二百七十九
7月1?日(?)?時⁇分
作り物の世界に幾度となく衝撃が走る。
乱立した街並みが破壊され、より混沌とした様相となる。
そんな無秩序な街並みを2つの小さな影が飛び回り、1つの黒い影を攻撃していた。
その度に建物は破壊され、瓦礫の山が次々と築かれていく。
広範囲に渡って一刀の元、両断された建造物がズレ落ちて轟音を立て、乱立した地形が扇状に破壊される。
一条の光が走ったと思えばその軌跡上の建物に大穴があき、衝撃波が遅れてやって来ては粉砕する。
区画など関係ないとばかりに、定規で引いた様な傷跡が残る。
まるで近代兵器を用いた紛争。
いや、威力、範囲共にそれ以上。
これまでに佑樹達が行って来た戦いとはアリと象ほどに桁が違う。
これこそが【神器】を用いた戦い。
神を堕とす者同士の争い。
まだまだ互いに実力のほんの一部しか出していないとはいえ、それでもその戦闘力は圧巻だ。
楽しげに戦う夜代と陽向。
怒りのままに暴れる童子切。
これまでの世界線ではなかったことが起こっていた。
それがどうしようもなく堪らない。
そんな表情で、神崎は離れた位置にあるビルの上で観戦していた。
「予定とは違うようだが」
いつの間にやら神崎のすぐ横に、特に特徴のない、気配も感情も感じられない男がいた。
「はっはっは、最高の化け物ができた!……って奴だね」
神崎は最初から気付いていたのか、驚いた様子もない。
視線の先ではまるで映画のように街が吹き飛んでいく。
映画と違って生々しく、作り物ではないからこそ作り物めいて見えた。
特徴のない男は淡々と、意思の感じられない様子で言葉を発した。
「そう何度もやり直すことはできない。言うまでもないことだが」
「そうだね。けど、遊び心を忘れるわけにはいかないよ」
神崎は特徴のない男を見ることなく、しかし愉快そうに言った。
「私たちの信条はいつだってシンプルだ」
「「僕が僕で、俺が俺で、私が私であるために」」
「だろう?」
「……そうだったな」
神崎と異口同音に呟いた男は、目の前の戦闘など興味もないといった様子で踵を返した。
そして現れた時と同様にいつの間にやら消えている。
そこには最初から神崎以外いなかったかのようだった。
「やれやれ、ああはなりたくない」
言葉とは裏腹に、神崎は少し悲しげな、辛そうな顔をしてそう呟いた。
「叶わないはずの夢を叶えようとし続けて、なまじっか目の前に叶えることができる、かもしれない、そんな手段を見せつけられて、結局目的と手段がごちゃ混ぜになって。ついには生きているだけの何かになる、そんなのは御免だね」




