第6話 Report No.06|観測記録との照合——Δs同期反応の追跡
# 外伝「サードパス開発レポート」
## Reported by Keiko Seto
記録者: 瀬戸恵子(神代重工 境界技術主任)
文書区分: 社外秘・取扱注意
備考: 如月澪 不在期間における技術記録 / 神代重工 研究開発部 第四課
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# Report No.06|観測記録との照合——Δs同期反応の追跡
〔観測ログ〕
Δs同期反応 追跡記録 / 協力:七海岳人 / 取扱注意
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七海岳人さんが、自発的に連絡をくれた。
「娘のデータに何かあるなら、知っておきたい」という言い方だった。
彼は協力的だ——そして、私が何かを隠していることに、薄々気づいている。
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## Δs同期反応 追跡記録 — DSR-LOG-006
取扱注意 / 記録: 瀬戸恵子
| 項目 | 内容 |
|------|------|
| 記録上の対象 | 七海家関係者データ(岳人への説明上の呼称)。実態については別記録参照。当該記録へのアクセスは制限済み。 |
| 観測事象 | Δs値の変動と高い相関(相関係数:0.84)を示す反応パターンが確認されている。第一次試験実施後、変動の振れ幅が1.7倍に拡大。 |
| 反応パターンの分類 | 既存の「間を歩く者」「音を通す者」のいずれにも当てはまらない。人工的に設計された境界感受性の特徴と一致する部分がある。詳細は記録できない。 |
| 試験との相関 | 第一次試験実施後に変動が加速。試験が何らかの形で当該反応を増幅させた可能性がある。 |
| 七海岳人への説明 | 「Δs値の変動と連動している。現時点では影響の性質を特定中」とのみ伝えた。 |
| 七海岳人の発言 | 「数字が増えているのは分かる。でも、娘は今、大丈夫なんですか」 |
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> サードパス試験が境界を揺らした。
> 境界の揺らぎが、Δs同期反応を増幅させた。
> 増幅された反応が——誰かに、届いている。
>
> 私たちは「誰か」に、すでに影響を与えている。
>
> ——恵子のデータ分析メモ
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〔WARNING〕 岳人さんの問い——「娘は今、大丈夫なんですか」——に、私は答えられなかった。
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### 恵子の私的メモ // PERSONAL NOTE
岳人さんが帰った後、しばらく動けなかった。
私はこのログを「七海家関係者データ」と書いた。
岳人さんの前では、そう呼ぶしかなかった。
「娘のデータを見せてほしい」と来た父親に、
「それは娘のデータではありません」とは言えない。
言えない理由が一つではないことが、より苦しい。
組織として言えない。技術者として言えない。
そして——私自身の立場として、言えない何かがある。
その「何か」の輪郭が、岳人さんと話した後でより鮮明になった。
「反応パターンの分類」の欄に「人工的に設計された境界感受性の特徴と一致する 部分がある」と書いた。
これ以上は書けない。書けないが——書けないことが何を意味するかを、
このメモを後で読む誰かには、伝わってほしい。
澪さんは、この重さをどう持っていたのか。
知っていながら、隣にいた。
私には、まだその持ち方が分からない。
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鏡淵の調律 — 外伝「サードパス開発レポート」
第06話 了




