238話 制作許可を貰えたよ
いきなり来ちゃった王様。
「またかー」と「やっぱり来ちゃうよね」の半々な気持ち。
いわゆる内緒話なので、離れの応接室でお話だ。
王様のご希望で教授たちには席を外して貰って、王様、リックさまと私、ニーナっていう顔触れ。
ニーナも外した方がって思ったんだけど殿方だけのお部屋には誰が相手でも私を一人で置いて行けませんって事で。
侍女は主人のあらゆる事柄に守秘義務を守りますからって言われちゃうと王様も折れちゃった。
「マーベルハント家の教育を受けている侍女なら問題はなかろう」だって。
マーベルハント家に対して厚い信頼だなぁ。
「それでリーシャ嬢よ、転移陣だったか?」
豪速球だなぁ。それだけ今回の嫁入りは心配ってことかしら。
「ちゃんとした転移陣はご存じのとおり大きな魔法陣が必要ですが、一度だけ、座標を固定すれば装身具に付与する事が出来ると思ったので国王陛下に献上する誉を頂きたく存じます」
一応丁寧に言ったつもりなんだけど大丈夫かな。
渡したい理由は察してくれるはずだし。
「王女ではなく私にか?」
「私はファティマ王女殿下と直接のお付き合いは御座いませんし、武に長けたグレーデン辺境伯家の当主夫人である私が禁術に近いものを殿下に差し上げたならば、あちらの方にあらぬ誤解をされかねません」
かなり巧妙な隠し細工をしないといけない。
「持たせたと報告せず、悟られずに装着できると言うことか?」
「そうですね、信頼がおける相手だと判断されているならばお伝えするのも良いかと思うのですが取り上げられたりしたら意味がないので」
王様は少し考え込むような仕草をする。
「リーシャさま、それは絶対にバレないという確信が持てるのですか?」
リックさまが率直に尋ねてくる。魔道具にはどうしても魔力の流れが出るから魔道具師や魔導師にはわかってしまうと懸念してる。
「こちらはお祖母さまの作った回復の魔道具です。故障していないものです」
一応使い方をお見せするために魔道具である腕輪に私の魔力登録をしておく。
「現在停止中というか必要のない状態なので作動していません」
リックさまと王様が食い入るように魔道具を見つめてる。
「なんの魔力も魔素も感知しませんね」
私は魔道具を作動させるために素材を削る用の小刀で指先を軽く切る。
ふわっと腕輪から魔力が動いて周りの魔素を集めてすぐさま傷口が修復された。
「「!????」」
「指定された条件に当てはまった時だけ魔力が動く様に付与された効果は緊急時しかわからないと思います」
今回作るものは敵に急襲された瞬間に対象者が転移すると指定を入れるのでバレるつもりはないもの。
相手が大伯父レベルだったらアウトだと思うけど、そうそういないはず。
「そんな物が作れると……?いやセラーナ夫人はすでに作っていたわけですよね……」
リックさまは王国最高の魔導師だけど、申し訳ないけどお祖母さまに比べたらかなり程遠いと思う。お祖母さまのレベルは高すぎて。
お祖母さまの残した魔道具や魔導書はかなりとんでもない代物だし。
お母さまはいうとお祖母さまはにはやっぱり全然及ばなかったと思う。
多分だけど、ネイマーシェ国に比べてレイドラアース国の魔道具はこの星の歴史の二周分くらい遅れている。
ネイマーシェ国の文献を見ているとネイマーシェは地球で言うアトランティスくらい謎に満ちた国だ。
もしくはローマ帝国とか絶対的強者な特別な存在。
「魔術展開と魔術式はそんなに難しくはないです。お祖母様は緻密で美しい魔法陣を描けてましたがさすがに私にはここまで出来ませんし」
なので魔力ゴリ押しと、王様の娘への愛が重要なの。
「制作許可は頂けるのでしょうか?」
正直、法のギリギリ。もしくはアウト?でもやっぱり王女殿下に逃げ道はあって欲しいもん。
王様もリックさまも極力善良でありたい人だと思う。自分を律し、自らの持つ権力を傲慢に横暴に振るわないために正しくあろうとしてるはず。
だから共犯に巻き込むにはいけないかもしれない。
この結婚が素晴らしいものでただの空回りならいい。
でも王族として、戦場に行くかのような決断をした王女殿下に何かしらお守りがあって欲しい。傲慢かもだけど。
長い沈黙の後、王様はただ一言。
「頼む」
って言った。父としての決断。
「リック、リーシャ嬢の補佐を」
リックさまはお祖母さまの魔道具に魅せられててるようで、その片鱗が見られる機会を得られることがちょっと恍惚としてるっぽい。微妙に怖い!
「今使われている王都の結界はセラーナ夫人の魔道具が基礎なんですよ」
お祖母さまはネイマーシェの技術を惜しみなく使ってたみたいだけど、対個人にはあまり使ってなかったっぽい?
隠し部屋には個人で使う魔道具、試作品や完成品が山ほどあったんだけどな。
今度お祖父さまにお祖母さまの人物像を聞いてみたい。
王様は明日までグレーデン残るって言うのでリックさまと早速作業部屋に篭ることにした。




