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魔王少女  作者: mizuyuri
第一部
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第二十三話 ヴィグルの警告

「話し合いですか?裕美様が?」


 日曜の午前中に起きている私に疑問を持って問い詰めてきたヴィグルに、本日の予定を説明したところ、さらに疑問を持たれてしまった。


「まずぶん殴ってから考える裕美様が『話し合い』ですか?」


 二度も言われた。


「殴ってスッキリしたら謝罪もせずに帰っていく裕美様が『()()()()』ですか?」


 しつけぇよ!三回も言うなよ。


「どうせ、まともに話し合いなんて出来ずに、結局はろくな結果にはならないんですからやめておいた方が賢明だと思いますよ」


 酷い言われようだ……


「決めたのは美咲なんだから仕方ないだろ?ったくヴィグルが行った方がいい気がするんだけどな」


「残念ながら私は誘われていませんからね。それにいくら私が行っても、あのキューブなんちゃらに考えを改めさせる事はできないと思いますよ」


「ん?どうして?」


 私が『?』状態なのを見てヴィグルは説明を始める。


「裕美様が魔法少女になった原因が、あの生物と聞いた時に色々調べたんですよ。なので、直接対話したわけではないので、情報の取捨選択は裕美様が行ってください」


 いちいち前置きを入れるのはヴィグルらしいな……


「あの生物は、知能を与えられた生物兵器のようなものなんですよ。異世界間を超えて移動する連中は全て悪だとプログラムされているような感じです」


 またエライ突拍子もない単語が出てきたな。生物兵器ぃ?


「奴等の世界は戦闘系の魔法が発展していないらしく、魔力を引き出す能力は特化している世界らしいです」


 あ~……何か昔そんな事聞いた事あったかもしれない?


「質が悪いのが、魔法技術はかなり進んでおり、各異世界を視認することができるらしく、それ等を監視し、各異世界の治安維持をしていると勝手に思い込んでいる正義感の押し売りをしてくるような連中なんです」


 そりゃあ鬱陶しい。


「つまり、住民が魔力を持っていない監視対象の世界に、別の世界から誰かが入り込んだら、魔力を引き出す能力を与えられたアノ狐みたいなのが送り込まれてくるようですね」


 魔王軍が来るタイミングと浮遊狐が来たタイミングがほぼ同じ時期だったのはそういう理由なのか。


「ある程度知能が与えられているようで基本は自己判断で色々動いているようですが、その知能には『異世界からやってくる奴は悪者』と『異世界から来た連中は元の世界に送り返す』という二点も織り交ぜて知識としてもっているようです」


 何か頭がこんがらがってきたな……


「えっと?つまり知能としてその二点が根本にあるせいで、何か言ったところで判断を勝手に変えたりはしないって事か?」


「まぁそのような感じですね。そしてアノ狐をどうにかできなければ、幸さんも常時洗脳のように入れ知恵されている状態ですからね、結局かわらないですね」


 ……じゃあアノ浮遊狐殺しちゃえばいんじゃね?


「ちなみに、アノ狐を排除したところで、別の個体が送られてくるだけなので無駄ですからね」


 考えてる事がバレた!?


「ついでに言うと、個体間で若干性格も違っているようですので、今のより融通が利かない酷い性格の個体がくる確率も高いので、殺しちゃうのはあまりお勧めできませんからね」


 えっと……つまるところ、魔王軍が全軍元の世界に戻らない限りは、永遠と魔法少女が生み出され続けるって事か?


「まぁ裕美様は何をどう話し合っても、今までと変わる事はありませんが、幸さんだけを何とかしたいのでしたら、今まで通り幸さんに魔法少女を続ける事を諦めさせればいいだけではないですか?そうすれば、アノ狐は幸さんから離れていくので、もう悩む事はなくなるのではないですか?」


 その後はまた次の魔法少女が誕生するだけなので、裕美様の行動に変化は起きませんが……と付け加えて説明していく。


「美咲の口ぶりからすると、今回は幸を何とかしてあげたい~みたいな感じだったから、それでもいいんじゃね?」


「そうですか」


 そこで会話は止まる。

 う~ん……今から家出ても待ち合わせ時間にはまだ早すぎるな……


「そういやさ、三人目の魔法少女が四天王までたどり着いて、一人やられたじゃん?あれって誰だっけ?あの頃まだ私、全員の名前覚えてなくてさ」


 とりあえず、暇つぶしに話題を振ってみる。

 もちろん昨日、偶然三人目の魔法少女だった夏美ちゃんと会った事は言わずに。


「ドゥールですね」


 またコイツか!?

 最近コイツの名前ばっか聞くような気がするな。

 もしかしてドゥールって、よく言われる「奴は四天王の中では最弱」ってキャラなのか?


「よく覚えてますよ。ドゥールが今住んでいるのが、その三人目の魔法少女の家ですからね」


「え!?夏美ちゃんウチの四天王と同居してたの!?」


 咄嗟に出た私の発言を聞いてヴィグルは怪訝そうな顔をする。


「三人目の魔法少女の名前を裕美様が覚えていた事に驚きを禁じえませんが……まぁその通りです。裕美様がドゥールに、その夏美さんの治療を命令したのではないのですか?その延長でドゥールは夏美さんの家に住むようになったんですよ」


 ああ~……そういやそんな命令したような気がしなくもないかな~……

 ってかドゥール律儀すぎだな。


「いやぁ、しかしドゥールも災難でしたね。先日の事件に仕事場で巻き込まれてしまったせいで、しばらく現場保管を警視庁から通達されてしまったらしく、仕事が休みになってしまい、収入が減ってしまっているようです」


 ああ、この前の異世界からのオッサンがやったやつか。

 何でいきなりその話を始めるんだ?


 いや待てよ……

 ヴィグルが大げさに演説口調で話しだす時ってのは、大抵は私をねちっこく責め立てる時だ……

 何を言われるんだ?


「夏美さんもお優しい方ですね。「ドゥールのために私が少しでも稼いできてあげる」と言ってバイトを始めたようですよ」


 なるほど、昨日からバイトを始めたってのは、そういう流れがあったわけね……

 何か色々とつながったわ。


「本来ならやるべき仕事があるのに同居中の魔族に押し付けてるどっかの魔法少女にも見習ってほしい話だとは思いませんか?ねぇ?裕美様」


 ほうほう……そういう流れで私を非難するわけか……

 そこまで言うなら私だってプライドがある!いいだろう!言ってやるさ!


「他所は他所!ウチはウチでしょ!!」


 あ、ヴィグルの顔が『ダメだコイツ……』って表情になった。


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