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女神AIが勝手に依頼を受けてくるんだが!? 俺は田舎でのんびり暮らしたい  作者: 赤松勇輝


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7、神社のご神体

 境内の奥には咲椰神社のご神体があるという。俺は早く家に戻って寝たい気持ちだったが、田所の説得もあり、せっかくだからお参りをすることにした。


 まぁ、神社の静かな雰囲気は嫌いじゃない。せっかく、千段の階段を登ったんだ。帰る前にお参りくらいしてもいいだろう。


「最近は、お参りをする方が減ってしまいまして……。本日は新堂さんがお参りに来てくれたので、ご神体様も嬉しいかと思います」

「階段をどうにかした方がいいと思うぞ。あれじゃあ少なくとも俺はお参りする気になれない」

「新堂さんは——そうかもしれないですね」


 あくびをしながら言うと、田所は苦笑を浮かべている。


 ……俺としては割と本気で言ったのだが。

 

 田所の後をついて歩いていると、やがて大きな石が見えた。しめ縄に紙垂がついている。いかにも神体という様相だ。


「こちらが咲椰神社の神体の『漲石』です。触ると元気になると言われていますが、現状では補助能力の発展で、非科学的なご神体様はもてはやされないようですね」


 寂しそうに言う田所だが、神体からもどことなく寂しさを感じる。神体のコードは複雑で今の俺には見ることができないが、コードが揺らいでいるように見える。


 ……非科学的なものかもしれない、か。


 自宅に帰って昼寝をするには、千段の階段を降りないといけない。そのくらいの力を俺にくれるのなら、まぁ触ってみてもいいか。


「……この後階段を降りるという苦行が俺には立ち塞がっているんだ。帰って休むだけの体力を分けてくれよ」


 神体に触れると、それこそ田所が補助能力をかけてくれたような漲る感じを俺は受けた。


「この神体、ちゃんとご利益あるんじゃないか?」

「そう言ってもらえると嬉しいです!」

「じゃあ、お参りも終わったことだし帰るか。……あぁ眠い」


 心の中でじゃあな、と神体に声をかけ、俺たちは境内を後にした。

 


 階段を降り切って鳥居の前で、大きなあくびをしていると田所にクスッと笑われた。


「体力の回復をしましょうか?」

「いや、いいよ。帰ったら俺は寝るんだ」


 疲れが溜まっている方が気持ちよく眠れそうだから、田所の提案は拒否しておく。


 そもそも、アリスが勝手に依頼を受けなければこんなに疲れることにはならなかったんだ。今まで静かにしていたアリスを見る。


『橙綺くん、お疲れ様! うん、やっぱりコード操作の腕を上げてるわね。魔物との戦闘シーンには感動したわ!』


 頬に手を当ててうっとりしている様子のアリス。嬉しそうな笑顔を向けてくるが、誰のせいでこんな疲れる羽目になったと思っているんだという気持ちの方が強い。


「つーか、今回の依頼はどうして受けた? 何も理由がないわけじゃないだろ?」

『さてなんのことでしょう? それより——』


 アリスが指差した方を見てみると、田所が首を傾げている様子が見えた。アリスの視認、会話は俺にしかできない。単純に独り言を呟いているように見えてしまったようだ。


「……ったく」

「新堂さん?」

「……なんでもねえよ。それより、依頼は達成したから俺は帰るぜ。……あぁ、ねみい」


 アリスを問い詰めても理由は教えてくれないことだろう。議論するだけ無駄だ。


 あくびをしながら神社を後にしようとすると、田所が俺の腕を掴んできた。まだ何かあるのか、と思ったが田所はあたふたした様子である。


「なんだよ? 何もないんだったら、俺は帰るぞ」


 アリスが肩をすくめて、何やら言っているが、田所には聞こえていない。田所は俺の腕を掴んだまま顔を赤くしている。


「えっと、その……今日は依頼を受けてありがとうございました! 依頼達成の報告を冒険者ギルドにしておきますね」


 眠すぎてすっかり忘れていた。アリスの尻拭いとはいえ、これは依頼だったのだ。報酬ももらえるということか。


「あぁ、よろしく頼んだ」


 ポーチから浮遊原付を取り出し、大きさのコードを元に戻す。


「あの……もしよかったら、またお参りに来てもらえませんか? ご神体様も喜んでくれると思います」


 神社自体は嫌いじゃない。むしろ、静かでのんびりとしているから俺は好きだ。だが、咲椰神社は階段の登り降りがきつい。


「……階段の登り降りを楽にしてくれたらな」


 俺の返答に、田所は笑みを浮かべた。


「任せてください! 全力で補助をしますね!」

「……善処する」


 手をひらひらと振って返答して原付に跨ると、勝手にアリスが背後に腰をかけてきた。


『もぅ、大神官の申し出を無碍にしない方がいいと思うけど?』

「世界の再構築の時に、お前が階段をどうにかしてくれりゃよかったんだ」

『神様には簡単には会えないものなのよ』


 それじゃあ、お前は一体どうなんだと言う思いを込めて俺は言う。


「……そうだな」

『なんか、無性に腹が立つんですけど!』


 背後でアリスが怒鳴っているが、無視して俺は田所に視線を移す。


「じゃあな」

「はい、また」


 お辞儀をする田所に別れの挨拶をして、俺はあくびをしながら、浮遊原付を走らせた。


 神社から遠ざかり、田んぼの畦道をのんびりと走っていると、背後でアリスがポツリと呟く。


『……また、ね』


 含みのある言い方に感じたが、デバイスにギルドから報酬が届いた旨の通知音が鳴ったことで俺の意識から吹き飛んだ。

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