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夢幻のアルデモース  作者: KANAR1024
第一章-クレープス・エクリクシ-
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第六話-王都襲来-

◼︎ミラー襲撃前夜


ハイレピア学園の会議室にとある人々が集結する。

それは、王都を、国を守る者たちであった。


「さて皆さん。明日はいよいよ予言の日です。」

ハイレピア学園の学園長、ライル・エンシールがグラスを片手に語り始める。

無論、中身は水だ。大仕事の前にアルコールを摂取するわけにはいかない。


「迫り来る悪は強大です。ですが、我々は勝たなければいけません。民と、国を守るために。」

皆、静かにライル・エンシールの言葉を聞いている。

これは儀式であった。


「それでは、我々の勝利を願って、乾杯。」

「「乾杯。」」


———カキィン。

会議室の中にグラスの音が響く。だがそれは直ぐに静寂へと変わり、賑やかさなどはない。


———喜び、楽しみを分かち合う乾杯は、勝負の後にするものだ。



—————————

◼︎当日


「ふあぁ……」

ここは、王都の東門。

そこで門番をしている男が欠伸をした。


「本当に、襲撃なんて来るのかねぇ?」

今は、早朝。辺りは静かで、心が安らぐほどだ。

もしここに小鳥の囀り(さえずり)が加わったら、寝てしまうだろう。


「あのねぇ……『予言姫』が来るって言ったのよ?しっかりしなさいよ…」

相方の女が男に言葉を返す。


「その『予言姫』ってのが信用ならねぇんだよなぁ……そもそも、うちの国の人間(やつ)じゃねぇんだろ?」

「それは、そうだけど……」


男はそんなことは言いつつ、仕事はキチンとやっている。意外と真面目なのだ。

実は相方の女はそんなところに惚れているのだが………それはいい。


とにかく、男は仕事は遂行していた。だからこそ、気付いた。


「ん?何だありゃ?」

———森の中が、揺れてる。

そう言い終える前に、影の正体は出てきた。


東門の正面には、五百メートルほど離れたところから先に、森が続いている。

そこから、出てきたのだ。


それは、大男。

それと………大量のクレープス。

引き連れているということは、大男もクレープスなのだろう。


「フィルィ!待機してる奴らに報告しろ!!!」

「は、はい!!!」

男はそれを見た瞬間に大声で相方の名前を呼ぶ。


襲撃に備えて、各門には戦力が待機させられている。それを、呼ばせたのだ。




「フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!」

その時、遠くの大男の口から豪快な笑い声が発せられる。


「俺の名前はフォース!!!今から貴様ら全員を嬲り殺す者だ!!!覚えておけ!!!」

大地が揺るがす程の轟音が男の耳を震わせる。

そして、本能的に理解した。


———ここは、死地だ。


—————————

◼︎北門

「キャハハッ!キャハハハハッ!」

北門ではすでに戦闘は開始されていた。


戦場には騎士と傭兵団とクレープスが入り乱れ、壮絶な戦いを繰り広げている。

その中で、一際異常性を放つ少女がいた。

甲高い、金切り声で笑う少女。

彼女はクレープスを連れて出現した。明らかに、異常である。


「くそ…数が多い!」

その近くに、一人の傭兵。男だ。

その男はそこそこの手練れで、クレープスを既に何体も倒している。


「キャハハッ」

少女が不気味な笑顔を浮かべる。これは、獲物を見つけた時の顔だ。

少女は腕をギ(・)ラ(・)リ(・)と(・)光(・)ら(・)せ(・)、その男に飛びかかった。


スパッと、男の首が斬られ、落とされる———筈だった。


———ギィィィン!

人間とは思えない音が少女の腕から発せられる。

それは、刀との衝突である。


「あっぶない!」

男の首を両断するはずの攻撃を防いだのは———


「すまない皆!遅くなってしまったけど、無事かい?」

傭兵団(氷鍵)の若きリーダー、リオレ・イスタールであった。


「…っ!ありがとうございます!リーダー!」

ギリギリのところを防いでもらった傭兵の男が感謝する。

「感謝は後でたっぷり聞くよ、今は眼の前の敵に集中するんだ!」

「はい!リーダー!」

指示通りに傭兵が大量の敵へと視線を戻す。


そしてイスタールは、先ほどの少女に目を向けた。

「ねぇ、ねぇねぇねぇ、あなた、あなたって何なの?」

拙い言葉で少女に聞かれた。

イスタールはその問いかけにしっかりと目を見て答える。



「僕はリオレ・イスタール、君の敵だ。…そういう君こそ何なんだい?」


「わたし?わたしのこと?わたしは、ブレード!キャハハッ!キャハッ!あなたを殺すのっ!」

「っ!」


再び、ブレードと名乗るクレープスの腕が光る。

否、光が反射され、ギラリと輝いているのだ。


———ギィィン!


キリキリと、衝突したイスタールの刀とブレードの腕(・)が音を奏でる。


(まさに、手刀、だね。)

ブレードの腕はガチガチに硬質化され、刃物のようになっていた。

実に単純、故に強力、である。 


「キャハハハハハハハハハハ!!!」

戦場の中で相対する二つの刀が激戦を繰り広げようと———






「助太刀させていただきます!」

…どうやら、三本だったらしい。



—————————

◼︎西門

「ふむ……」

東門同様に戦場と化した西門前にて、堂々と椅子に座る男がいた。

彼は、ライル・エンシール。ハイレピア学園の学園長である。


ここで彼の話を一つ。

実は、彼は学生時代、武闘派であった。

無論、知識も演算力も統率力もあるのだが、とにかく学生時代は、武闘派であった。

言うなれば、フォートのようなタイプである。 戦いを、楽しむ。


だが、もしライルとフォートを比べた時、ライルの方がた(・)ち(・)が(・)悪(・)い(・)と、彼の知人は言うだろう。




「ふむ……彼が意識持ちのクレープスかな。」

ライルの目線の先には、他のクレープス達とは何処か雰囲気の違う、気怠そうな男がいた。


(何か、仕掛けてみるか…)


「リンダ、あそこにいる男に矢を放ってくれ。」

「了解です。」


ライルの指示によって放たれた矢が真っ直ぐクレープスへと飛んでゆく。

そして着弾———


「あァァ〜?」

クレープスがぐるりと首を回し、矢を見る。そして、掴んだ。

「てめェらかァ〜?なんかうぜェなァ〜?」

男がクルクルと手に持った矢を回しながら矢が放たれた方向をジィッと見る。

その時、

———ボン!

「ぐぉっ!?」


男が掴んだ矢は、男が話している途中で、爆(・)ぜ(・)た(・)。

爆発の煙が男を取り込む。


死んだのだろうか。



「あァ〜痛ェ〜!!!」

煙が晴れた時、男は堂々と、だが気怠そうに立っていた。

それは少なくとも、ダメージは少なかったことを表している。


「あァ、何でこんなことやらなくちゃいけねェんだ………しかも、痛ェし。あァ、うぜェ。

だからァ〜……お前、いや、お前らァ全員……………有罪だァ!!!!!」


突然、戦場に一人のクレープスの咆哮が轟く。

ライル・エンシールはその光景を未だに椅子に座りながら観察して(見て)いた。


「ふむ、なかなかに厄介そうな敵だね……」

「追撃します。」

リンダがゆっくりと弓を構え、標準を合わせる。だが、

「いや、大丈夫だよリンダ。ここからは………私が戦うからね。」

「そうですか………それでは………気をつけてね、お(・)父(・)さ(・)ん(・)。」

リンダが、偉大なる父の元を離れ、他の戦場へと移動する。

それに合わせ、その言葉が耳に入った老教師たちは、ライルから逃げるようにして少し離れた戦場へと向かった。

さて、それは何故か。


「さぁ、行くとするかね。」

ライルが椅子を立ち、体を伸ばす。


何故なら、ライルの戦闘スタイルは彼の悪質な性格と技巧が混ざり合い、周囲の人間にも危害が及びかねないことを教師達は理解しているからであった。


そしてここから、ライルの蹂躙が始まる事は、一部の人間にはわかりきったことであった。


—————————

◼︎南門


天候が少し悪くなり、冷たい風が木を揺らす。

その頃、南門に向かう道には一人の男、否、クレープスがいた。


「よお、遅かったな。」

それに相対するは、刀を持った一人の女と甲冑を着た男。

刀を持っている方は見覚えがある。

「………また会いましたね…」

それは、このクレープスの分(・)身(・)体(・)を斬った女。


「お前は裏から来る気がしたんでな、待ち伏せだ。」

「そう、ですか………」


二人と一人…否、フォートとレオン、そしてミラーが、各々の武器を構え、向き合う。


「………今度こそ、殺して差し上げますよ。」

「こっちの台詞(セリフ)だ、クソ野郎。」




———王都防衛戦が今、始まる。






—————————

◼︎東門


「フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」

戦場にフォースの大声が響き渡る。


「フゥゥゥゥゥゥン!!!」

フォースは見ての通り剛力を持っているようで、そこら中の地面をめ(・)く(・)り(・)、それを戦場へと投げ散らかす。


「っ、くそぉっ!!」

王都を守護する騎士たちはその暴力に蹂躙されていた。

大量にいるクレープスは対処できても、フォースの強大な力を抑えれる者は今ここにはいない。

おおよそ、詰みであった。



「ぁ……あぁ………」

一人の騎士がへたりと地面に倒れ込む。その目の前にはフォースが、

「フン!!弱い、弱すぎる!!!!!」


騎士に巨大な拳が振り下ろされる。

そして騎士の視界は真っ暗に染まり———




「ヌゥゥ!?」

突然、フォースが唸り声を上げた。


「いやぁ、口ほどにもないっすね。」

「副団、長………」


騎士は死んでいない。それどころか、怪我一つない。

そう、ある男によって拳は止められていた。



それは、団長(戦闘狂)に憧れ、若くして研鑽を積み、やがて史上最年少でその座へと至った男。

「さあ、ここからは俺が相手っすよ。」

「何だ貴様、なかなか強いではないか!!」


エスコルタ騎士団副団長、アティス・エアリシスであった。


———

「フハ、フハハハ、フハハハハハハハハ!!!」

フォースによる猛攻がアティスを襲う。

その攻撃一つ一つに人を死に至らせる水準(レベル)の剛力が込められている。


だがアティスは避けない。

避けずに全て受け止め続ける。

何故ならば、彼が憧れた人物が怪力の持ち主だったからだ。

彼は、怪力の戦闘狂に憧れた。隣に並びたいと思った。

だが、彼にはずば抜けた腕力などない。寧ろ、弱い方であった。

だから、敢えて逆を選んだ。

力の絶対量ではなく、力の最適な使用と利用。

アティスはこ(・)れ(・)を北にある武術国家アルディエストの拳法、流極拳を改(・)造(・)にすることによって、会得した。

簡単に言えば、彼は力の流れをほぼ完璧に理解している。

アティスの今の実力では、フォート・アグリンド以下の力であれば、殆ど受け流すことが可能である。


そして何故、ここまで敵との相性を完璧にすることが出来たか、それは…


(流石ライルさん…人選完璧じゃないっすか…)


この襲来において、各門の戦力はライル・エンシールにより配置されている。

アティスの技(・)を知っているライルが、この敵が攻めてきた報告を聞いた時、瞬時に彼を送り出したのだ。


一通りの攻撃を受け流した後、攻撃が止まった。

「フゥム、妙だな。お前のような男に俺の剛力を耐える力があるとは思えない。だが、俺の攻撃は防がれる………」


フォースが悩む表情を見せる。

それに対してアティスは、

「降参してもいいんすよ〜」

と、挑発している。

だがフォースは、

「何を言う、強き者を嫐り殺してこそ楽しいのだろうが。」


そう言った。

(うーん…こういう奴って戦闘だか何だか言って頭が悪いんっすよね……もしかしたら、意外と楽勝———)

「うぉぉっとぉ!!!」

アティスが眼前まで迫っていた鋭(・)い(・)何(・)か(・)を反射で避ける。


「あっぶないっすね…!」

(一体何が———)


前を見る。そしたら、フォースが大きく腕を振りかぶっていた。


「フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」

大きな笑い声と共に、剛力の腕が何かを投擲してくる。


(大量の…針!?いや、大量に砕かれた石の礫っすか!!)

「くっ。」

刃物などの鋭いものは、どうしても受け流すことが出来ない。それがこの拳法の最大の弱点であった。


「フム。避けた。避けたな?つまり、これは効くってことだな?」

「………そこそこ考える頭はあるみたいっすね。」

息を切らしながら言う。


(結構………痛いっすね…)


避けきれなかった礫がアティスの体を抉り、ダメージを与えている。

幸いな事に傷はそこまで深くはないが、血は少しずつ流れ出続ける


(まぁ、短期決戦が好ましいんすけどね………)

アティスが懸念しているのは、本人の火力不足である。

彼は受け流す事は得意でも、大ダメージを与えるのは得意ではない。

それに、フォースの巨体からして、本気で殴ったとしても大したダメージは与えられないだろう。

となると、


(これはもう………あ(・)れ(・)を、使うしか…ないっすね…)

あ(・)れ(・)。それはアティスが持つ最大の攻撃手段。だがアティスはそれを滅多に使わない。

理由としては、それを使わずに勝つ事が多いという点が一つあるが………メインの理由は別にある。


(まあ、やるしか…ないっすね…!)


覚悟を決めたアティスがフォースに向かって走り出す。


「フハ、フハハハハ!そうか!向かってくるか!であれば!!!」

フォースが地面へと手を突っ込む。

十中八九、投石だろう。


「もうその攻撃はくらわないっすよっ!」

先程は、反応する時間が足りなかった。

だが、今回は違う。

アティスはフォースから目を離していない。どんなタイミングで、どんな攻撃が来るのかをしっかりと見ている。


「フハハハ!!!」

再び石の礫が飛ぶ。

だが、アティスはそれをすんなりと避ける。


「ムゥ…やはり俺には投石など向いていないか……」

その時、フォースは考える仕草を見せた。

だが勿論、アティスはその間もフォースに近づかんとする。


「よし。それならば!!!」

アティスはすでにフォースの眼前まで迫っている。



だが、フォースは慌てたりも、焦ったりも、怒ったりもしない。

ただ、自らの暴力を行使するまでだ。



「痛(づ)っ!!」

「いくら受(・)け(・)流(・)す(・)とはいえど、掴んでしまえばどうにもできんだろう?」


ぶらりと、腕を掴まれ宙吊りになったアティスが揺れる。


「何だ、気づいてたんすね……」


掴み上げられた肩は脱臼し、肘は折れている。


その時、左腕で吊るされたまま、フォートの右腕に力が込められ始めた。

必殺の攻撃、まともにくらわずとも死んでしまうほどの力が込められる。


だが、アティスも受け流す事は可能だろう。

右腕が折られ、体が宙吊りになろうとも、受け流しに使える部位はまだ残っている。


だが、不完全だ。

「こ(・)れ(・)を受け流し切れるか?強き者よ。」


最大級に力が込められた拳がアティスの腹目掛けて放たれる。


アティスは今できる限りの動きを用いて、何とかその攻撃を防ぐ。

そう思われた。



だが、アティスは攻撃を受けた後、少し、笑っていた。


「強き者よ。今、何をした?」


確かに、アティスは受け流しをしようとしていた。だが、その受け流しを途中で止めたのだ。


「さぁ、何だと思うっすか?」


瞬間、アティスの腕を掴んでいたフォースの拳に衝撃が走る。

それによってフォースはアティスを手放してしまった。


アティスは地面に足をついた瞬間、素早くフォースの背後に回り込む。

幸い、フォースは巨体だ。小回りは効かない。


(これで倒せなかったら………いや、考えない方がいいっすね。)


アクロバティックな動きでアティスがフォースの体を登り、頭部に手を当てた。


「これで、終わりっす!!!」

刹那、先程腕に生じた衝撃と同じ。否、先程よりも強力な衝撃がフォースを襲った。

いかに強大な筋力、剛力を持っていたとしても、脳に直接ダメージが与えられてしまっては、無駄である。

則ち。


「一体、何を———」


フォースはその答えを知る前に倒れ、地に伏し、生命機能を停止する。

無論、この戦場の勝者はアティスであった。



だが———

「っ!痛ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

腕に迸る壮絶な痛みによって我を忘れたアティスが絶叫と共に地面を転がり回る。


アティスは、攻撃を受け流し切らなかった。

自らの生命を脅かさない程度に調整し、あえて受け、吸(・)収(・)したのだ。

吸収されたエネルギーはアティスの攻撃として放出され、フォースを襲った。

これが、アティスの技巧である。


そしてこの技巧の最大の弱点であり、使用を躊躇う所以。

それは、結局、自らも衝撃を受けなければいけないことにある。


そして、強大であるフォースの剛力は、調整した上で腕が破壊し尽くされるほどの衝撃であった。


一通り痛みを耐え切ったアティスはグチャグチャになり、血だらけの自らの右腕を見る。


「これ………治るっすかね〜」

アティスはこの戦場はもう他の騎士たちだけでやっていけるだろうと判断し、即座に治療へと王都の中に戻る。


(フォートさん………褒めてくれるっすかねぇ。)

一仕事を終えたアティスは、呑気にも、そんなことを考えていた。


—————————

◼︎北門


「君は……」

突如僕の目の前に現れたのは、会議室で見た、銀髪の青年。確か名前は———


「ニフタ君、か。」

「ひとまず、話は後にしましょう………それで、あれが意識持ちのクレープスですか?」

ニフタ君が、ケタケタと笑みを浮かべているクレープスの少女のほうを見た。


「うん、そうだね。彼女はおそらく体を硬質化させて、刃へと作り変える技巧を扱うようだ。」

「なるほど………それは厄介ですね……」

ニフタ君が考える表情を作る。


彼がどれほど戦えるかは知らない。だが、心強い味方であることには変わりはないだろう。



「増えた。増えたね。わたしの獲物が、増えた!キャハッキャハハッ!楽しい、楽しいねぇっ!!」

何が嬉しいのか、クレープスの少女…ブレードが、満面の笑みを浮かべている。


「えーっとぉ…まずは——————あなたからぁ!」

「———っ!」


唐突に、満面の笑みを浮かべたままのブレードが殴りかかってくる(斬りかかってくる)。

バチバチと、僕の刀とブレードの腕(刃)が火花を散らしながらお互いを削りあった。


「イスタールさんっ!!!」

ニフタ君の咄嗟の合図に僕は体を下げ、後ろに飛ぶ。

その場に残されたブレードにはニフタ君の刀が———


「邪魔っしないでよねぇっ!!」

「くっ!」


首寸前まで迫っていたニフタ君の刀はガチガチに硬質化されたブレードの指によって止められていた。

だが僕はその光景を目撃する前に追撃の準備を進めている。


「ぶった斬る!!!」

ニフタ君の刀を防ぐのに意識を削がれていたブレードの腹に僕の全力の剣撃を加える。

だが、


(くっ!思っていた以上に………硬いっ!)

刀が接触する瞬間に硬質化した腹は僕の刀をいとも簡単に弾き返してしまった。


「そんな、そんな攻撃がわたしに効くと思ったの?ねぇ、思ったの?ねぇっ!!!」

ブレードが怒りのままに僕らに回し蹴りをしてきた。


「「!」」

二人してその蹴りから逃れた僕たちは先程の位置へと戻ってくる。


「これは………まずいね、ニフタ君。」

「えぇ、一切刃が通りません。なのに、向こうはこちらを攻撃し放題………全く、厄介ですね。」

一体、どうしたものか。


先ほどの攻撃にはかなりの力を込めた。

でも、ダメージはなかった。

だかりといって、これ以上乱雑に力を入れれば刀が折れてしまう。


「キャハッ!キャハハッ!キャハハハハッ!!!」

未だにブレードは口と大きく開けながら大声で笑っていた。

………笑っていた、か。


…そうだ!


「ニフタ君!僕に考えがあるんだけど、手伝ってくれるかい?」

「勿論ですよ!」

ニフタ君は拒否する様子も悩む様子も一切見せず、提案を受け入れてくれた。

彼とは仲良くなれそうだ。

「それで、僕は何を?」



「そうだね…簡単に言うと…負けて欲しいんだ。」


「………はい?」


—————————


「あぁ、そういうことですか…」

イスタールさんからしっかりと作戦を聞く。

成程確かに、そ(・)れ(・)ならいける。


「できるかい?ニフタ君。」

「勿論です。」


僕は即答した。僕は、もう弱くない。


「あれ?あれ?作戦会議はもう終わったの?なら、それじゃあ、殺すよ?」

腕をぶらぶらとさせながら笑みを浮かべたブレードが少しづつ近づいてくる。


「それじゃあ、頼むよ。」

「了解です。」


まずは同時に———突っ込む!


—————————

同時に駆け出した二人がブレードの左右からそれぞれ攻め入る。


「なんで?なんで?無駄なのに、おんなじこと、なんでなの?教えてよ、ねっ?」


両側から攻められたブレードの両腕に二つの刀が当たり、さらなる火花を撒き散らす。


「ニフタ君!」

「はいっ!」


イスタールが服に内側から取り出したロープを咄嗟にブレードへと括り付け腕を抑える。

そしてその隙にニフタが攻撃を仕掛ける。

「うおぉぉぉぉぉ!!!」

全力、最大の一撃。

だが、

「なに?これが、作戦なの?本当に?これで倒せるとでも思ったの?わたし、がっかりしちゃった。」

「………ゴフッ…………」

ブレードが一瞬にしてイスタールのロープをちぎり、ニフタに拳を叩きつける。

———致命傷だ


「キャハッ!キャハハハハハハハハハハハハ!!!やっぱり、あなた達って弱いのね?キャハハ!!」

ニフタが倒れる戦場に大笑いが———


「それはどうかな?」

「っ!きゃぁ!!!」


いつの間にか目の前にいたイスタールが刀を振るのではなく、突き刺す。

一体どこへ、そう。それは———


「内部は、流石に硬質化してないんだろう?」

口、だ。


反応できずに止まっている腕をするりと通り越し口元に滑り込ませる。もちろん、反応する隙などないのだが。


(これで………)

———ガキィィィン!


嫌な、金属音。

見れば、イスタールの刀は………ブレードの歯で止まっていた。


ブレードの目からは、明らかな殺意と怒りが見える。

そして、

(こんなモノでわたしを殺せるとでもおもっていたの?)

と伝えてくる熱く、不気味な視線。



だが、イスタールの作戦は………成功だ。


「………氷剣(ひょうけん)」



イスタールが何かを唱えた途端、みるみるうちにブレードが氷で覆われていく。



イスタールの刀は、栄光武器の一つであった。

その効果は単純。

物を凍らせる。それだけだ。


「悪く、思わないでくれよ。」

外側だけでもかなり凍っているのだ。内側など臓器が凍りつき酷い状態になっているのだろう。


「………!……!…」

ブレードは怒りを発散する暇もなく、氷漬けにされてしまった。


この場に残されたのは、氷漬けになったブレードと、イスタール、そして………致命傷を負わされたニフタであった。


イスタールは地面に倒れたニフタを見る。

腹に完全な拳をくらったのだ。致命傷に決まって———



「あ、終わりました?」


だが、ニフタは何事もなかったのように起き上がってきたのであった。












中途半端になってしまって申し訳ない

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