序章 あんた達はもう用ナシです
「お疲れさまでした~。
あんた達はもう用ナシです。
魔王討伐の手柄は私一人で独り占めすることにしました」
満面の笑みで、転移魔法を4人の仲間の足元で展開させる。
感じたことのない胃の痛みがせり上がってくる。
「ふざけんな! 俺がいなくても魔王を倒せるっていうのかよ!!」
クロウがこんな顔をするのを私は初めて見た。
2メートルは超える巨大な身体をしているくせに、まるで捨てられた犬のように必死に叫ぶクロウ。わざと小馬鹿にしたような笑顔を浮かべてみせた。
「当ったり前。私を誰だと思っているの?
勇者様だよ。じゃ~ね」
そう言って、光に包まれる彼らが完全に消えるのを見送って、私はゆっくりと魔王城の回廊を進むことにした。 コツコツと廊下を叩くブーツの音を聞きながら、クロウの問いかけを思い出していた。
――俺たちがいなくても魔王を倒せるのか?――
答えは明らかだった。
――無理だ――
私はこの五年、四人の仲間たちとパーティを組んで魔王城を目指した。
幼馴染の剣士のクロウ。
大柄で大剣使い。背中を任せられる――その言葉が何よりもぴったりな男だった。魔王を倒すなら、クロウの前衛が欠かせない。
僧侶のセラン。
怪我や毒に侵された時、彼の回復魔法がなければ、おそらく魔王城なんてたどり着けなかっただろう。クロウへの常時回復が成り立つことで、実現する前衛だった。
エルフの弓使いのアルウィン。
どんな場所、体勢からも正確に射貫ける矢に何度、窮地を救われただろう。後方から的確に魔王の急所を狙ってもらう予定だった。
魔術師のライナス。
宮廷魔術師という地位を捨てて、田舎者の私たちと一緒に魔王討伐に同行してくれた。バフやデバフの効果もすさまじく、魔王と正面から戦うという方法が成り立つのはライナスがいてこそでもあった。
この四人と一緒ならば、数百年にわたり脅威であった魔王を倒すことも難しくなかった。
だが、昨夜、私に届いた宰相・セイリオスの書簡にはこうあった。
「勇者殿以外のパーティメンバーは帰還されたし。
三日以内の帰還がかなわない場合、反逆罪とみなす」
いや、なんで女子の私だけ帰れないのよ。生贄かよ?
魔王の幹部全部倒したんだけど…。結構しんどかったんだけどな。
もう、魔王の玉座、目の前なんですけど。
と突っ込みどころは満載だった。
だが、これを無視すれば万が一、魔王を討伐できたとしても反逆罪の汚名が着せられてしまう。
これは田舎者の私でも痛いほど分かった。
そして苦楽を共にした彼らに、この手紙の内容を伝えたら返ってくる言葉は痛いほど分かっていた。
「反逆罪? 上等。やってやんぜ」
「勇者様を一人で行かせるなんて、神が許しません」
「流石、愚かな人間だ。エルフの私には関係ない」
「魔術の研究なんてどこでもできますので、お気になさらず」
だから、強制転移魔法をかけた。
彼らの反論の言葉を聞く前に。
彼らの「裏切られた」という顔を見てしまう前に。
彼らが私の意図を察する前に。
「あんた達はもう用ナシです」
我ながらよくあんな最低なセリフを思いつけたものだ。
勢いよく玉座の間の重い扉を開いた。
「魔王! 安心しろ私が添い遂げてやる」
夏がファンタジーが書きたくなる病を発病させた気がします。
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