二十九章
「なあ・・・・・・ローズ。急に俺の具合が悪くなった原因って何なんだっ?」
少し気がたっている黒髪の青年が、優雅にお茶を飲む、桃色の髪の上品な雰囲気のある女性に聞いていた。
「私も今は霞んで向こうの世界が見えていないのよ。兄様に聞けば?」
「彼奴の持ち主は、今は彼女と離れているから意味ねーよ!」
「《闇魔術》関連じゃないかしら。それとも・・・あの子が行っちゃってるからかもしれないわね」
「あの子って・・・・・・まさか、あの『変態猫』か?!」
青年は、眉をひそめた。
「『変態猫』は、同族に失礼でしょ。どうしても行ってみたいって言うものだから、送ってあげたのよ」
「・・・っ、帰る!!」
青年は、女性に背を向け、その場から立ち去ろうとした。
「まだ原因が分かってないのにいいの?」
「そんな場合じゃないから、後で調べておいてくれ。ウェンディの貞操が・・・危ないっ・・・・・・」
「そんな警戒しなくてもいいじゃない。彼は・・・・・・」
もう姿を消した青年に向かって聞こえてはいないと分かっていたが、話していた。
「親友だったんだから、少しぐらい信用してあげなさいよ」
彼女の飲んでいたお茶には、波紋の中に庭園の歩く一人の少女がうっすら映っていた。
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外の空気を吸いに行く、とエレナに伝え、リチャード達三人から離れた。
「はあ・・・・・・」
ウェンディは庭園にあった木の下のベンチに、周りに誰もいないとわかると、ストンと崩れ落ちるように座っていた。
「・・・まったく。王子があんなだとは思ってもみなかった・・・・・・」
一人で空を眺めながらぼやいていた。
「第一、『体重』とかレディに向かっていう言葉じゃないわよ。あの場は普通、手を引っ張ってあげるとこだと思うんだけど」
『そりゃあ、大変だったねぇ〜、嬢ちゃん』
「そうなんですよ・・・・・・って、誰?!」
一人言に返された間延びした男の声に驚き、辺りを見渡したが、誰もいない。
『あぁ、ゴメンね〜。姿を見せてなかったね・・・っと!』
その男は、ザサッという枝葉の音をさせ、ウェンディの目の前に突然しなやかに降り立った。
まるで猫のような機敏でしなやかな動きをする男だった。しかし、それが分かるだけで、辺りを唯一照らす月明かりが、雲で隠れて顔まで見えなかった。
「・・・・・・だから、誰?」
「あーあ。そんな色気なく目を細めたりしないで〜。オレを見たいのは分かるけど、かわいい嬢ちゃんの顔に似合わないからさ」
見ず知らずの男が、さらりと言う科白にたじろいでいた。
その隙に、ウェンディの右隣に近距離に座ってきた。そして、ウェンディの腰に腕を回した。
「ほーら。これで目を細めなくても、オレの顔が見えるでしょ?」
そう言って近づけた顔を見ると、ちょうど顔を出した月明かりで、照らされた男は、夜会服は来ていなかったので、パーティーの招待客ではないことは分かった。
甘く整った顔立ちは、愛嬌のある二十歳ぐらいか二十代前半くらいの青年だった。
シナモンのような薄茶の髪は、男性にしては長い方だろう肩に少しつくぐらい長さで、ウェンディと似ている空のような青い瞳をしていた。
ニコリと笑うと、チラリと覗く尖った歯や、その瞳の虹彩がくっきり見えてしまうほどの近距離に顔があることに、やっと気づき、腰に回った手を振りほどこうとした。
ふと、昔、城で若い侍女から聞いていた言葉を思い出したからだ。
『見ず知らずの男に急に迫られたら、逃げてくださいね?ダンスでもない限り近づいてくる輩は・・・・・・純情な乙女にとって、そんな狼はとても危険です』
(危険なのは・・・今なら分かる気がする・・・!)
離そうとしない男の手をやや焦りながら、振りほどこうと頑張っていた。
「ち、近いんですけど・・・・!」
「わ〜。そんなに慌てちゃう嬢ちゃんもかわいいな〜。食・べ・ちゃ・い・た・い・な〜?」
「ひいいいぃぃぃ・・・・・・っ!」
楽しげに頬を擦り寄せようとする男を無理やり離そうとすると、急に体が離れた。自分の力で離したのかと思い、うっすら閉じていた瞼を開けると、ベンチから立ち上がっている男は、星を見つめていた。
「・・・・・・ちっ。奴が帰ってきたみたいだな―――――そんじゃ嬢ちゃん、またいつかね?」
ひらひらと手を振る男は、暗闇に姿を消そうとしていた。
「・・・あ!貴方の名前は何なのよ!」
「あれ。気になっちゃった?照れちゃうな〜」
「そっちの意味じゃないから!後で復讐するための資料よ!!」
「そりゃ〜楽しみだな。また会う約束してくれるなんて♪」
「だから、ちがっ・・・・・・!」
「オレの名前は、スコッチ・・・とでも言っておこうかな〜?じゃあね、オレの『ウェンディ』」
「何で私の名前を知って・・・・・・・え?」
すっと寄ってきた男―――スコッチの顔がウェンディの顔の横に来ていた。そして、結い上げていて髪がない、首筋に温かい『何か』が触れた。
「ひゃっ!」
熱くなってきた首元を押さえて立ち上がったが、もう目の前から消えた男にきょとんとしていた。
アラン:あぁ、ウェンディよ。なんで君はウェンディなんだぁ☆
・・・だいぶ痛いことになってる馬鹿兄は、ほっときましょ。
アラン:って、作者。ウェンディは、どうしているのかい?
あ、やるんですか。どうって・・・えーっと。妹馬鹿には伝えないほうが良いかな・・・うん。伝えないほうが良いな。
アラン:一人で納得しないっ!いいさ。この作者に聞かないで、ウェンディに聞いてくるから!
え・・・っと、聞かないほうが身のためだと・・・。それに次回は、本編しないし。
アラン:・・・ふむふむ・・・なるほど・・・(読んじゃってる)。こ、この良く分からん男め!切り捨ててやるっ!!
もしもーし。目が血走ってますよー。
では、次回もお楽しみに。感想・ご指摘お待ちしてます。




