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5話

『11月19日午後1時頃、M大学で教員1名が死亡、男子学生1名が重傷を負う事件が発生しました。男子学生の訴えを元に教員の自宅を捜索したところ、冷凍庫から人の身体の一部が発見され、身元の確認を急ぐとともに……』


スマホの画面の中でニュースキャスターが淡々と事件の概要を読み上げるのを聴きながら、俺は病室のベッドの上でコーラを飲んでいた。


実はあの後気絶して救急車で搬送された。一応重傷ってことになってるし、殴られたのが頭だから大事をとって数日入院することになった。


やっぱり雪谷は人肉を食っていた。カニバリズムってやつだ。


雪谷の最後の食事を見て知ったんだけど、人の肉ってササミみたいに白っぽいんだな。別に知りたくはなかったけど。


「具合はいかがですか」


「あ、こんにちは。元気ですよ」


そんで事件の関係者ってことで、刑事的な人がこうやってちょいちょい来る。俺のところに来るのは山下さんって人。


ただこの人、仕事しに来てる感じじゃないんだよな。どっちかと言うと雑談しに来てるような。


「被害者の身元はまだ確認がとれていないんですよね」


「はい。しかし雪谷の部屋から日記が見つかりまして、誰を狙ったかまで書いてありました。これが本当ならすぐに特定できるでしょう。睡眠薬も見付かっていますね、おそらくお茶などに混ぜてターゲットに飲ませていたんでしょう。おっと、他の人に言ってはいけませんよ」


「知られちゃいけないことをどうして言いますかね」


被害者たちの身元が不明とは言っても、1人だけすぐに特定できた。


俺が見た雪谷の最後の晩餐、マニキュアを塗った爪。そしてタイムラインに流れていた「友達とお揃いのマニキュア〜♡女子力トレーニング( ^ω^ )」の投稿。


結論を言うと、食われたのは高山愛子だった。


雪谷の胃腸内の残留物から、高山が食われたことが確定したらしい。食われたのはおそらく手足の一部と肝臓で、それ以外は冷蔵庫から見つかったとのことだ。


そして高山を最後の食事に雪谷は死んだ。俺の予知は当たったわけだ。ただ俺は、予知で見た高山の身体を阿部ちゃんのものだと勘違いしたわけだけど。


「君は雪谷がカニバリストだと知っていたんですか?」


「いえ、殴られる直前に知りました」


「どうやって? 本人がそう言ったとか?」


「はは、超能力だって言ったら信じます?」


この刑事さん、俺が結構冷静だって知って、結構遠慮なくやってくる。無神経っていうのかもしれないけど幸いと言うべきか、俺はそこまで繊細な方ではなかった。


「雪谷は以前から呂律が回っておらず、震えなどの症状も出ていたそうですね」


「はい。だから階段から落ちたんでしょうし、咄嗟に手も着けなかったんだと思います」


「おそらくクールー病でしょう。ほとんどの人間は免疫が遺伝子に組み込まれているらしいですが、おそらく雪谷はそのほとんどではなかった」


クールー病。異常プリオン、感染性タンパク質による神経疾患。


雪谷のように呂律が回らなくなったり、手や足に震えが出る。あと情緒不安定になるらしい。類似するものにはクロイツフェルト・ヤコブ病とかがある。


重症化すると歩けなくなって、そのうち座っていることすらできなくなる。雪谷はまだ軽症だったんだな。原因は食人だと言われてるらしい。簡単に言うなら、狂牛病の人間バージョンだ。潜伏期間は5年以上。つまり雪谷は結構昔から人間を食べてたってことだ。


「今回犠牲になった高山愛子さん、本当に気の毒です。まだこれから未来がある若者だったのに」


「はい。どうして気付けなかったのかって、今でも思います」


「気付けるはずがなかった。君が自分を責める必要はないんです」


「いや、気付こうと思えば気付けたはずだったんです」


もし高山の最後の晩餐を見ていたら、対策の練りようはあった。


友達とかすれ違った人とか、散々いろんな人の最後の晩餐を見たのに、どうしてよりにもよって高山の食事は見なかったんだろう。


自意識過剰な勘違い女だった、けど悪いやつではなかった。少なくとも、こうやって死んでいい人間じゃあなかった。


「ていうか、信じるんですか、俺の超能力」


「信じないわけにはいかないんです。私は多少霊感があるのでね。君のそれを否定するなら、自分の霊感も否定しなければならないので」


「……そうですか」


もし最後の晩餐は何がいいかと訊いたら、高山はなんて答えただろう。多分だけど、クイッターに載せてたようなパンケーキとかじゃなくて、みんなと同じように白飯と味噌汁だとか、納豆とか海苔だとか、それか思い出のある料理とかだろうな。


「君のそれは、神様から貰ったんでしょう。それがあったから1人の女の子を救えた。もっと誇りに思ってもいいと思いますよ」


「え?」


神様から貰ったって、この人なんで分かったんだ。


……ああ、そっか、この人もそうなのか。


山下さんが出て行ってしばらくしてから、夕飯の病院食が運ばれてきた。病院食は味が薄くてまずいってよく言うけど、別にそうでもないと思う。


高山が殺されたと知って飯が食えるんだから、俺って結構薄情なのかもしれない。ああそうだ、そういえば。阿部ちゃんはご飯、食べれてるだろうか。

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