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幕間

わけがわからなかった。


「Zant ste ya!」


 悠理自身が置かれた状況も。

 追いかけてくる男たちの言葉も。

 なにもかもがだ!


「ああもう!」


 助けを呼ぶにも悠理の手にした携帯は圏外を示す。

 黄色いクマのストラップが走る勢いでゆらゆら揺れる。

 この場所で気が付く直前に「ユウリ」と呼ばれたことまでは覚えている。

 その先がさっぱりわからないのだ。


 人が行き交う通り。

 舗装された道は見慣れたアスファルトでもコンクリートの敷石でもなく、丸みを帯びた石畳。

 看板に日本語も英語も知った言葉ひとつなく。

 電柱だってありやしない。


 背後の男の一人が何かを叫ぶ。


 力強く石畳を蹴っていた足が自然止まる。

 金髪の、じゃらじゃらとアクセサリーを身に着けた男が一人、眼前に立ちはだかり何かを口にする。


 周囲に確かに人はいるのに、見て見ぬ振りか近づく男から、悠理を助けようとする者はいなかった。

 見知らぬ男に手を取られかけた、その時だ。


「Fino!」


 叫び声と共に突風が吹きぬけ、砂を巻き上げる。

 とたん、リンと鈴のなるような音とともに、右腕を取られた。

「Judit et zan siet」

 低い男の声が耳元で何かを囁き、

「Jasye, who satice?」

 悠理をそばに抱き寄せた。

 男は小柄な悠理より頭ふたつほど高く、頭にくすんだ赤色のくたりとした布帽子をかぶり隙間から黒髪がこぼれ出ていた。瞳の色は影でよくわからなかったが、刺青だろうか? 左目の下の不思議な紋様が異様な存在感を放っている。

 男は軽蔑しきったような声色で淡々と告げると、もう一度澄んだ鈴の音が響き渡り、一瞬の浮遊感と共に悠理の視界がわずかに変わる。

 複数人の男たちの、背後にまわるように。


「FIT, Luset as cherita na et, Hus as ratia Lit Core dante?」


 そう口にしたのをきっかけに、次々と頭上を飛び交う言葉は変わらず理解できないものだった。

 唯一理解できたのは、次第に荒くなる語気からしてよくない傾向であることくらいだ。

 握りしめたままの携帯に視線を落とすがやはり圏外のままで。


 激昂したらしい男の一人が、勢いよく左手を振り上げて。


「JaJa... Dana, kante pane」


 黒い影を睨み付けうめくように、悠理の傍らで男は何かを口にした。

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