表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鏡淵の調律 外伝 サードパス開発レポート Reported by Keiko Seto  作者: ちとせ鶫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/8

第6話 Report No.06|観測記録との照合——Δs同期反応の追跡

# 外伝「サードパス開発レポート」

## Reported by Keiko Seto


記録者: 瀬戸恵子(神代重工 境界技術主任)

文書区分: 社外秘・取扱注意

備考: 如月澪 不在期間における技術記録 / 神代重工 研究開発部 第四課


     * * *


# Report No.06|観測記録との照合——Δs同期反応の追跡


〔観測ログ〕

 Δs同期反応 追跡記録 / 協力:七海岳人 / 取扱注意


     * * *


 七海岳人さんが、自発的に連絡をくれた。

 「娘のデータに何かあるなら、知っておきたい」という言い方だった。

 彼は協力的だ——そして、私が何かを隠していることに、薄々気づいている。


     * * *


## Δs同期反応 追跡記録 — DSR-LOG-006


取扱注意 / 記録: 瀬戸恵子


| 項目 | 内容 |

|------|------|

| 記録上の対象 | 七海家関係者データ(岳人への説明上の呼称)。実態については別記録参照。当該記録へのアクセスは制限済み。 |

| 観測事象 | Δs値の変動と高い相関(相関係数:0.84)を示す反応パターンが確認されている。第一次試験実施後、変動の振れ幅が1.7倍に拡大。 |

| 反応パターンの分類 | 既存の「間を歩く者」「音を通す者」のいずれにも当てはまらない。人工的に設計された境界感受性の特徴と一致する部分がある。詳細は記録できない。 |

| 試験との相関 | 第一次試験実施後に変動が加速。試験が何らかの形で当該反応を増幅させた可能性がある。 |

| 七海岳人への説明 | 「Δs値の変動と連動している。現時点では影響の性質を特定中」とのみ伝えた。 |

| 七海岳人の発言 | 「数字が増えているのは分かる。でも、娘は今、大丈夫なんですか」 |


---


> サードパス試験が境界を揺らした。

> 境界の揺らぎが、Δs同期反応を増幅させた。

> 増幅された反応が——誰かに、届いている。

>

> 私たちは「誰か」に、すでに影響を与えている。

>

> ——恵子のデータ分析メモ


     * * *


〔WARNING〕 岳人さんの問い——「娘は今、大丈夫なんですか」——に、私は答えられなかった。


     * * *


 ### 恵子の私的メモ // PERSONAL NOTE


 岳人さんが帰った後、しばらく動けなかった。


 私はこのログを「七海家関係者データ」と書いた。

 岳人さんの前では、そう呼ぶしかなかった。

 「娘のデータを見せてほしい」と来た父親に、

 「それは娘のデータではありません」とは言えない。


 言えない理由が一つではないことが、より苦しい。

 組織として言えない。技術者として言えない。

 そして——私自身の立場として、言えない何かがある。

 その「何か」の輪郭が、岳人さんと話した後でより鮮明になった。


 「反応パターンの分類」の欄に「人工的に設計された境界感受性の特徴と一致する 部分がある」と書いた。

 これ以上は書けない。書けないが——書けないことが何を意味するかを、

 このメモを後で読む誰かには、伝わってほしい。


 澪さんは、この重さをどう持っていたのか。

 知っていながら、隣にいた。

 私には、まだその持ち方が分からない。


     * * *


鏡淵の調律 — 外伝「サードパス開発レポート」

第06話 了

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ