第3話 Report No.03|会議議事録——計画の加速と対立
# 外伝「サードパス開発レポート」
## Reported by Keiko Seto
記録者: 瀬戸恵子(神代重工 境界技術主任)
文書区分: 社外秘・取扱注意
備考: 如月澪 不在期間における技術記録 / 神代重工 研究開発部 第四課
* * *
# Report No.03|会議議事録——計画の加速と対立
〔会議議事録〕
神代重工 役員会 議事録 / 記録:瀬戸恵子
* * *
## 役員会 議事録 — MTG-TP-007
参加: 役員3名、恵子、陽子(外部助言者)
| 項目 | 内容 |
|------|------|
| 議題 | サードパス計画 第一次試験の実施可否 |
| 宗一の欠席 | プロジェクトリーダーである瀬戸宗一は体調不良を理由に欠席。実質的な決定権は瀬戸恵子に委任された形となった。委任書なし。口頭のみ。 |
| 役員の主張 | 「予定通り進める。境界技術は国際的な競争領域だ。遅延は許されない」 |
| 恵子の主張 | 「Δs値が上昇している。境界の揺らぎが大きすぎる状態での試験は危険だ」 |
| 陽子の発言 | 「境界は押すものではありません。押した分だけ、向こうが押し返してきます」 |
| 決議 | 試験実施を承認。恵子の異議は議事録に記録。陽子の発言は「参考意見」として扱われた。 |
* * *
会議の場で、陽子さんは静かだった。
静かだったが——「参考意見」という扱いを聞いた後、
書類をゆっくり揃えて、立ち上がり、こう言った。
* * *
> 「御岳家も、同じことを言っていました。
> 揺らぎは管理できる、と。
> 管理できると思った家の行方は、記録が証明しています」
>
> ——それだけ言って、陽子さんは退室した。
>
> ——恵子の議事録への追記
* * *
役員の一人が、陽子さんの背中に向かって「歴史の話をされても困る」と言った。
私はそれを、議事録に書かなかった。
書かなかったことは、ここに記録しておく。
* * *
### 恵子の私的メモ // PERSONAL NOTE
宗一さんが来なかった。
「体調不良」という理由を、私は信じていない。
あの人は最近、何かを「考えることをやめた」顔をしている。
重さを手放した目——とでも言えばいいか。
正確には、重さを渡してしまった後の目だ。誰かに。どこかに。
「御岳家」という名前を、陽子さんから初めて聞いた。
後で羽鳥家の文書を調べたら、断絶の記録があった——
揺らぎを管理しようとした家。記録が途絶えた家。
私たちは今、同じことをしようとしているのかもしれない。
いや——「私たち」という括り方が、もう正しくないのかもしれない。
宗一さんは来なかった。決議を私が受け取った。
試験は明後日だ。
* * *
≪鏡淵の調律 — 外伝「サードパス開発レポート」≫
≪第03話 了≫




