の兄上達は思いの外の執念深さだぞ。」
ん?大好きな兄様達を悪く言われて、
思わず僕の目付きがきつくなる。
「そんな可愛い顔で怒るな。
だがな、《魔王》はないだろう。
いくら何でも。
《大魔王》って言うのもあったぞ!」
「たぶん私の事らしいが、
この国にもうひとりオベリン·スタークがいないのならばな!
『オベリン·スターク辺境侯爵は、
自分の邸宅を魔王城にしたんだそうだ。
国中の高級遊廓から遊女と男娼を買い集め、
連日連夜“酒池肉林”の大騒ぎを興じているそうだ。』」
「そんな品のないことを、兄上達が言っているのですか?
僕は、とても信じられません。」
「べつに、レンリーの兄上達が言ったのではないのだろうが。
噂は、面白可笑しく尾ひれがつくからな。」
「ふーん。」
「怒るな。
お前のすぐ上の兄は、陛下と昵懇の仲であろう。
陛下が、鬼の首を取ったように大喜びだぞ。
『遊廓で家の使用人を集めるとは、上手い事をしたな。
金のかからない良い方法を思い付いたものだ。』と」
「はー。なるほど。」
「宰相のじいさんまで、
私を見る目付きが胡散臭いものを見るようにする。
王宮の馬屋に私の馬を引き取りに行けば、下っぱの兵士が、
『この馬は魔王様のお馬でございましたか?』と。
ふざけているのかと思ったら、結構真面目に言っているようで呆れた。
兵士関係への出所は、一番上の兄か。
あの長兄は、特に怒っておったからな。
レンリーを返せと言われるかとハラハラしていたんだぞ。」
「ぷー。あはは。あはははは。可笑しー。
ふーふー。苦しい。
あはは。《大魔王》?すごいあだ名。
わー。あははは。涙が出ちゃうよ。可笑しいー。」
「ふー。やっと笑ったな。レンリー。
お前をこの家に連れて来てから、
嫌な想いばかりをさせてしまった。
伯爵家の可愛い末っ子の笑い声を、すっかり取り上げてしまっていた。
申し訳ない事をしてしまったな。」
オベリン様に謝らせてしまった。
そんなつもりなんて、なかったんだけれど。
確かにずっと声をあげて笑ってはいなかったかも。
***************
今日僕はオベリン様のお留守に、チー兄の新しい家に遊びに行ったんだ。
チー兄はイアニス兄様の結婚と同時に、
王都のフェザリンド伯爵屋敷を出て独立をしていた。
イアニス兄様のお嫁さんは、宰相閣下のお孫さんのお一人。
宰相閣下は娘さんが4人。
その娘さんが皆さんご結婚なさってお孫さんもたくさんいらっしゃる。
その中のお一人がイアニス兄様と結婚をしたんだ。
チー兄は、独身生活を謳歌している。
いつも、チー兄は『結婚する奴の気が知れない』と言っている。
チー兄と久しぶりにゆっくり話ができてとても楽しかった。
頭にかかっていた雲が、少し晴れたような気がする。
父上が僕に遺してくれた隣街の家の話をしていたら、
父上はチー兄にも同じような家を遺していたんだ。
チー兄に父上が相続をさせた家は、僕の貰った家のある王都の隣街とは、
反対側の王都の隣街の家で。
父上ってば、そこにも母上に内緒で“女の人”を住まわせていたんだって。
前から僕が気になっていた事を、チー兄に聞いてみた。
その家に住んでいた“女の人”は、いったいどこへ行ったんだろう?
父上が亡くなった後に、家を追い出されたりしてはいないんだろうか?
チー兄は詳しく知っていた。
話が面白くて、内容を聞いてホッと安心した。
「父上は、《上げチ○》で、
そのご利益が陰で評判だったんだぞ?
お前、知らないのか?」
何の事かと思ったら、
父上とお付き合いがあった“女の人”達は、
みんな良縁に恵まれて今は幸せになっているんだって。
結局、父上は最後には浮気をされて、振られているわけなんだけれど。
憎まれて別れたりはしていないせいで、
『フェザリンド伯爵の“立派な上げチ○”』は、知る人ぞ知る話なんだって。
父上の葬式には歴代のその恩恵に預かった“女の人”が、
かたまって列席をしていて、結構な評判だったんだって。
僕は、あの頃だいぶ頭がボケていて、
全然覚えていないんだけど。
ちゃんと見ておけば良かったよ、ちょっと残念。
チー兄が、ホットワインを作ってくれた。
赤ワインに蜂蜜と果物を入れて温めてくれて、
お酒を飲めるようになったばかりの僕でも美味しく飲めた。
体も頭もポカポカしてくる。
********
「レンリー。うわあ、お前それはダメだわ。
いくら何でも、それはちょっとスターク侯爵閣下が可哀想かもよ。」
ホットワインで僕は口が緩くなっちゃって、
チー兄の“誘導尋問”に引っ掛かったみたい。
この頃、オベリン様が僕に『寝酒に付き合え。』って仰る。
僕が15才になったから、この国ではお酒を飲める事になっているから。
そのオベリン様の“寝酒”は、
真ん中に出来た寝室で召し上がる事になっているみたいで。
なるほど!真ん中の寝室は《寝酒の部屋》だったんだと思った。
僕はまだお酒を飲み慣れてはいないから、
オベリン様にお付き合いをしているといつもボーっとしてしまう。
日ごとに、オベリン様のスキンシップが激しくなってきているようで。
とうとうこの前はあっちっこっちを触られているうちに、
僕だけ……こう…何て言うのかな?
その、えっと、むにゃむにゃ。って僕が言っていたら。
チー兄が、ズバッと。
『逝かせられちゃったわけだ!』
僕、赤ワインみたいに真っ赤になっちゃったよ。
『で、? お前だけ気持ちよくなっちゃって、侯爵様はどうするんだよ?
まだ、お前に本番をさせていないんだろう?』
「どうって?」どうするって?どういうこと?
で、チー兄にそりゃダメだと言われちゃったわけだけれど。
「ねーチー兄。ダメって僕はどうすればいい?わかんないよ。」
「はー。お前深窓のお姫様かよ?
嘘だろう?俺の弟、父上の息子が。」
「意地悪だけ言ってないで。教えてよ。
僕はどうしたらいいの?」
「普通は、本番無しなら“口”だろうが?」
「口?キスをするの?」
「あちゃー。ダメだなこりゃ。
だったら、レンリー。
お前せめて侯爵様のに、手を添えてお手伝いしてやれよ。」
「ん?」
「だから、侯爵様の“あれ”を手を使ってごしごしするの。」
「ええええええ!無理無理。
そんな事、絶対出来ないよ僕は。」
「はあ?出来ないってお前はさせているんだろう?
それは、勝手すぎないか?
自分ばっかり。」
「だって、僕頼んでないもん。
そんな事。」
「お前なあ。それで侯爵様にあっちこっちと手を切らせるって、
そんなバカな生殺しって、ないぞ!
よくそれだけ侯爵様に我慢をさせて済んでいるなあ?
お前、それはまずい。ちょっとまずすぎるぞ。」
チー兄に色々言われて、僕もう頭がぐるぐる。
どうしよう。今度オベリン様に『寝酒』って言われたら。
とりあえず、寝たふりをして聞こえなかった事にしようっと。
うん、それしかない。
**************
聞こえないふりをして、
寝たふりをしていたらもっと大変な事になってしまった。
寝ている“はず”の僕の寝台の上に《大魔王》が上がって来てしまっている。
オベリン様ってば、絶対に分かってやっているよね。
どうして、僕の寝巻きを脱がせちゃっているのかな?
首筋から、胸、脇の下、くすぐったくて。
僕は我慢ができなくて、笑っちゃった。
「もう、オベリン様。どうして寝かせてくれないんですか?
『寝る子は育つ!』って言うんですよ。
寝ない子は、大きくなれないでしょう?」
「悪かった、悪かった。
じゃあ、一緒に寝ようか?」
「けっこうです。
僕はひとりで寝られます。」
「良く眠れるように、お話でもしてやろう。」
強引に腕枕で寝かせてくれようとするオベリン様。
「オベリン様お話よりも、
僕、今さらなんですけれどお聞きして良いですか?」
「うん?なんだ?
答えられる事にしておいておくれ、レンリー。」
あれ、答えられない事がいっぱいあるのかな?
父上みたいに、あっちこっちにお家があったりしないよね?
オベリン様。
「オベリン様は、おいくつでいらっしゃるんですか?
僕は、何にも知らなくて。ごめんなさい。」
「年か?
私は今年、40になる。
国王陛下、フランツと同じ年だな。」
「国王陛下と?」
「年が同じということもあって、子供の時からよい遊び相手だった。
一緒に悪戯ばかりしていたな。子供の頃は。」
オベリン様は、僕の25才年上になるんだね。
こっちの平均寿命が60才とすると、
オベリン様とはたった20年しか一緒にいられない?
大変だよ!
父上のような事もあるから、心配だなあ。
「オベリン様、僕は急いで大人になりますね。
だから、オベリン様もお体を大事にして長生きをして下さいね。」
「おお。レンリーどうした?今日は?
煽ってはいけないぞ。
私の“大人”は我慢をしているのだからな!
早く“大人”になってくれるのは、ありがたいが。
どれどれ、どのくらい“大人に”近づいているか調べてみような。」
ええと、オベリン様。
そういう意味ではないんですが。
どうして、下着の中の成長具合を調べるんですか?
突っつくのもやめて下さい。
もう!もう。もーー?
目に入れて下さった方が、どう思って下さったのだろう?ドキドキ
今日の暇潰しや気分転換になってたりしたら嬉しいなあと思っております。
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