幕が下りたその裏で②
「……一つ、聞いて良いか」
白峰さんたちがいなくなった視聴覚室。紬に問い掛けた。
「どうして新曲をやろうと思ったんだ」
「伝えたかったから。みんなに、遥人にいまの私を伝えたかったから」
「そっか」
「私からも一つ聞いて良い?」
「どうぞ」
「ライブが出来てすごく嬉しかった。でもなんで急にあんなライブが出来たんだろうって」
正直に話すべきだろうか。
本当のことを知っている。紬が向ける視線はそう言っているように見えた。俺が榊さんにお願いしたと言えば「やっぱりね」と笑う姿が想像できる。
「なにも知らないはずの遥人が音響ブースにいるんだもん。びっくりしたよ」
「榊さんが特等席をどうぞって入れてくれたんだ」
「そうなんだ。なら良いけど」
嘘は言っていない。榊さんがブースの中に入れてくれたのは事実だ。なのになにか隠していると言わんばかりに不満げな顔をする紬。この様子だとやっぱり俺が仕掛け人だと勘付いていたのか。
(悪いが黙秘権を使わせてもらうからな)
たとえ紬が本当のことを知っていたとしても、それについて面と向かって問われても俺は否定するつもりだ。なにせ今日のライブは幻なのだ。俺が関与していたとわかれば幻ではなくなる。
「一緒に帰るか?」
唐突にそんなことを言うと紬は目を丸くする。俺がこんなことを言うと思っていなかっただろうし、俺自身もどうしたと聞かれれば答えに迷う。一つ言えるとしたら―Re:Call―への俺なりの答えなのかもしれない。
「嫌なら別に良いんだぞ」
「そ、そんなことない! 帰ろっ」
首を激しく横に振る紬は笑顔で俺の手を引く。別に手を繋ぐとは言っていないが、まぁ今回だけは付き合ってやるか。
「ねぇ、遥人?」
「ん?」
「今日はありがとね」
「なんのことだ」
「わかってるくせに」
紬は楽しそうに笑う。それに釣られるように俺も口許が緩む。
隣で満足げな表情を見せる幼馴染とはこれから先、長い付き合いになりそうだ。




