第十三話 魔王様いいわけタイム
「魔王~~~~~っ!!!」
激高した幸が飛び掛かってくる。
喋ると正体バレるし……面倒臭いなぁ……
まぁ何だ……幸、死なないようにがんばれ。
私は幸を指さし、その指を下に向け重力魔法を使う。
「フゲッっっっ……!!?」
あ、オッサンと違って潰れた。
踏まれたカエルみたいな声出してるし。
何か言いたげな鬼の様な形相で、必死に起き上がろうとしているが、ピクリとも動かない。
「ま……お…………う……」
それだけをかろうじて絞り出すと、力尽きる。
内臓を圧迫され、嘔吐と吐血をしだしたので、そのタイミングで重力魔法を解く。
幸はピクリとも動かなくない。
私は倒れている幸の髪を掴み顔を確認する。
白目をむいて気絶はしているが、かろうじて息はあるようだった。
「……手荒な方法しかなくて悪かったな」
私はそう呟くと、軽めに回復魔法をかけ、ついでに色々と汚れてしまっていた顔を魔法でキレイにしておく。
そのまま幸を地面に寝かせたまま、私は屋上へと再び転移する。
「おい美咲!幸を止めておけよ!面倒臭い事になったじゃんか」
座りこんでいる美咲に向かって怨嗟の声をぶつける。
「いや、すまん……裕美の変身を目近で見たせいで腰が抜けて……」
「お前いい加減、そのトラウマ治せよ!」
美咲は一言「無理……」と言いながら、生まれたての小鹿みたいにプルプルしながら立ちあがる。
「相変わらず規格外な魔力だよなぁ……あのオッサンは後で復活させるの?」
私に挑んで命を落とした魔法少女を、後から蘇生させてるのを知っているからこその疑問を美咲は口にする。
ただ、今回は相手が魔法少女ではなく、異世界から来た名前も聞き忘れてしまったオッサンである。
「させるよ。魔王軍の戦力増強のために、私の配下に加えようかと思ってね」
「ああ……つまり、今後の魔法少女がアンタまでたどり着く確率がガクッと下がるって事ね……」
まぁあのオッサン、美咲より強い感じだったしな。
「そういやちょっと気になったんだけど、あのオッサンに止めをさした魔法って……ひょっとしてアタシも食らった事ある?」
「あの時と違って、威力は調整できるようになってはいるけど、概ね正解かな」
美咲は「聞かなきゃよかった」みたいな顔になっている。
未知を知りたいって気持ちはわからんでもないが、大抵は知らない方が良いパターンだって事を覚えておいた方がいいぞ。
「とりあえず、今日この後授業があるかどうかわからんけど、私は変身解いて一足先に戻ってるから、美咲は幸運んどいてやってくれ」
幸は、私が参戦している事は気絶してたせいで知らないハズなので、魔王がいなくなった後で、私が幸を助けてたら怪しまれる事間違いなしである。
「いやいや、ちょっと待ってくれって!そんな事したら、クラスの皆から、この格好してるのがアタシだってバレるじゃんか!?」
「……は?」
「ん?え?何?だって変身はバレないように隠れて……」
何言ってんだコイツ……やっぱ馬鹿だろ。
「美咲……声は変身しても変わらんぞ……声から自分の正体がバレるかもって事を考えて戦ってたか?」
その一言で色々察したのか、美咲の顔が青くなる。
そのまま膝を折り、崩れ落ちる。
「……マジか?こんな似合わない格好してるのがアタシだって、全校生徒に知れ渡ったっていうのか?」
「しかも、姑息な戦い方でドヤ顔してたあげく、攻撃くらって盛大にズッコケて鼻血垂らしてたうえに、捕まってギャアギャア騒いで助けを求める……っていう一連の行動を皆見てたぞ」
「ああああああああ~~~~!」
美咲は頭を抱えて慟哭する。
「まぁ何だ……とりあえず気が済むまで喘ぎ声だしたら、幸連れて教室来いよ」
それだけ言い捨てて、私は変身を解いて、先程まで戦闘を眺めていた三階廊下の窓際に転移する。
そこには既に人影は無く、皆教室に戻り、思い思いに話に花を咲かせているようだった。
「魔王様初めてあんなに近くで見ちゃった」
「ってか魔王様結構可愛くなかった?」
「それよりアノ強さはヤバイって!」
案の定というか、滅多に人前に出てこない魔王の話題が大半だった。
ってか、あのオッサン倒した時、結構グロいやり方だったと思うんだけど、その辺の話題は無しか……
人の領域を超えた戦闘だったせいか、あの場にいた『人間』は人として見られてなかったのかもなぁ。
理解の及ばない生物が一匹死んだとしても、それは『人間』からしたら「ゴキブリを潰した」くらいの感覚になっているのだろうか?
人は、自分と同じ構造の生物に対しての反応はあっても、それがまったく構造の違う物と認識されると、ここまで反応が違うものなのかと、色々と考えてしまいます。
いや、まぁ教室を覗いてみると、青い顔をして気持ち悪そうな表情になっている子もいるから、一概に全員が同じような考え方なのだと一律に考えるのは早計かもしれないけど。
さて、ここからが私の本当の闘いだ。
今回の一連の私の行動を振り返って、どう「魔法少女」って単語と「私が魔王」って事を隠して言い訳するか……
美咲と幸に関しては、下手に嘘でフォロー入れておいても、当人達がアホなんで、私のフォローを速攻で台無しにするだろうから、この二人に関しては各自で勝手に弁明してもらうとして……
私が変身せずに生身で戦闘した事に関しては『名誉魔族だから』で誤魔化せるだろう。
一番の問題は……
『私が転移で消えたと思ったら、その少し後でいきなり登場する魔王』
このどっから見ても「魔王の正体お前だろ!」ってツッコミ入れたくなるようなシュチュレーション。
この部分を誤魔化すための嘘をでっちあげないと、教室に入っていくことが……
「あ!大間さんこんなとこで何してるの?早くコッチ来て話聞かせてよ!」
でっちあげる前にクラスメイトに発見された!!?
「大間さん名誉魔族なんだったら教えてくれればいいのに」
「いや、わざわざ言うような事でもないしさ……」
大丈夫大丈夫、この辺の話題なら問題なく返答できる。
「ねぇねぇ、裕美さんって魔王様とどういう関係なの?魔王様呼んだのって裕美さんでしょ?」
きた……どう返す?
「そうそう、何かあったらすぐ呼べ~って言われてたからさぁ……」
何で魔王にそんな事言われてんだよ私!!?魔王とどういう関係だとそんな事言われんだよ!?
まずった……この返しは失敗……
「もしかして大間さんって『魔王に名誉魔族にしてもらった』の?」
……
…
「うん、じつはそうなんだ~いやぁ~やっぱばれちゃったかぁ~」
とりあえずはこの設定でいいや。




