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プロローグ
あたしたちの最初の夏。
息を呑んで見つめたあの景色、憶えてる?
空と海だけが映るフロントガラス。
水平線から顔を覗かせた大きな黄色の太陽。
波がキラキラと揺れて、空と海の境を曖昧にした。
隣りにある優しい眼差し。
抱きしめてくれた力強い腕。
ゆっくりと昇っていく太陽が、いつか見た映画のタイトルみたいで、
窓から入り込む波の音をBGMに、
あたしたちの恋物語もそこから始まったよね。
でも現実って、映画のようには旨くいかない。
二時間じゃ綺麗に終わらない。
長い時間があたしたちの恋物語を少しずつ狂わせていったんだ。
リアシートに映る二人の重なった影は、
甘い恋の始まりだったはずなのに……




