第十四話 いじける幸
「ねぇねぇ美咲~何であんな格好になってたの?」
「美咲ちゃんのあの姿って名誉魔族なの?」
「変身できんの?変身?」
「結局あのおじさん何だったの?」
「美咲さんって魔王様と顔見知りなの?私魔王様のファンになっちゃった!今度サインもらってきて」
案の定というか何というか、美咲が教室に入ってくるなり、即囲まれて質問攻めになっていた。
いや……最後に聞こえてきたセリフは微妙に何か違うな。
そういうのは私に直接言えよ。
サインは無いけど。
一方で幸は、変身した瞬間も見られてなければ、声も聴かれていない、それでいて変身を解いた瞬間も見られていないため、囲まれる事もなく、美咲が捕まっている隙にそっと教室に入り自分の机で読書タイムに入っていた。
「……教室に入る前にクラスの方達が噂してるのが聞こえたのだけど、裕美さん……アナタ魔王の眷属だったんですね」
読んでる本から視線をそらす事なく、いきなり話しかけられた。
「まぁそんな感じかな?」
同じように私も、教室の入り口で囲まれている美咲から目線をそらすことなく、適当に相槌をうつ。
「初耳でしたね。何故嘘をついていたんですか?」
「だってお前、魔王をめっちゃ目の敵にしてたじゃん。それ言ったら問答無用で私に襲い掛かってきたろ?」
「どうでしょうね?どちらにせよ返り討ちにあってるので何とも言えませんね」
これはアレか?また戦闘でぼろ負けしたんですねてるのか?
「そういやケガは大丈夫か?美咲はああ見えて回復魔法は得意だからな。後遺症とかも残らないと思うけど、どうだ?」
まぁそんだけ回復魔法が得意なのに自分の心的外傷は治せてないんだけどな。
「折られた腕と、潰された内臓は、治ってはいるんですが、少し違和感が残ってる感じですね」
ほんとよく生きてたなコイツ……
いや、私が軽く回復魔法かけてなかったら、死まで秒読みだったかもな。
「魔王にちょっかい出さなければ、そこまで重体になる事なかったろうに……何で挑んだんだ?」
そう言うと幸は私を思いっきり睨んできた。
おいおい、私が魔王の眷属だからって八つ当たりしないでほしいな……いや、まぁ実際は本人ではあるから睨まれて当然なのかもしれないけど……
「蘇生魔法を使えるとかどうとか知りませんが、人の命を軽く見すぎているのに腹が立っただけです」
あ~確かに、そうかもしれない。
生き返らせれば済むからって、殺す事にためらいが無くなってたかも。
まぁ他人の命を軽視するってのは魔王としては正しいのかもしれないけど、元普通の人間の魔法少女としては問題大有りだよな……ってかそれただのサイコパスじゃね?
「っても実力差は明白だったろ?そんな命を軽く見てる奴にむかって行って……下手したら死んでたぞ」
まぁ死んでたら死んでたで蘇生魔法使ってただろうけど。
あ……そんな考えがパッと出てきてるから、人の命を軽く見てるとか言われるんだよな。
「少々賭けに出てみただけです。おそらく殺されるまではいかないだろうと思ったので……まぁ殺される寸前まではいきましたけど」
う~ん……私は、他人の命を軽く見てるのかもしれないけど、コイツは自分の命を軽く見てるんじゃないか?
「それに……」
何かを言おうとして、そこで言葉に詰まっていた。
そして、そこで私との会話を終わりにするかのように、そっと口元に手を当て視線を遠くに向ける。
「……私はどうするべきなんでしょうか?」
誰に話しかけるわけでもなく、ただ独り言のように静かにつぶやく。
いや、そこで会話止められてもなぁ……むしろ私がこの後どうするべきなんだよ?




