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エルフの旦那と魔法剣士の嫁  作者: さつき けい


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猟師と剣士 1

本日は二本更新予定です。


 猟師達三人、そして山犬の獣人と一緒に、ギードはタミリアとエンを連れ、村の中心部に向かう。


タミリアの後ろを歩いている猟師の獣人が、こそこそと話し合っているのが分かる。


まあ、女性の後ろでやる話の内容なぞ、ギードには聞こえなくても分かるが。


 村の柵の中に入ると、何事かと村人達が寄って来る。


虎の獣人がうるさそうにその人々をかきわけ、一行は村長の家に向かう。


ハシクと共に長老である村長が家から出て来た。


「どうされた」


「自分は森の調査に出ていたのでよく知りません。ハシクさん、説明お願いします」


ギードから名指しされたハシクが、祖父である老狼獣人に話始める。


「あ、あの、俺とフュヤンでエルフの旦那のところで、あの鍛えてもらおうと思ってー」


フュヤンというのは熊の獣人の若者の名前らしい。


「ああ、だからそんな奴らに教えてもらわんでも、俺達がいるだろうってこった」


ハシクの言葉に、虎の獣人が言葉をかぶせてしまう。見た目通りせっかちな男のようだ。






 今日の午後、ハシク達が村から丘へ来たところで、後ろから付いて来ていた猟師達に気がついた。


「おじさん、何か用?」


子供の頃から世話になっている同じ村人の猟師達だ。無碍にも出来ず、ハシクは彼らに話かけた。


「お前らこそ、どこへ行こうってんだ。あのエルフんとこか」


「そうだけどー」


やっぱりというふうに猟師達は顔を見合わせる。


「お前らに猟師の仕事を教えるのは俺達の仕事だ。さっさと戻って練習しろ」


長期間、猟に出ている彼らが村にいる間に、若者達は彼らから猟の仕方を学ぶ。


若者達は戸惑う。確かに猟の練習は大切だ。毎日ちゃんと少しずつやっている。しかし、彼ら猟師が村に帰って来ると、指導と言う名のシゴキが始まるのだ。


二人の若者はそれを抜け出してギードの家へ行こうとしていた。


「エルフには俺達が言ってやる」


準備運動を初めていたエンが彼らに気づき、遠くから眺めていた。


どすどすと足音をさせて猟師達が家に近付くと、エンはタミリアとちびっこ達を離れさせ、彼らの前に出た。


 




「……ということらしいのですが」


ギードは猟師達を見る。


確かに兵士としての訓練、対人、もしくは魔物との戦闘が多い王国式の鍛錬は、獣の狩猟を中心とするこの村の若者には必要ないかも知れない。


しかし、彼らはとにかくエルフを、自分達を甘く見ている。  


「自分はどちらでもかまいません。ハシクさん達がうちの護衛と鍛錬しようが、しまいが」


どうでもいい。


「エルフになんぞ、何が出来るっていうんだ。見れば弓矢も持ってねえじゃねえか」


がはははと虎の獣人が笑うと、村の人々の中には釣られて笑っている者もいる。


「ええ、今回の旅には弓を扱う者は連れて来ていません。別に我々は猟に来たわけでも、戦うために来たわけでもないので」


ギードの話の最中にも、猟師達からは「弱いくせに」という言葉が聞こえてくる。


タミリアは無表情だが、戦いの前の集中が見てとれる。


「そうですね、もしよければ、うちの護衛と模擬戦やってみますか?」




「い、いや、しかし、そちらの護衛さんは兵士でしょう。こっちは猟師というか、対人に関しては素人だ」


山犬の獣人が慌ててギードを取りなそうとする。他国からわざわざ来るような、危険な護衛を仕事としているということは、猟師なんかが太刀打ちできるわけがない。


「おりゃあ、かまわねえぞ」


虎の獣人がにやにやしながら村長を見ている。


「だが、やっぱりそっちは対人に関しちゃあ有利だろ。こっちはー」


「そうですね。ではこうしましょう」


ギードは遠巻きにしている村人を見まわし、最後に虎の獣人に顔を向ける。


「妻とやってみます?」


うおぉと声が上がる。美しい人族の剣士に皆、興味があったのだろう。


ギードの笑みが真っ黒になるのを見て、エンは呆れていた。




 ギードは村長の傍まで歩いて行った。


村長の隣に立っていたハシクは、自分のせいで大変なことになったとガタガタと震えている。


「あの、あの、ギードさん、俺はー」


くすくすと笑いながらハシクの肩をそっと叩く。

 

「よく見ておくといいよ。本物の脳筋がどんなものか」


君達はああなっちゃだめだという見本だよ、とギードはハシク達若者にこっそりと耳打ちした。




 ギードはくるっと身体を反転させ、集まった村人と猟師達に向き直るとにっこりと笑う。


「ただやるのももったいないですよね。何を賭けますか?」


「話が分かるじゃねえか、エルフの旦那。俺は、そうだな、上等な酒と、あんたの嫁さんに酌でもしてもらおうか」


猟師達からどっと笑いが起こる。下種げすな笑みを浮かべる虎の獣人に、ギードはわざと驚いた顔をして見せる。


「まあ、いいでしょう。ではこちらの条件を」


そう言って、ギードはハシクを見る。


「ハシクさん、あなたがしたいことは何ですか?。猟師の修行?、兵士の修行?」


「あ、えっ」


自分に振られると思っていなかったハシクがしどろもどろになる。


「落ち着いて考えてみて下さい。あなたは猟師になるはずなのに、何故、うちの鍛錬に参加しようとしたのでしょう」


「お、俺はー」


ハシクは自分の隣にいる熊の獣人の若者の顔を見る。そして意を決したように話出す。


「あ、あの、俺達は猟師の修行も大切だと思ってる。だけど、おじさん達の教え方に疑問がある」


「なんだと!」


虎の獣人が大声を出すと、他の村人がまあまあとなだめた。


「ら、乱暴なんだ。なんで関係ないことで殴られたり、教えてもらうのに酒持っていかなきゃいけないの」


「なんだそれは。そんなことしてたのか!」


山犬の獣人は、虎の獣人達を問い詰めた。彼らはぐへぐへとおかしな笑みを浮かべるだけで、まともに相手をする気はないようだ。


村長も知らなかったようで呆れた顔で、彼らを見ている。


「ふふ、ではあなた方は彼らに対し、今後一切、手を出さないことを約束して下さい」


ギードの言葉に虎の獣人は笑いながら承諾した。


振り返ったギードに、村長も頷いた。ギードはそこにいる村人全員を見まわし、彼らにも証人となってもらう。


「タミちゃん」


ギードは木剣を、タミリアと虎の獣人に放り投げた。



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