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【16才】侯爵様の伴侶 ♡♡

 

「《焼きそば》かなあ?」


 僕は、オベリン様の辺境侯爵領地で、

 商会の代表者、

 漁港市場の代表者、

 食材市場の代表者、

 食堂組合の代表者、

 その他色々な代表者に取り囲まれてしまった。


 僕レンリー·スタークは、このスターク辺境侯爵領地で“若様”と呼ばれている。

 まだ馴染まなくて、恥ずかしい。


 スターク辺境侯爵の養子として、僕はみんなに認知をして貰えるようになっている。

 とても責任重大。


 対外的には、スターク辺境侯爵の養子は“息子”として扱われているけれど。


 スターク辺境侯爵のオベリン様は、僕の事を


「レンリーは私の生涯の伴侶だ!私は、お前の“父親”のつもりはない。」


 と、仰っている。


 ******


 僕が、オベリン様のスターク辺境侯爵家の子供になる前。

 侯爵様の領地に連れて来て貰った時に見た、

 港にあがった捨てられるはずの白身魚。


 たぶん前世の“たら”に近い魚だったんじゃないかな?


 前世では、飢えて死んだ僕は、

 産まれ変わっても《もったいない根性》が出てしまって、

 つい口を出してしまった。


 その結果、魚の身はすり身にして“カマボコ”“さつま揚げ”、

 卵は“タラコ”“明太子”になって、

 今ではこの領地の名物になっている。


 僕が研究したわけでも、作り方を伝えたわけではない。


 オベリン様が、僕の言った事を面白がって料理人に伝えてくれただけの事。


 オベリン様も周りの大人も、

 よく僕のような子供の話を真面目に付き合って下さったなあ?と、

 そっちの方が不思議に思っていたぐらい。


 それなのに、オベリン様が、


『うちのレンリーは凄いだろう。

 全部レンリーが、考えたんだぞ!』


 と、みんなに言って回ってしまった。


 僕は、恥ずかしい。


 この世界を守っていらっしゃる女神様だって、呆れられているよね。


 僕の“食べ物の知識”なんて、

 新大久保のゴミ箱か、

 “母のような人”にたまに買い与えられたコンビニのおにぎりか、

 安い弁当くらいしか知っている味さえないから。


 こっちでも役に立つ知識をほとんど持ってはいない。


 僕は16才の今は、王都の学校の勉強をほとんど終了している。


 何か少しでもオベリン様の役に立ちたいと、

 今回はオベリン様の代わりにスターク辺境領地に、初めてひとりでやって来た。


 この西の辺境領地は、春の祭りの頃にはたくさんの観光客で賑わう。


 そのせいで春は、領地の領民に仕事が行き渡るし、

 観光客の落としていくお金で領地領民みんなが潤う。


 この西の領地の気候は、

 夏にもそれ程過ごしにくいほどの暑さにはならない。


 もちろん、避暑地にはならないよ。

 ちゃんと夏は夏になるから。


 でも、夏は港にあがる新鮮な魚介類で作った料理と、

 一緒に飲む冷えたエールや白ワインがそれは美味しい。らしい。


 僕は、お料理が美味しいのはよくわかるけれども、

 一緒にお酒をたくさんは飲めない。


 海沿いの食堂は、いつも領地の人達で大にぎわい。


 これを、領地の人達だけではなくて、

 夏も観光客を集める足がかりに出来ないものか?と。


 今回は試験的に、大きな“夏祭り”を開催することになったんだ。


 オベリン様の領地の人達は、

 上から命令をされて何かを始めるのではなくて、

 自分たちで頭を使って考えを巡らせる。


 もっとこの地をよくしたい、もっと豊かになりたい、

 もっとみんなで幸せになりたいと。


 僕はそういうこの領地の気風も、

 オベリン様のお人柄や考え方が、

 この領地に行き渡るっているせいだと思うんだ。


 他の領地では、こんなに自由に、

 下から上に発案が上がって来る事はほとんどないしね。


 みんながこの領地で、自分たちの力で幸せになろうと知恵を絞り、

 それに対して領主が力を添えて応援をしたり助けたり。


 さすがに、僕の自慢のオベリン様。


 領地の為にまだ何にも出来ていない僕まで、とても誇らしい。


 ********


 それで、焼きそばです。


 お試しの“夏祭り”を盛り上げる食べ物が、

 僕からもっと何か発案がないかと詰め寄られて、

 苦し紛れが口をついて出た。


 夏の“食中毒”の(つら)さは、前世で思い知っている。

 《作り置き》は怖いものね。


 その場で作って食べてもらえる物の方が心配が少ないからね。


 用意する物で研究をしなければならないのは、

 焼きそばを焼くための“鉄板”、“麺”、“ソース”。


 鉄板は、ちゃんとあった。


 魚介類を焼いて食べる鉄板は、もともと色々な種類があったんだ。


 麺は、パスタの様な麺はいくらでもあるから。

 “麺がどういう物か”からの説明は、いらなかったのだけれど。

 焼きそばの麺とはだいぶ違うから困ったな。


 前世からの知識が薄い僕には、

 “あの弾力のある黄色い麺”の作り方が、まるっきりわからない。


 茶色いドロッとしたソースの作り方も分からない。


 今ここにあるのは、キャベツと肉と鉄板だけ。


 とっても残念な《夢の記憶》持ちの僕。


 味と食感の説明を言葉を尽くしてするだけでは、

 きっと、伝わらないだろうと思っていたのに。


 スターク侯爵領民みんなが凄すぎて驚いた。


「うちの近くの井戸水を混ぜると、麺に弾力が出る。」


「うちのばあちゃんが、

 裏の畑の木の根っこを燃やした灰を混ぜて麺を打ったら、

 黄色い旨い麺が出来たって言っていたぞ。」


「茶色いドロッとしたソースだ?

 ソースには、とにかく玉ねぎを入れて塩を入れて、葡萄酒だな。」


「甘いなら、りんごも入れるか。

 魚から作った黒い調味料も入れてみようか?

 海草のだしも入れてみよう。」


 あっという間に、焼きそばの麺とソースが出来上がった。

 びっくりしている暇もないぐらい。


 魚から作る“醤油”があるんだね。

 昆布も鰹節も、考えてみたら海のものだもの。


 海のある西の辺境侯爵領地は最高です。


 前世の味と全く同じではないけれど、

 僕の舌が知っている味が、たいして立派な味というのではないから。


 ここの人達の舌と腕に任せておけば、どんどん美味しくなりそうです。


 本番の“夏祭り”では、

 定番の《ソース焼きそば》と、

 海の幸がいっぱいの《海鮮塩焼きそば》のテントが用意されて。


 大行列ができての大にぎわい。


『新しい名物誕生だ!』


『若様、万歳。』

 

 大袈裟に盛り上がって、 

 僕はなんだかお尻が落ち着かない。


 僕の力では、全然ないからね。


 “夏祭り”には、オベリン様が王都から駆けつけて下さった。

 オベリン様は、焼きそばをもりもり召し上がって大喜びして下さった。


 “夏祭り”はなかなかの盛況ぶり。


 来年も恒例にしたいけれど。

 

 近隣の観光客だけではなく、もう少し遠方から客を集めるのには?

 何かが足りない。


「何かありませんか?若様。」


「踊り?」


 僕の浅ーい前世の知識の(つぶや)きを、

 いつも立派に仕上げてくれるスターク領地領民の皆さん。


 皆さんの目が“キラーン”と光っていたから。


 きっと、それなのに盛り上がる何かが追加されるのかもしれないね。


 僕が知っているのは盆踊り?


 弟のゆうとの手をひいて、新大久保から歩いて行ける代々木の大きな公園で、

 (にぎ)やかにサンバを踊っているのを見た事があったけれど。


 こちらでは、僕の浅い知識を出すよりも、

 みんなに任せておけば大丈夫な気がします。


 ******************


 今回、僕がひとりでスターク辺境侯爵領地に来た目的は、

 “夏祭り”の見学と、

 もうひとつ大事な確認したい事があったんだ。


 スターク辺境侯爵領地の《“子供たち”の家》が、

 円滑に回り出しているかを確認したかったんだ。


 ******


 王都のオベリン様の屋敷の門には、ちょくちょく籠が置かれているんだよ。


 籠の中には“赤ちゃん”入りで。


 凄いのになると、


『オベリン·スターク侯爵様に似ている子供が産まれました。

 お届けいたします。』


 意味深な手紙つきでね。


 僕がオベリン様に目を向けると、おたおたなさって。


『身に覚えはない。本当に本当だ。』


 と、仰って。


 でも確かに、赤ちゃんの髪の毛の色がオベリン様に似ているかも?


『レンリー、私は子供を捨てるような女とは付き合わん。

 産まれたのなら、ちゃんと知らせて来るはずだ!』


 ほお、知らせて来るはずなんだね?


 周りに話を聞いてみると、

 オベリン様の屋敷の前に“赤ちゃん籠”が置かれる事は、

 今までも珍しい事ではないそうで。


 オベリン様の屋敷の前に置いておけば、

 きっと悪いようにはしないと思われているようで。


 オベリン様って信用があるんだろうか?ないんだろうか?


 今回の様な悪質な置き手紙は珍しいけれど。

 オベリン様なら何とかしてくれるって思われて?


 ダメだよそれ!


 たまたま赤ちゃん籠は無事だったけれど、

 野犬が出たり真冬だったりしたら。


 赤ちゃんがどうなっていたか分からなかったよ。


 こういう時の、ノウハウは“教会”が詳しそうだよね。


 中央教会のセレーノ様に、お知恵を拝借に伺ってみた。


 《孤児院》と言えば、教会?


 セレーノ様は、孤児院のスペシャリスト?ではないのだろうけれど。


 セレーノ様は、僕に教会の後輩の方を“お助け”部隊に、

 3人もの司教補佐様を紹介して下さった。


 僕はいつも、たくさんの人達に手を貸していただいて恵まれている。


 3人の力を借りて、西の辺境侯爵の裕福な財力に助けられて。

 国一番の《孤児院》が、スターク辺境侯爵領に出来上がった。


 そこに行き着くまでは、オベリン様とひと悶着がありました。


 ******


 オベリン様と“同じ髪の色の籠入り赤ちゃん”と遭遇して以来、

 オベリン様が急にあっちこっちにお出かけをしていた。

 落ち着かない様子で。


 確認したかった事があったんだろうね、色々。


 オベリン様、仰いましたよね。

 僕が16才になって《真ん中の寝室》の使い方を理解させていただいた夜に。


「レンリーさえ居てくれたら私はもう誰にも目移りはしない。

 私は、生涯レンリーだけを愛する!

 レンリーも、私だけを愛してくれるな?」


 ずいぶん、お話が違うようですが。



「違う!違う!

 私は、生涯レンリーが一番だ。

 それだけは、女神に命をかけて誓う!

 本当に本当だ。


 レンリー~。そんな目をして見ないでおくれ。

 お願いだからね。」



「ほお、オベリン様。

 僕を“一番に”して下さってありがとうございます。

 ひとつお伺いしたいのですが?」


「うう?」


「二番から下は、何番までいらっしゃるのでしょうか?

 百番ですか?千番ですか?」


「女性の方も多くいらっしゃるのなら、

 僕を養子になさる必要などありませんでしょう?


 そのうちオベリン様に“そっくり”なお子様がわらわらと現れるでしょうから。

 そちらにお任せすれば、僕はここにいる必要はありませんよね?


 ああ、オベリン様。

 安心して下さってけっこうです。


 僕に父上が遺してくれた“隣街”の家は、

 定期的に住みやすく手を入れてありますから。


 いつでも、ここを出て暮らしていけますので。

 御心配なく。」



「レンリー、そんな意地悪は言わないでおくれよー。

 私は、女には手をつけた事はほとんどない。

 数えるほどだし。


 この5年ほどは、一度も女“は”抱いてはいない。


 だから、絶対にあんな小さな赤ん坊が、

 私の子供として誕生をする訳がないんだよ。


 女神にかけて。」



 そんなに簡単に《女神様》を連発してはダメでしょう?オベリン様。

 女神様が怒っちゃいますよ。



「オベリン様、“語るに落ちて”いらっしゃいますよ?」



「ううう。レンリー。

『語るに落ちて?』

 王都の学校を優秀な成績で早期で卒業が出来ただけあって。

 レンリーは、難しい“言葉”を知っていて……。

 さすが、私のレンリー!偉いなあ。」


 オベリン様、冷や汗ダラダラで僕を誉めてもダメですよ?


「オベリン様、僕をいくつだと思っていらっしゃるんですか?

 いつまでも、簡単に誤魔化せる子供だと思わないで下さいね。」



「レンリーは、笑いながら怒るとは凄い技だなあ。

 さすが、私の最愛のレンリー。

 怒った顔も美しくて、神々しいぞ。

 女神様もびっくりだ。」



 おいおい、オベリン様。

 あんまりお手軽に“女神様”を連発すると、

 本当に“女神様”の天罰が下っちゃいますよ。



「オベリン様。

 よーく分かりました。」



「ほうほう。さすがレンリー。

 分かって貰えてありがたい」



「レンリー、ところで何か欲しいものはないのかな?

 よけいな心配をかけてしまったお詫びに、何でも用意をするぞ?

 父上の隣街の家よりも立派な別荘なんかどうだろう?

 ん?」



「オベリン様、

 立派な別荘は僕ではなくて、

 5年ほどの間も仲良くしていた『女の人ではない方達』に、

 御用意して差し上げてはいかがですか?」


「レンリーーー。そんな意地悪は言わないでおくれよーー。」



「じゃあ、オベリン様。

 “何でも”御用意して下さるのですね?

 本当ですね!」


 と、《孤児院》を作ってもらう事にしたんだ。


 色々考えて、西の辺境侯爵領地に作る事にしたんだ。


 王都では国王陛下の先回りのようになってしまうと、

 陛下の面子(めんつ)を傷つけてしまうし。


 かといって、国王陛下を巻き込むために順番通りの手順を踏むと、

 時間もかかるし大掛かりになりすぎてしまうからね。


 この世界では、子供が産まれた後に親の事情で育てられなくなっても、

 そんなに酷い事にはならない。


 誰かが、助けてくれて子供が路頭に迷うことは殆ど無いから。


 さすが!女神様の庇護が行き渡った世界。


 スターク侯爵様の屋敷の前に置かれた“籠入り赤ちゃん”は、

 今までも、子供のいない夫婦が引き取り先になってくれていたんだって。


 でも、どうしても育てられない事情が出来た時に、

 置き去りはやっぱり危ないからね。


 それに赤ちゃんは親の名前が言えないから、

 置き去りに“してもらえる”けれど。


 もう少し大きくなって“いらない子供”になった場合が、少し怖いね。


 子供に親の名前を話させないように捨てる場合、

 子供の命に危険を伴いそうだから。


 *******


 王都のスターク辺境侯爵屋敷の門の前に、

 僕は大きな看板を立てたんだ。



[ここに赤ちゃんを捨てないで下さい]


 やむを得ない事情がある場合は中央教会にお尋ね下さい。


 《スターク辺境侯爵領地の孤児院》でお子様はお預り致します。


 尚、本当にオベリン·スターク侯爵に(ゆかり)のあるお子様につきましては、

 ご相談に応じますので、名乗り出て下さい。


(嘘をついたら針を千本飲ませますよ!)


 オベリン·スターク

 レンリー·スターク



 ********



「なあ。頼むよー。レンリーーー。

 お願いだから、門の前の看板を外しておくれよーー。


 国王陛下が腹を抱えて笑って大喜びしているし。


 “魔王”の次は“子育て大魔王”か?と

 王宮中で、噂が噂を呼んで凄い事になっているんだぞ。


 勘弁しておくれよ。レンリーーー。」




「オベリン様。


 看板は、もっと作ってあるんです。


 王都で子供が捨てられそうな所に、

 あっちこっちに立てておいた方が、

 赤ちゃんにも危険がないと思って。


 もっと、色々な場所に立てた方が良いですよね?


 せっかく立派な《孤児院》をオベリン様に作っていただいたのですから。

 ちゃんとみんなに知ってもらわないと。


 看板は、どこに増やしたら良いと思われますか?

 オベリン様。」


「い、いやいい。

 レンリー。うちの門だけで充分だ。

 うん。いいいい。

 うちの門で良い。」


 教会に相談に現れた数人の若いお母さんが、

 3才位の子供を預けながら、ちゃんと名前と素性を名乗って去ったそうだ。


 旦那さんが亡くなって、親も寝付いてしまったりとか。

 自分も病気になってしまったりと。


 二重三重の不運が重なってしまって、

 子供を育てる事ができなくなってしまったのだと。


『生活のめどがついたら、必ず迎えに行くから。』


 と、子供を抱き締めて別れを惜しむ様子に嘘はないようで、

 子供も信じて待つ事が出来るはず。


 西の辺境侯爵領地は、明るい土地柄で優しい大人がいっぱい。


 きっと、寂しい気持ちをまぎらわせて楽しく生活が出来るよ。



 ************



 チー兄に聞かれたんだ。


「レンリー、お前その赤ん坊が、

 本当にスターク侯爵閣下の子供だったらどうしたんだ?」


「うーん。お母さんに捨てられちゃったんなら、

 しょうがないから僕が育てる?のかなあ?」



「はあ。お前ならやりそう。

 母上の息子だもんなあ。


 まだまだ、出てくるかも知れないぞ?

 いいのか?お前。」



「その時はその時。

 しょうがないよ。オベリン様だからね。」


「お前、本当に母上に似てきたなあ。」





 ***************[《夢の記憶》持ちお茶会]



 久しぶりの《夢の記憶》持ちのお茶会。


 セレーノ様と、ミルカ姉上、そして僕レンリーの3人お茶会は、

 中央教会の庭のガゼボで。


 最近、中央教会に子供の小さな学校ができた。


 この国の教育は、貴族と庶民ではだいぶ違いがある。


 貴族と裕福な階層の庶民は、たいていどの家も家庭教師をつける。

 その後に、王都の学校に通う事が多い。


 庶民は家族に識者がいる場合は、読み書き計算を、

 家や親族の子供に教えたりする事が多いけれど。


 ほとんどは、仕事についてから職場で見習いの間に必要な事を学ぶ。


 商人は読み書き計算に強くなるし、

 物を作る職人も数字にはとても強くなるし。


 学校に行かなくても、仕事に直結した能力が自然に身に付く事が多い。


 けれども、職業によってはどうしても取り落としが出てきてしまう。


 なかには読み書きや計算があまりできない人達がでてきてしまう。


 寺子屋のような子供用の学校もあるにはあるのだけれど、

 通うには無料ではないので誰でもというわけにはいかない。


 無料で読み書き計算が最低限でも出来るようになればと、

 セレーノ主座司教様の発案で中央教会に子供用の小さな学校が作られた。


 さすが!セレーノ様です。


 まだまだ、広く認知をされてはいないセレーノ様の小さな学校に、

 いち早く通い出したのはアルフレド兄上のところのユーニスなんだ。

 ほとんど、第一号の生徒だよ。


 今日は、ユーニスが教会の一室で勉強をしている間に、

 ちょうどいいからと僕にもお声がかかって、

 3人のお茶会を開催中です。


 ミルカ姉上のお膝の上には、

 ユーニスの妹のマリベルが良い子で座っている。


 マリベルは、可愛いくて、もうとにかく可愛い。

 僕は、めろめろの叔父さんになっちゃっています。


 マリベルみたいな可愛い子供なら、

 オベリン様の子供でも僕は喜んで育てちゃうかも。


 僕がマリベルをニコニコと見ていたら、セレーノ様が仰った。


「レンリー、君はとても美しく成長をしたね。」


 セレーノ様が、変な意味で仰るはずもないし。

 どうなさったのかな?


 向こうの日本では、僕は肌はがさがさ赤く湿疹や出来物ができていて、

 目が落ち窪んで、いつもどこかが痛かった。


 “美しい”なんていう言葉とは一番遠くで生きていたのに。



「神様の御使いのような美しさをお持ちのセレーノ様に、

 そんな風に仰っていただくと。

 なんだかどうして良いのか、

 僕は身の置き所がなくなってしまいます。」



「あら、本当よ。レンリー。

 あなたとても綺麗になって魅力的よ。

 エドミュアとは違った、清潔なお色気?

 背も高くなって、とても目をひく美しさよ。」



「姉上こそ、マリベルが産まれた後はより一層美しくなられて。

 兄上も“美人の奥様”がとてもご自慢なようですよ。」



「まあ?」



 3人で、目をあわせて爆笑をしてしまった。



「どうして、僕たちは王宮のサロンのような、

 “誉めあいっこ”をしているんだろうね。ここで。

 あははは。可笑しいね。」



「うふふふ。ほんとほんと。

 似合わないわね。私たちに。」



「お茶会のお仲間が、お幸せそうで嬉しい限りです。

 レンリー、ミルカさん。」



「僕も、セレーノ様がお元気なご様子で嬉しいです。」



「ありがとうレンリー。

 ねえレンリー。ミルカさん。


 あなた達は、以前と様子が変わって来ているのです。

 私のいつもの“目”で見えるところですが。」



「どんな風にですの?セレーノ主座司教様。」



「ええ、ミルカさん。

 あなたとレンリーは、

 以前のように輪郭がぶれてはいないのですよ。


 二重には見えるのですが。

 それは内側にもう1つの輪郭が重なって、

 輪郭をさらに太くしているように見えるのです。


 ぼんやりした様子がなくなっていると申したらよいのでしょうか?

 私も、自分で何を申しているのかと思うのですが。」



「セレーノ様。

 それは僕たちがこちらで過ごした時間が向こうよりも長くなって、

 こちらに安住する場所ができたせいでしょうか?」



「さあ、私にもなんとも。

 ですが、それが悪い様子はいたしません。


 それどころか、とても強い何かを感じております。」



「何か、嬉しい気持ちがいたしますわ。

 セレーノ主座司教様。

 ありがとうございます。」



「セレーノ様は、ご自分でご自身の輪郭を見ることはないのですか。」



「ええ、残念ながら。

 ですが私は、まだあなた達の様にはなってはいないように思います。」



「どうしてですか?


 僕たちよりも、セレーノ様の方がこちらで長くお過ごしになって、

 こちらの方達を、ずっと助けられて幸せに導いていらっしゃる事を、

 女神様が一番近くでご覧になっていらっしゃいますのに?」



「私は、……まだ、夢を見るのですよ。

 あちらにいた時の。


 時にはびっくりして、飛び起きる事もまだあるのです。

 この頃は、だいぶ少なくなりました。


 いつか、向こうの“悪夢”に追いかけられる事が無くなった時は、

 私もこちらで許された事になるのかも知れないと思っているのです。」



「おやおや、レンリー、ミルカさん。

 そんな、お顔をなさらないで下さい。


 私が、こちらで幸せではないと言ってはいないのです。


 私は、バルケス大司教様の元で神様に仕える事ができて、

 日々幸せを感じております。


 こうして、

 思いがけなく《夢の記憶》のある友人とお茶を飲む幸せまで、

 女神様にいただいております。


 私も、間違いなくこちらで“幸せな人生”を送らせてもらっておりますよ。」



 教会の庭の柔らかな日差しの中の、

 幸せなお茶会に、

 日々の色々な気持ちが浄化されて行くような時間だった。


 僕は今、怖いくらいに幸せです。


『女神様ありがとうございます。』




 ***************




「レンリー、あの美貌のセレーノ主座司教様と何のお話をしているんだい?

 なあ、内緒にしないで私にも教えておくれ。


 レンリーは、何か私に“秘密”があるんではないか?

 時々、不思議な事を言うし。

 まあ神秘的で、それもレンリーの魅力だけれどな。」



 僕は《夢の記憶》の話を、オベリン様にはしてはいない。


 内緒にするつもりでも無いのだけれど、

 オベリン様も僕に言えない“内緒”の事がありそうだからね。


 何となく悔しいからね。



「レンリー、兄達や兄嫁には話をしても、

 どうして私には“内緒の話”を教えてはくれないんだい?ん」



「オベリン様、

 僕は別にオベリン様には“隠し事”なんかしていませんよ?

 オベリン様こそ、

 たくさん僕に“内緒のお話”があるんではないのですか?」



「んん?」



「ねえオベリン様。


 オベリン様の内緒の秘密基地と、

 その基地に配置されている方達を残らず教えて下さったら。

 僕もお茶会の話をしますよ?」



「えええと。レンリーは、想像力が豊かだなあ。

 そんな、秘密の場所なんて私にあるはずはないだろう。

 ははは。」



 オベリン様、目が泳いでいますよ。

 僕は“秘密の基地”って言ったんですよ。


 “秘密の場所”って、

 何だかまた少ーし怪しい場所の気配がしますよ。



 僕は、オベリン様に近づいて、

 胸の辺りをクンクンと臭いを嗅ぐ仕草をしてみた。



「な、なんだい?レンリー。

 私が、何か?汗の臭いでもするのかな。」



「いいえ。オベリン様。

 オベリン様は、亡くなった僕の“父上”と同じ虫を飼っている臭いがしますよ。」


「虫を?」


「そう。どうしても大人しくはならない“虫”の臭いがしますよ。」


「へえええ。レンリーは、本当にはははは。」


 父上の匂いを嗅ぐほど側に近づいた事も、

 僕の子供の時に抱いてもらった事もないけれど。


 きっとオベリン様と同じ、

 “浮気の虫”の臭いがしていたんだろうと思うよ父上も。




 ******************

 ******************




「レンリー。どうしてレンリーは。

 こんなに可愛い。


 どこもかしこも美しい。


 ここも、ここも。


 全部綺麗だ。」



 オベリン様の寝室と、僕の寝室の間に出来ていた“真ん中の寝室”。


 やけに、立派で大きな寝台の使い方をだいぶ熟知させられてきた。


 オベリン様って、とにかく長い。

 僕は、オベリン様以外を知らないから他と比べようもないけれど。


 オベリン様とは違って。


 恥ずかしいのを我慢して、チー兄に教えてもらったら。


 オベリン様は、お年の割にはとてもお元気とはいえ、

 わりとその~……普通?だそうです。

 挿入時間とかは、普通みたいな。

 長くもなく、短くもなく。


 その……回数的?にも普通。一晩2回戦から3回戦のような?


 ただ、(あいだ)が長い。

 終わっても全然僕を離してくれない。


 その間中、僕だけ……ええと、持っていかれっぱなし。


 食事のお酒みたいだけれど、

 アペリチフ(食前酒)とディジェスチフ(食後酒)が長くて、

 うーんちょっと…しつこい?


 えっと、お酒ではないです。

 メインディッシュは僕なので。


 僕が16才になる前から、少しずつ大人の練習をと。


 結局“本番挿入”以外は、

 オベリン様に全部の練習をさせられてしまっていた。


 オベリン様ご自身以外は、指やら何やら色々と挿入練習をされてしまった。


 一時は、僕は頭も体もどうかしてしまったみたいになっちゃっていた。


 いつも、オベリン様の体温が自分の体に残っているようで、

 泣きたいような切ないような。


 暑くて、熱くて。


 僕が16才になった途端に、オベリン様は猛獣のようになってしまって。


 僕はしばらく、昼間は寝て過ごして体力の回復に努めて。

 夜は猛獣の相手で。


 こんな事をしていたら、人間としてダメになりそうと思っていたら、

 やっと猛獣も落ち着いてきてくれた。


 それからは僕も夜間活動の後はスッキリで。


 昼の生活に、体も気持ちも持ち越さないで、

 健全な青少年の生活?のように……過ごしているつもりです。


 オベリン様には、

 僕は寝台の上で相当色々な姿勢をとらされてしまっている。


 慣れるまで毎晩びっくりしていたんだけれど。


 頼りのチー兄に聞いてみたら、


「ああ、お前には変わった遊びは仕掛けられないんだ。

 スターク侯爵。


 お前は大事にされているわけだ。

 お姫様扱いをされてるんだよお前。


 危ない遊びは、きっと外で調達しているんだろうよ。」



 ええ?あんなに、あっち向いたり、こっち向かせられたり、

 裏返しにされたり色んな事をされちゃってるのに。


 まだこれで、《お姫様》?


 嘘だあー?




 *******




 僕がひとりでスターク辺境侯爵領地に行っていた後に帰って来たら、

 オベリン様は、また凄いしつこさです。


 オベリン様は、普通にその……僕の中で僕と一緒に仲良く。


 だけれど、合間合間に僕だけオベリン様に……もにょもにょ…

 されっちゃって、

 僕は回数的に多くなってしまって。


 もう、頭がぐちゃぐちゃで。


 自分の口が何を言っていのるもかわからない。



「レンリー、このままお前を抱きながら。

 私は、死んでもかまわないな。


 お前以外は、いらない。」



「う…そつ…き。

 でも、……。いい。よ。


 僕も。一緒に……死ん……でも。

 オ…ベリンさ ま。


 この…まま。死…ぬ?2人……で。」



 僕の中で、オベリン様が元気になっちゃった。

 死ななさそうだね?



「死ぬような、良い思いを。

 一緒にいこう。

 レンリー、愛している。」



「うん。ぼ くも。

 大好……き。

 オベリンさーーま。うう。」



 女神様。ありがとうございます。


 僕の寿命、オベリン様よりも長いのは耐えられません。


 どうか、本当に一緒にいかせて下さい。


 僕の今の一番の望みはそれだけです。



誤字脱字報告、ありがとうございます。(*^_^*)

とても嬉しかったです。

恥ずかしいほどあるものですね。

( >Д<;)

目に入れて下さった方が、どう思って下さったのだろう?ドキドキ

今日の暇潰しや気分転換になってたりしたら嬉しいなあと思っております。


少しでも気になりましたら、ブックマーク、評価をお願いいたします。

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