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鏡淵の調律 外伝 サードパス開発レポート Reported by Keiko Seto  作者: ちとせ鶫


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第4話 Report No.04|事故報告——試験機の暴走

# 外伝「サードパス開発レポート」

## Reported by Keiko Seto


記録者: 瀬戸恵子(神代重工 境界技術主任)

文書区分: 社外秘・取扱注意

備考: 如月澪 不在期間における技術記録 / 神代重工 研究開発部 第四課


---


# Report No.04|事故報告——試験機の暴走


〔事故報告〕

事故報告書 INC-TP-001 / 記録:瀬戸恵子


     * * *


〔CRITICAL〕 試験中に境界変動が予測値の4倍に達した。試験機が制御不能となり、技術員1名が軽傷。試験は緊急停止。


     * * *


## 事故報告書 — INC-TP-001


報告者: 瀬戸恵子


| 項目 | 内容 |

|------|------|

| 発生日時 | サードパス第一次試験 開始から17分後 |

| 事象 | 試験機が「こちら側」に圧力をかけた瞬間、「向こう側」から強い引力が発生。試験機が境界方向へ引き寄せられ、制御系が過負荷でシャットダウン。 |

| Δs変動 | +0.8 → +2.1(17分間で1.3の上昇。過去記録の最大値を超えた。試験終了後も+1.4で推移中——収束していない) |

| 影の偏り | 試験室内の全員の影が、試験機の方向に向いた。光源と無関係。約40秒間継続。 |

| 負傷者 | 技術員1名(軽傷)。試験機の制御盤が過熱し、手に軽度の火傷。現在は回復。 |

| KM-0003-F | 試験と同時刻、第三保管庫の収蔵品が「動いている」との報告が複数。映像記録には何も映っていない。 |

| 瀬戸宗一への報告 | 事故直後に連絡。「分かった」の一言のみ。現場には来なかった。 |


     * * *


> これは機器の不具合ではない。

> 境界の「拒絶反応」だ。

>

> 押したら、向こうが押し返してきた——

> 陽子さんが言った通りのことが、起きた。

>

> ——恵子の事故報告への追記


     * * *


// EVENT LOG //


     * * *


 事故直後、試験室に陽子さんから連絡が来た。

 「鏡が割れましたか」という一言だった。

 割れてはいなかった——だが、曇りすぎていた。


 気になるのは、Δs値が試験終了後も収束していない点だ。

 通常、外部刺激が止まれば数値は基準値に向かって戻る。

 今回は戻っていない。+1.4で、止まっている。

 「止まっている」のか「止まっているように見える」だけなのか——

 まだ分からない。


     * * *


### 恵子の私的メモ // PERSONAL NOTE


 「影が試験機の方向に向いた」——その瞬間を、私は見ていた。

 40秒間、誰も動けなかった。

 向こうが「ある」と分かっていた。

 分かっていても、その実感を持てないでいた——その40秒間、初めて実感した。


 宗一さんは来なかった。「分かった」だけだった。

 来られない理由があるのか、来ないことを選んだのか、私には判断できない。

 ただ——「分かった」という言葉が、何を分かったのかは、聞けなかった。


 Δs値が+1.4で止まっている。

 これが何を意味するか、正式な見解をまだ出していない。

 出す前に、もう一度だけ確認したいことがある。

 この値が「試験の影響」なのか、「もともとそこにあったものが動き出した」のか。

 澪さんなら、その区別を最初に立てていたはずだ。


     * * *


≪鏡淵の調律 — 外伝「サードパス開発レポート」≫

≪第04話 了≫

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