第一話 カイルとエレナ3
マイケル・ロングは大斧を肩に担いだまま、ニヤリと笑った。
「ふん、二人だけでこの先の森を歩くのは危ないだろ。
俺もちょうどシルフェリアの里を通る用事がある。送ってってやるよ。」
カイルの目が一瞬で星になった。
「ほ、本当ですか!? B級冒険者さんが……!
す、すごい……! ファング、ルビィ、聞いたか!?」
エレナはまだ少し怯えた顔のまま、カイルの旅人の服の裾を握っていたが、
小さく頭を下げて「ありがとうございます……」と呟いた。
こうして、B級戦士マイケル・ロングを先頭に、
カイルとエレナの三人(+ルビィとファング)はシルフェリアの里へと歩き始めた。
道中、カイルは完全に質問攻めモードだった。
「マイケルさん! B級ってどれくらい強いんですか!?
兄ちゃん(レオン)は今Eランクだって言ってたけど、マイケルさんはもうB級なんですよね!?
大斧って重くないんですか!? 一撃でゴブリン2匹吹き飛ばしてましたよね!?
それって祝福ですか!? それともスキルですか!?
僕のファングとルビィ、強かったですか!?」
マイケルは大きな背中で笑いながら、ゆっくりと答えた。
「ははっ、元気なガキだな。
B級は……まあ、普通の冒険者よりはちょっとマシって程度だ。
大斧は重いけど、俺の祝福『剛力の戦士』のおかげで振り回せる。
お前の召喚獣は悪くなかったぞ。特にあの黒い犬は、ただのG級なのに動きが違う。
……家族の匂いがするな。特別な召喚なんだろ?」
カイルは目をキラキラさせながら、夢中で頷いた。
「はい! ファングは昔、うちの猟犬だったんです!
死んじゃったけど、僕の召喚で呼び出せるようになって……!
ルビィも可愛いでしょ!? 回復してくれるんです!」
エレナは後ろで小さく微笑みながら、
カイルがこんなに生き生きと話す姿を、珍しいもののように見つめていた。
風の祝福で周囲の木々を優しく揺らし、道を少しでも安全にしようと頑張っている。
マイケルは時折、森の奥を鋭く見回しながらも、
カイルの質問に一つ一つ丁寧に答えてくれた。
B級クエストの話、ウィンドリーフの街のギルドの雰囲気、「運試しガチャでレアが出た時の顔が最高に面白い」といったフォーチュン・ソードらしい小ネタまで。
カイルはもう、完全にマイケルを「憧れの冒険者」として見上げていた。
約1時間後——
森を抜けると、木々の家が優雅に連なるシルフェリアの里が見えてきた。
風の精霊が舞うように、鈴の音と柔らかな緑の光が村全体を包んでいる。
村の入り口で、マイケルは足を止めた。
「ここまでだ。無事に着いたな。」
カイルとエレナは同時に深く頭を下げた。
「マイケルさん、本当にありがとうございました!」
「ありがとうございます……おかげで……」
マイケルは照れくさそうに頭を掻き、
「またウィンドリーフの街に来たら、ギルドに顔を見せてくれよ。お前ら、なかなか面白いガキどもだ」
と言って、大きな背中を翻して去っていった。
二人が村の中に入ると、すぐに一人の女性が駆け寄ってきた。
美しい銀色の長い髪を風になびかせ、
耳が長く、肌が透き通るように白い、典型的なエルフの女性だった。
年齢は20代後半くらいに見えるが、エルフなので実際はもっと年上かもしれない。
柔らかな緑のローブをまとい、笑顔がとても優しい。
「エレナ! よく来てくれたわね。
……あら? こちらは?」
エレナが恥ずかしそうにカイルの後ろから顔を出しながら言った。
「カイルお兄ちゃん……。
おばさん、この子がリーフェの里のカイルだよ。
一緒に来てくれたの……」
女性は優しく微笑み、カイルに向かって軽く頭を下げた。
「初めまして。エレナの母方の叔母、リリアーナ・シルフェというわ。
エレナから話は聞いているわよ。いつもエレナを助けてくれてありがとう。
……ふふ、召喚獣も連れてきてくれたのね。
ルビィちゃん、ファングくん、よろしくね。」
リリアーナはルビィの頭を優しく撫で、ファングの鼻先に風の精霊の光を少しだけ与えてあげた。
ファングが珍しく尻尾をブンブン振る。
カイルはまだ興奮冷めやらぬ顔で、
「わあ……エルフの人、すごい綺麗……!
リリアーナさん、マイケルさんが助けてくれなかったら危なかったんです!
B級冒険者さんで、すっごく強くて……!」
リリアーナは目を細めて笑った。
「まあ、大変だったのね。
まずは家でお茶をどうぞ。
エレナの好きな蜂蜜菓子もたくさん焼いてあるわよ。」
夕陽がシルフェリアの里の木々の家を優しく染めていく。
カイルはルビィを肩に乗せ、ファングを横に連れ、
エレナと並んでリリアーナの家へと歩き始めた。
今日の冒険は、まだ終わっていない。
第一話 終わり
フォーチュン・ソード冒険者ギルド
公式説明
晶剣のラクシアにおいて、**冒険者ギルド「フォーチュン・ソード」**は世界中に張り巡らされた唯一の公認冒険者組織です。
通称「フォーチュン・ソード」または単に「フォーチュン」。
設立の背景
300年前(現代の始まり)に、魔法文明ラクシアの再建期に設立された。
目的は「誰でも気軽に冒険者になれる世界」を作ること。
「今日もクエストで飯を食う普通の冒険者」が普通に存在する社会を実現した。
六柱の神々と四つの大クリスタルの守護精霊が「祝福」を与えるようになったのとほぼ同時期に設立され、冒険者としての活動を公式に認める役割も担っている。
ギルドの特徴
明るく人情味あふれる組織。
受付のおばちゃんが異常に強い、ギルドマスターが元勇者で酒好き、クエスト報酬に「運試しガチャ」が付くなど、コミカルで日常的なノリが徹底されている。
「英雄になるため」ではなく「生活のため」「夢のため」「今日の夕飯のため」に冒険する人が大半。
村の子供でもH~G級の簡単なクエストなら受けられる(ただし保護者の許可が必要な場合が多い)
ギルドの主な機能
クエストの受注・発行
モンスター階級表(H〈無級〉~∞〈神〉)に基づいて難易度を判定。
報酬システム:基本金貨+ギルドポイント+素材+幸運判定(1d100でボーナス発生)
冒険者ランク制度
Fランク(初心者)→ E → D → C → B → A → S(最上位)
累計ギルドポイントで昇格。審査あり(幸運判定でボーナスも)。
ギルドカード
登録時に発行。祝福内容・ジョブ・討伐実績が刻印される。
カイルはまだ正式登録していないが、支所のおばちゃんは「カイルくん専用仮カード」を作ってくれている。
施設・サービス
宿泊所(安い)、武器・防具の修理、素材の買取、運試しガチャ機。
大都市の支部ではジョブクリスタル交換所や高級クエスト掲示板もある。
リーフェの里周辺での位置づけ
リーフェの里:超ローカル支所(受付のおばちゃん1人)。H~G級の小クエストばかり。
シルフェリアの里:中規模支所。F~E級まで対応。
ウィンドリーフの街:正式支所。E~D級が中心(次男レオンが所属)。
西都フォルティア:本部支部。Cランク以上が本格的に活動する一大拠点。




