旅の始まりと神殿での大騒ぎ
「3週間、お世話になりました!ありがとうございましたっ!それじゃあ…えっと、」
「いってきますだろ!」
「そうよ〜帰ってくるんでしょ?」
「いってきますっていうんだよ?」
「ヒサノリ〜いってきますはー?」
「帰ってくるならここはいってきますだな」
「いってきますだよ〜?」
「ああ、ありがとう。
じゃあ、今度こそ、いってきます!
あっ!ウィリデ様も見送りありがとうございます!」
「みんないってくるね〜!
ウィリデ様〜いってきまぁす!」
「おぅっ!いってらいっしゃい!」
「気を付けてね〜」
「フォーンも気を付けてね!」
「必ず帰ってきてね〜」
「待ってるからね〜!」
「いってらっしゃい〜い!」
「みんなありがとー!いってきまーす!」
フォーンを見てるとついつい頬が緩んでしまう…
これじゃあ傍から見たらただの変態だな…
気を付けよう。ただフォーンがかわいすぎるんだよ!!
ふうぅ、、落ち着け俺。よし。ふぅ。
「ようやく出発だねぇ、道中何があるかわからないから気を付けてね行くんだよ〜?」
「オム様!ルー様も!見送りに来て下さったんですね!ありがとうございます!」
「ヒサノリ、前にも言いましたが自分とフォーンを守るのを優先するのですよ?あまり無理をしない様に。」
「はいっ!ありがとうございます、ルー様!」
「フォーン、ヒサノリをよろしくね」
「はいっ!オムニスリィーノル様っ!」
「うんうん」
「では私から、二人の旅が良きものになるように、呪いを。」
(フワッ)
風……?と光の粉……?
キラキラと宙を舞い、俺とフォーンに降り注ぐ。
暖かくて優しい。
「ルー様、ありがとうございます!」
「ルーラシウスティイ様、ありがとうございますっ」
「では気を付けて」
「気を付けてね〜!たまに見守ってるからね〜!」
「ありがとうございます!いってきます!」
「いってきまぁす!」
「ルーラ君の呪いならきっと良い旅になるね!」
「………」
「褒めてるんだよ?」
「……ありがとうございます。
私の呪いが無くても二人の旅はきっといいものになるでしょう。呪いはあくまで呪いですからね。」
「ふふっ 二人の今後が楽しみだねっ!」
「はい、とても。」
振り返るとまだ手を振ってくれている。
それに応えて手を振り返す。
なんかいいな、こういうの。
誰かに見送ってもらえるのがこんなに心が温まる事だなんて忘れてたな。
「フォーン、落ちるなよー」
「落ちないよ〜ボク器用なんだよ〜?」
耳の近くで声が聞こえる、
フォーンは小さくなって俺の左肩に乗っている
左肩が温かい。
落ち着く温もりだ。
ウェントスの森を出てから3時間程歩いたところに村があったのだが方向的に森から来たと分かるだろうし、勝手に森に入ったと難癖つけられるのも嫌だったから『透明化』と『気配隠蔽』、『存在隠蔽』、そして『飛行』を使ってこっそり大胆に通り過ぎた。
そう、『飛行』を使って。
「はあああぁ。旅らしく歩いて移動しようと思ってたのにぃいいい。バレない為とはいえもう『飛行』使っちまったぁあああ」
「しょうが無いよー
ボクもあそこは飛行で通過するのが一番だったと思うよ〜?」
「ふぉーんんんん!」
「それに「旅らしく」って言っても旅にも色々な形があるんでしょ〜?
なら飛行使ったり旅はヒサノリらしい旅でいいんじゃないかな〜ってボク思うよ〜?」
「ふぉおんんん
ありがとうぅぅう」
「あははっヒサノリ元気だして〜!
それにいつまで空にいるつもり〜!」
「もう少しここにいる〜『結界』『板』」
(ぐでぇ)
「わかったわかった〜!
も〜元気だして〜!」
はあぁ。
『結界』は飛行型の魔物が来た時の為の防御結界
『板』は空中で休むために透明な四角い板を出したのだ。この『板』、結構優れものなのだ。
まず、空中でも地中でもどこにでも出すことが出来る。
それもその場に固定することも出来るし、そのまま移動させる事も出来る。大きさ、形、厚さなんかも自由自在。
今みたいな空中で休みたい時なんかに便利だ。
「(辞書スキル 地図 表示)」
(ブォン)
「フォーン、どこに向かう?」
「うーん、今この辺だよね、」
「そうそう、多分そこだ。
森から少し南に行った所にある村を過ぎた所だな」
「この先はしばらくさっき通り過ぎたみたいな小さい村が幾つも有るみたいだねぇ」
(ピロン)
「辞書スキルさんからでね、「小さい村ではあまり余所者は良く思われません。寄らずに通り過ぎた方が良いでしょう。」だって〜。どうする〜?」
「辞書スキルがそう言うなら通り過ぎよう、それに村に寄っても今の所ただの怪しい旅人だもんな」
「まぁね〜」
「じゃあ街に向かうか!」
「うんっ!」
「ここから一番近い街は西側にあるリーストルって街だね!次に近いのがここと王都との間に2つある街の一つのタリントっていう街でその次が東側にあるティリマっていう街だね〜」
「そうか〜う〜ん、じゃあ王都目指してみるか〜!」
「さんせいっ!ボクも王都見てみたい!」
「よし!それじゃあまずはここから王都の間にあるタリントの街だな!」
「うんっ!どんな街なんだろーね〜」
「楽しみだな!」
「うんっ!」
「じゃあ『飛行』で一気に行くか!」
「おーっ!」
「道が広くなってきたね〜」
「だな、もう少し上に行ってみるか」
「街見えるかな〜?」
「見えるといいな〜」
「あっ!」
「おっ!見えてきたな!」
「やったね!」
まだ遠いが灰色の石壁かなんかに囲まれた建物の集まりが見える。
「速度上げるぞ〜」
「は~い!っていっても『結界』のおかげで何も感じないけどね〜」
「なんだ?風に当たりたいならフォーンの結界だけ解除するか?」
「しなくていいよ!!」
「そうか?」
「今結界解除されたらボク飛んでっちゃうよ〜」
「そりゃ大変だ」
「いじわるー ブーブー」
「子ブタにジョブチェンジか?
俺としてはふわふわで柔らかい ふわふわうさぎがいいんだが…」
「あーもぅ!いつかぎゃふんと言わせてやるんだからーっ!」
「ぎゃふん」
「うわぁーん!!ヒサノリがいじわるするー
ボク泣いちゃうよ〜お!」
「はははっすまんすまん
ほら、そろそろ降りるぞー」
「………はぁい」
「ほらほら」
「わかったよぉ」
「そろそろ門だな」
「並んでるね〜」
「そうだなぁ」
「馬車や荷車用がある人と無い人を違う門で通すのは分かるけど、なんでもうひとつ誰も並ばない門があるのかなぁ」
「ああ、それは多分おっ(辞書スキル 共有)」
「ええっと、「街では必ず三つの門が有り、一つ目の門は手荷物のみ、または手荷物と移動用の動物のみの人用で、二つ目の門は馬車や荷車等、荷物検査が必要な人用です。そして三つ目の時々しか使われない門が王族や貴族、その他特権階級専用の門です。ちなみにどの門でも身分証の提示が必要で、身分証が無い場合は街毎に決められた金額を納めなくてはなりません。ですが、お金を納めれば入れるのです。しかし、王都に近付くにつれて警備が厳重になり身分証の提示が絶対になるので、身分証が無ければ入れてもらえません。そして王都では身分証を持っているのが最低条件であり、さらにある程度の身分が証明される物がないと入ることが出来ません。例えば、大店の証明がある商人、ある程度のランクや知名度のある冒険者、王都に住む者、などです。身分証もなく王都の門番に挨拶した日には不審人物としてそのまま牢屋行きですし、文句も言えませんね。あ、それと門で従魔の申告が必要です。忘れずに。」かぁ〜。あっヒサノリ!次ボクたちの番だよっ!」
「おう!」
「次!」
「はい!」
「身分証は?」
「ありません」
「この街に何の用で来た?」
えっ?えっと… (辞書スキル 高速思考)
どうしよ ?! 市に参加しに来たで大丈夫かな?
市、あるよな?市に出す物は…魔法で作った木の彫刻!いや、普通の背負い袋の中に入る大きさじゃないし不自然だよな、うーん、無難にオム様に貰った木の皿を見せればいいか。さすがに硝子に見えるプラスチック風謎金属のコップは出す訳には行かないよな…あのコップ使いやすいし馴染みがあっていいんだけど、いや、オム様なりの気遣いだったんだろうけど珍し過ぎて人が絶対に居なくて誰にも絶対に見られない所でないと使えないんだよなぁ。特に今の俺はロクな身分も、身分証すらないから変な貴族なんかに知られたら簡単に取り上げられちまう。それは絶対に阻止したいからな。まぁ隠密系の魔法とスキル全開にしてから使えばいいんだが…気楽に使えないのがなぁ………っと!門番門番!
「市に参加したいと思いまして」
「そうか、売り物は?」
「木の皿を」
「ふぅん、よし。申告することは?」
「あっはい、従魔がいます」
「従魔?どこに?」
「あっこの子です。」
フォーンよ、何故こういう時に限って俺の服の中に隠れているんだ。不審者だと思われて街に入れなかったらどうするんだ〜
「(ご、ごめんって!ボク緊張しちゃって)」
あ、感情が漏れてたか。
あれ……?
「(フォーン、念話使えるのか?)」
「(うん!からだの大きさ変える魔法と一緒にオムニスリィーノル様が付与してくれたの!)」
「(そうだったのか、便利だしよかったな。オム様にお礼言わなきゃな)」
「(うんっ!)」
「うさぎか?見掛けない魔物だな。あまり使えそうにない魔物と契約するなんて物好きな奴だな。」
「はぁ…」
「それで、従魔ギルドのギルド証は?」
「………ありません」
「はぁ、門を抜けたらそのまま真っ直ぐ歩けばすぐ右側にある。すぐに登録しに行けよ?登録したら門に知らせに来い。従魔登録されて無い魔獣をホイホイ入れる訳にもいかないからな。登録した確認をしないといけないんだ。」
「わかりました。教えて頂きありがとうございます。」
「街を出る時も従魔ギルドのギルド証と魔物を見せてから出るんだぞ〜」
「はい。」
「じゃあひとまずお前さんの手首とその魔物の模様を見せてくれ。くれぐれも魔物が暴れないように気を付けてくれよ?」
「はぁ、、」
「よし、確認出来たから次は入街料だな。
お前の分と従魔の分それぞれ1000ノルづつで2000ノルだ。」
2000ノル…大鉄貨2枚か。
街に入るのに高いのかどうかよくわかんないな。
身分証無しで入れるのを思えば安いのか…?
この後の街、どうするかなぁ…
っとはやく渡さないとな。
「お願いします。」
「たしかに。じゃあちゃんと従魔ギルド行けよ〜」
「はい。ありがとうございました」
「おうよ!……次!」
門番さんも大変だねぇ
それにしてもフォーンの事を役に立たそうで物好きだなんて!かわいくてふわふわなんだ、十分意味はある!
「(ありがとう、ヒサノリ。でも事実だし…)」
「(そんなこと気にするな。それにフォーンは弱くないだろ?ってか俺より強いんだ。頼りにしてるよ。)」
「(でも人前だとただのうさぎを装うには変だからってあんまり戦力になんないもん)」
「(いや、フォーンが居ると心強いし助かってる。それに本当に俺が危なくなったらきっと助けてくれるんだろ?)」
「(ま、まぁそうだけど)」
「(だろ?気にすんな!まぁ危なくならないようには気を付けるけどな。
それにフォーンの身を守る為にも人目につく所でフォーンには普通のうさぎを装って貰わないといけないからな、肩身の狭い思いをさせてしまってごめんな。せっかく一緒に来てくれたのに)」
「(肩身が狭いなんてそんなことない!
ボクはヒサノリと一緒にいられればそれでいいんだし、まだ始めたばっかだけど旅も楽しいよ?)」
「(そうか、よかった。ありがとうフォーン。)」
「(こちらこそありがとうだよ、ヒサノリ!)」
「(あはは、これじゃあキリがないな。)」
(ピロン)
「(ん…?(辞書スキル 共有)なになに?「従魔が居ると言う事は、従魔術が使えるということになります。従魔術はスキルですが、いくつかの条件を満たしていないと習得出来ません。その条件の中に、ある程度の魔物の知識、魔物との信頼関係 という条件が有りこれを満たすのが難しい為従魔術が使える者がとても少なく、貴重な職業とされています。また、契約出来る魔物の数も術士の技量次第ですが多くても二匹が限界とされています。
そして、そもそも聖獣を従魔とする事は出来ません。普通は。」……だそうです。だからあの門番は物好きだなんて言ったのか。まぁ俺にとってはフォーンは大事な存在だけどな)」
「(えへへっありがとうヒサノリ!)」
「(お互い様だろ?じゃあ従魔ギルドに行くか)」
「(うんっ!)」
「(従魔ギルドでまたなんか言われても気にすんなよ?)」
「(わかった!)」
「(よし、、おっあの建物だな。)」
「(ほんとにすぐ近くだったね〜)」
「(あぁ)」
白とグレーの石材で作られたその建物は、フォーンの言うように門のすぐ近くにあった。
まぁ俺の様な登録してないヤツの対応や門の外で知らない魔物が出た時の対応にはちょうど良い場所だな。
さて、さっそく入ってみるか。
扉が開いであるのでそのまま入る。
目の前にカウンターがあるが誰も居ない。
おい、大丈夫か、従魔ギルド。
「あのぅ!すみません!どなたかいらっしゃいますか?」
……?
「お待たせ致しました。タリント支部のギルドマスターをしております、セルスと申します。」
足音がしなかったぞ…
おっと、
「ご丁寧にありがとうございます。
私、ヒサノリと申します。本日は門番の方にギルドで登録するよう言われて伺ったのですが…?」
「おぉ、登録の方ですか!ありがたい!
さっそく登録と参りましょうか。」
「はい、よろしくお願いします。」
「ではまず、こちらの登録用紙にお名前と従魔の種族をお書き下さい。他の欄はこちらで記入しますのでお気に為さらずに。」
「わかりました。」
名前は、ヒサノリっと。フォーンの種族?
ちなみに、門に並ぶ前にフォーンに辞書スキルで擬態をかけておいた。これでうさぎの魔物に見えて、鑑定してもうさぎ魔物の情報が出るはずだ。
鑑定
フォレストラビット (偽装)
オス
偽装って出てるやん!
おっと思わずエセ関西弁が出てしまった…
(ピロン)
ん?なになに、偽装をかけた本人だから偽装と表示されたのか!他の人には偽装の文字は出てこないと!なるほどね
じゃあフォーンの種族はフォレストラビットっと。
「お願いします」
「はい、ありがとうございます。
ほぉ、フォレストラビットですが、この辺りでは珍しいですねぇ」
「…そうなんですか?それなら私は運が良かったのですね」
「ウェントスの森の辺りといったところでしょうか? おっと失礼致しました。魔物の事となると目が無くて…詮索するような真似をしてしまいすみませんでした。」
「いえ、お気になさらず」
「ありがとうございます、それではこの登録用紙にヒサノリ様の血を1滴と、手首の模様をかざして下さい。」
そう言って針と登録用紙を渡される。
登録用紙から強い魔力を感じる。
仕掛けのある紙なんだな。そりゃ当然か。
登録用紙に血を垂らし、手首の模様をかざす。
すると登録用紙が三枚に複製され、そのうち一枚が小さい金属製?のカードになった。
「これで登録は完了となります。
登録用紙の一枚はヒサノリ様で保管なさってください。もう一枚はギルドでの保管となります。必要になる事は殆どありませんがよろしくお願い致します。
ギルド証の方は街や村に入る際、出る際に従魔と共に提示して下さい。
また、当ギルドのギルド証は身分証とはなりませんのでお気をつけ下さい。あくまでも従魔の管理証明書のようなものですので。」
くっ…そうなのか…でもそうだよな。
従魔ギルドははっきり言って従魔を登録するだけのギルドだ。何の実績も無く、人柄も分からない様なヤツの保証なんて出来ないもんな。
うーん、どうするか。とりあえずギルドを出るか。
「わかりました。登録ありがとうございました。」
「こちらこそありがとうございました。」
そのままギルドを出て門に向かう。
と言ってもすぐそこだが。
門に近付くと、さっきの門番がこちらに手を振っていた。
「こっちだ!」
休憩なのか俺を待っていたのか…後者のようだな
「ちゃんと来てくれてよかったよ こっちに来てくれ」
きっと俺の次の人の審査をしてからずっと俺の事を監視していたのだろう。まぁやましい所は…あんまり無い。フォーンの種族偽ったり街に来た理由適当に言ったりしたが…まぁそれくらいよくある事だろう。うん。俺は連れているのがうさぎだからこれでも緩い方だったんだろうな。まぁ泳がされていたとも言えるが。熊とかだったら門にも近付け無かっただろうな。街に入れてもきっと周りを武装した門番さん達に囲まれて従魔ギルドに行くことになったんだろうなぁ。さすが街を守る門番さんだ。抜け目ない。
門の横にある屯所に案内される。
「ギルド証を出してくれ」
もちろん素直に出すさ、門番さんに目をつけられたくないし隠す理由もない。
「お願いします」
「あぁ」
従魔ギルドのギルド証は、金属っぽいもので出来たシルバーのクレジットカードそっくりなものだ。但し縦向きだが。そのおもて面に従魔ギルドのギルドマークと俺の名前、従魔の種族、そして俺たちの模様が彫られて?いる。カードから僅かに浮き出ているのだ。そして裏面はまっさらのツルツルだ。おもて面に浮き出た分凹んである訳でもない。謎仕様だ。まぁそもそも紙が一瞬で金属になったんだしな。さすが異世界。これもこの世界ならではの技術が発達していった証、というか結果なんだろうなぁ。そう思うと感慨深いものがある。
「終わったぞ、ちゃんと確認が取れた。わざわざ済まなかったな。」
確認…?この数分で従魔ギルドに確認を取ったということか…?すごいな。いや、門ではもっと短時間で済まさなきゃならないんだろうなぁ。便利な魔道具でもあるのかねぇ。まぁ、あるか。
そうじゃないと門番さんの数が恐ろしい事になる
「いえ、ありがとうございました」
「おう、皿、売れるといいな」
良い人じゃないか!これじゃあまるで俺が悪者みたいじゃないか!…あれ?でもやってる事は…
いや、深く考えるのはやめよう。うん。そうしよう。
「はいっありがとうございます!」
くっ心が痛いぞ…
20歳の若者笑顔で乗り切った。ふぅなかなかにしんどいな。
とりあえず腹も減ったし屋台で何か買うか。
うーん、あの串焼きがいいな。あとあそこのドライフルーツと木の実のツマミもいいな。ドライフルーツや木の実ならフォーンも一緒に食べられるだろう。よし、決まりだ。
「串焼き2本下さい」
「はいよっ2本で600ノルだよ!」
「これで」
鉄貨を6枚渡す
「たしかにっ!熱いうちに食べてくれよっ!」
「ありがとう」
「おうよっ」
ドライフルーツと木の実のツマミも買ったのでとりあえずギルドが集まる通りの広場にベンチがあるのでそこで食べることにした。
「これならフォーンも食べれるだろ?」
「うん!美味しそうなドライフルーツだなって思ってたんだ〜」
モグモグ
「うんっ!美味しいよっ!森には無いフルーツだね!なんだろう?」
「どれ…たしかに美味いな。鑑定」
鑑定
パンゴーのドライフルーツ
南方で採れるフルーツを使ったドライフルーツ。
「パンゴーだって」
「へぇ〜パンゴーかぁこれから南にいくからもっといろんなドライフルーツがありそうで楽しみだね〜」
「ああ、楽しみだ」
串焼きもボリュームがあって美味かったが、フォーンと食べたドライフルーツの方が美味く感じた。
身分証、どうするかなぁ
冒険者ギルドが手っ取り早いんだろうけど…
ちょくちょく依頼?を受けなきゃだろうから旅してる俺には不向きだ。それにそれなりの実績が無いと王都には入れない。力を示して実績と認められたとしても面倒事と厄介事が着いてるかのは目に見えている。下手に期待されるのも困るが、規則やら責任やらに縛られてこき使われるのはもっと嫌だ。どうしたもんか…
とりあえず、
「(辞書スキル 冒険者ギルド)」
あぁ、ちなみにフォーンはドライフルーツをたんまりと食って俺の膝の上で爆睡している。
仰向けになって腹を見せて寝ている様子は野性味を一切感じさせない。ヲイ、お主それで良いのか
まぁ俺を信頼して安心して眠っていると思えば悪い気はしないが、少し心配になってくる。
まぁいいか。
それで辞書スキルさんは何と?
冒険者ギルドは主に魔物の討伐や依頼人の護衛、ダンジョン攻略を取り纏め斡旋する国から独立した世界共通の組織であり街は勿論、町やある程度の大きさの村にまで支部を置き、その規模は商人ギルドをも凌ぐとも言われています。
ランクはGランクFランクEランクDランクCランクBランクAランクSランクSSランクSSSランクと上がっていきますが、SSSランクは今までいた事がありません。また、現在SSランクの冒険者が一名おりますが、ギルド本部のあるウーノーラ大陸に居る為、ウルグスト大陸にはおりません。従ってこの大陸での最高ランクはSランクとなりますが、この大陸にいるSランク13人中8人はそれぞれの国で名誉貴族という当代限りの爵位を貰いその国の専属という形になっています。安定した、安全な暮らしを求めるものや、そもそも貴族に取り立てられる為に冒険者になったという者が殆どです。残りの5人は縛られるのを嫌い大陸中を彷徨っています。因みに、5人全員がソロで活動しています。
余程名前が売れていない限りはギルド証のみで王都に入れるのはCランクからとなっています。
Cランクになるまで、最短でも3年は掛かります。ですが、ギルド登録試験の際に高い戦闘力や専門能力を認められた場合、最高でDランクから始める事も出来ます。しかしそれはよっぽどの力を示さない限りそれこそAランク相当の力を示さない限りは叶いません。良くてDランクスタートです。なのでそれだけの、Aランク相当の力を示しておきながらもDランクという身を護るのには低過ぎるランクから、厄介事を多く呼び込み今までDランクからのスタートが良い結果をもたらしたのは極小数です。
Sランクは勿論、Aランクもそれぞれの国に重用されています。
国から独立した組織とは謳っていますが、その支部のある領主からスタンピードの際などに緊急依頼が出されるとその支部にいるDランク以上は全員強制でその依頼に参加しなくてはいけません。また、街を移る度に必ずそのギルド支部に街に入った事、出る事を報告し、登録しなくてはなりません。門でも確認がされギルドにも通知が行くので絶対なのです。なので街や支部のある所に行けば誰が何処に居るかも丸分かりですし、Dランク以上の人は緊急依頼の際にこっそり逃げたり抜け出す事も出来ません。例え絶対に勝てないようなレベル差のある魔物が相手でも、街の人々がとっくに全員逃げ出していたとしても、その日の食事の為に冒険者をしている人だとしてもです。基本低ランクではロクな収入がありません。なのでどうしても上のランクに上がらざるを得ないのです。すると緊急依頼が出されれば、思い入れの無い、住民が誰も居ない街でも命を掛けて圧倒的なレベル差の相手に挑まなくてはならないのです。冒険者は自由のある職業だとは言われていますが、あまり自由とは言えません。低ランクのうちは収入もままなりませんし、三週間に一回は必ず依頼を受けなけれなりません。高ランクになるとややこしい依頼を月に幾つか必ずこなさなければなりません。
その代わり高ランクになると国境審査をパス出来る権利が貰えます。それも他国へ依頼へ行くために与えられた権利ですが。
とまぁ自由とは程遠い生活になりますが、ギルドの制度に頼って日銭を稼いでいるので持ちつ持たれつの関係ということになるのです。
それ聞いたら絶対に冒険者ギルド嫌なんだけど、まぁそんな感じだとは思ってたけども…
でもお金は稼がなきゃいかんからなぁ
今はオム様が持たせてくれたお金があるから良いけど、無限でもないしなぁ
それに貯金だってしておきたい。
よし、じゃあ
「(辞書スキル 他の稼ぎ方)」
冒険者ギルドに登録したら討伐した際の素材は全て冒険者ギルドに下ろさなくてはいけません。
また、それが嫌だと思っても一度登録したら、ギルド側から除名処分されない限り自分から脱退することは出来ません。なので腕っぷしでものを言う人達は皆さん冒険者ギルドに素材を下ろします。その下ろされた素材を冒険者ギルドが商人ギルド、鍛治ギルド、革加工ギルド、木工ギルド、薬師ギルド…といった様々なギルドに販売します。ここで重要なのは、腕っぷしに自身のある人は99.99%、冒険者ギルドに所属しているという事です。それが手っ取り早いからです。見事なすみ分けですね。おかげで他のギルドは魔物やダンジョンのは素材ほぼ全て冒険者ギルドからの購入になります。なので冒険者ギルドに所属していない者が直接各ギルドに素材を下ろせば、冒険者が冒険者ギルドに下ろすより高い価格で買い取ってくれるはずです。それも腕の良い者が討伐したのならとても綺麗な状態の素材であり、それを安く手に入れることが出来るのですよ?そりゃあ色だってたんまりと付けてくれるでしょう。その相手と良い関係を築きたいでしょうからね。
勿論、冒険者ギルドがそれに気付けば難癖を付けてくるかも知れませんが、冒険者ギルドのギルド員で無いのなら関係有りませんし、他のギルドに圧力を掛けたとしても、冒険者ギルドの評価や評判が下がるだけの事です。
なのでその方法を使えば、資金面は心配要らないでしょう。しかし、それだと身分証が手に入りません。ですがだからといって冒険者ギルドへの登録はおすすめしません。
よしっ!資金面はそれで行こう!王都は物価も高いだろうしオム様が持たせてくれたお金はあまり使いたくないし貯金しておきたい。
しかし身分証かぁ〜だから冒険者ギルドは人気なのかぁ。納得だわ
どうすっかなぁ〜
「(話は聞かせてもらったよっ!神殿に行ってごらんっ!神殿神殿っ!)」
オム様…?神殿?とりあえず行ってみるか
フォーンを抱いて、忘れ物ないな?よし、どこだ神殿。
周りを見渡しそれっぽい建物を探す。
あれか…?通りを進んだ突き当たりに真っ白な三角屋根の建物がある。
「(そうっ!その建物だよっ!)」
おお、オム様、さんきゅーです
よし、それじゃあ行くかっ
意外と神殿まで遠い。神殿が大きいのか。
この通りはこの街の大通りといった雰囲気で賑わいをみせている。左右どちらにも様々なギルド、店舗があり奥様方が楽しそうに値引きをなさっている。平和な光景だ。いや、値引きされる店主はたまったもんじゃ無いんだろうなぁ南無…
おっそろそろ神殿につ……く……?えっ?
神殿の前に神殿の人達と思われる綺麗な白い服を着た人達が並んでいる?えっ?
こんなとこ入れないよ……
あれ?みんなきょろきょろしてる……?
見るからにかなり上の立場であろう人まで居る気がする
思わず神殿の前で立ち止まり後ずさってしまう
どうすりゃいいんだ…
ん?あの偉そうな立場っぽい人と目があった
そりゃあもうばっちりと。
するとその人は膝から崩れ落ち……?!
崩れ落ちたっ!!
えっ!どうしよ!とにかく近くに!
そのまま祈り始めた。………祈り始めたっ?!
誰に?!
振り返るが誰も居ない。
えっ俺に?!
なんで?!
…………!
オム様か、オム様だな。オム様が何かしたんだ。ルー様は?!オム様の暴走?!
俺の事をなんて言ったんだ?!
使徒……はキリスト教の12人の高弟だよな…?
御使いも………キリスト教だよな?
考えてるうちにあっという間に周りを囲まれ神殿に半強制的に入らされた。
そうこうしているうちに神殿の中央にある大きな礼拝堂らしき場所に追いやられていた。
そこには……
「オム様……?」
姿はないがオム様の気配と、オム様の纏う神聖な空気が広がっている
「やぁヒサノリ、旅はどうだい?今のところ順調なようだけど」
「オム様のおかげで楽しく過ごせていますっ
ありがとうございます。あっ!あとフォーンの念話、ありがとうございました!とっても便利で助かっています。」
「そっかぁそれはよかった!」
「はいっありがとうございます!」
「そんな事気にしないでよ〜」
「はははハッ………オ、オム様………」
「ん?なんだい?…………あっ」
今日の朝別れたばかりだが、知らない人だらけの街で思いがけずオム様の気配をはっきりと感じたことで気が緩んでしまった
オム様だも一応最初こそ威厳を気にしながら話していたが俺の緩みきった気持ちが伝染したのかオム様までいつもの口調になってしまっていた
それもオム様達神さまを崇拝する人達の前で……
やっちまった
今オム様が実体で目の前にいたらきっとあの白銀で淡い七色に輝く美しい目を見開いて点にしていた事だろう。
そぅ、オム様の目って言葉では言い表せないほど美しいんだよな、これまた白銀のまつ毛も長くて淡い虹色にうっすらと時々輝くのを見ると……ってまぁ目だけでなくオム様自身が、なのだが。
どうしようか、
というかどうすればいいんだオム様?!
皆さん蹲って涙を流していらっしゃるのだが……
「ゔぉっほん!ぅううん、んん」
わ、わざとらし過ぎますよオム様っ!!
「と、言うことで ………
我、クウァエダムパトリアの創造主であり主神、オムニスリィーノルの名において彼、ヒサノリ サナダ を、我を導きし者である事をここに宣言す」
「ぇっ」
「今後そのような対応を。」
このオム様の神聖な空気に満ちた神殿で神様らしい荘厳な声の元に宣言がされ、終わると共にオム様の気配も消えていった
オム様、俺はどうすればいいんだ、
置いてかないでくれ
「(ヒサノリごめんね〜!これで身分証は心配無いよっ!あと、クウァエダムパトリア中の神殿とそれに付随する施設、それにそこに勤める者と各国の王や女王、皇帝なんかにも今の聞かせたから、安心してねっ!良い旅をっ!あ、あとごめんね、国王とかの申し出とかは断っても良いんだけど、旅の途中で寄った街の神殿に顔を出して貰えないかな?あっ、みんなヒサノリの顔とかは知らないから、普段は普通に生活出来るから安心してね!神殿の子達にも街で見かけても気付かなかった振りをするように言ってあるから!じゃあよろしくね!フォーンにもよろしく伝えて!じゃあね〜)」
慌ただし人だ。いや、神だ。
そういえばフォーンまだ寝てるよ、
つついてやるっ!
起きないなぁ
むにゃむにゃ言ってるよ…
今夜は俺もぐっすり眠れそうだ。
今日もフォーンにくっ付いて寝よう
あ、宿。
どこにあるんだろ?大通りじゃ見かけ無かったなぁ…
旅をするって決めた以上野宿なんかは覚悟してたし別に嫌じゃ無いんだが、今日はちゃんとしたベッドで眠りたい
はあぁ疲れたなぁ
それで、つまり何だっけ、
俺の身分証の為に今回の宣言を世界中にしたと。
但し、それは神殿と王、皇帝なんかのトップ本人だけだから、日常生活には影響無いよ。だから良い旅をね。それで、旅の途中で寄った街で神殿に寄って欲しいな、顔バレはするけど、そのまま街に滞在しても神殿の人達は俺を見掛けても見なかったフリするから安心してね、王の申し出は無視していいよ、と。
まぁありがたいな、やることが大きすぎてびっくりだけど。
ルー様に怒られないといいけど。
さて、それでこの神殿の人達はどうすればいいんだ?
「あの、」
「「「「「「「はっ」」」」」」」
「えぇと、普通にお願いします。それで私はどうすれば?」
「ご自由に振舞って下さって構いません。この神殿はヒサノリ様の家だと思ってお使い下さい。」
「はぁ、」
「それと、こちらの腕輪をお渡しする様にとオムニスリィーノル様からお預かり致しております。
こちらの腕輪はオムニスリィーノル様の神力が込められており、ヒサノリ様以外は着けられないそうです。また、ヒサノリ様が神殿の近くにいらっしゃると、腕輪を通して我々はお越しいただいたことを察知することが出来ます。ですのでいつも身に付けて頂けるのが一番かと。」
そう言って差し出された腕輪は細く邪魔にならないデザインで、白銀色の謎金属で作られていた。表面はまるで陶器のように滑らかで美しい。そして神々しい、堂々とした存在感を醸し出している。
オム様らしいデザインだ。
早速左手に着けてみる
あぁ、オム様だ。オム様の気配がはっきりと腕輪から伝わってくる。おぉ!
そして今度はネックレス?ペンダント?を持ってきた
これが神殿の身分証らしい。
細く、それでいて細く刻まれているチェーンの真ん中には、 何処と無く、従魔術の模様に似た、細かいレースのような模様のまるいそれ。白を基調として所々に金色があしらってあり、立派な芸術作品である。
このネックレス?ペンダント?も本人を登録、認証する機能があり、身に付けてられるのは登録された本人だけだそうだ。
そして俺の登録はもう済んでいるそうだ。
いつの間に…
差し出されたネックレス?ペンダント?を首から下げてから服の中に仕舞う。こんなの見せびらかしていたら襲って下さいと言っているようなもんだからなぁ
そして今度はこれまた
白を基調として金の装飾が施された、今度はハガキそっくりな大きさと厚みの板、が目の前に運ばれて来た。なんでもこれが神殿の基本的な身分証らしい。装飾、大きさによって身分を分かりやすくしているそうだ。言わずともがな、俺に用意された身分証は一番大きくて一番装飾がなされているものだそうだ。基本の大きさは従魔ギルドのギルド証と同じ、クレジットカードと同じサイズだそうだ。
余談だが、冒険者ギルドや商人ギルドでは大きさや装飾ではなく、色、つまり素材で分かりやすくしているそうだ。なので大きさや装飾、というのは神殿独自だそうだ。
それで、その身分証には、
『とある高貴なお方が、見聞を広げるためにお忍びで旅をしていて、その方は神殿の最重要賓客でもあるので丁重に対応願いたい。この身分証の大きさ、装飾を見ればどれ程のお方か分かるだろう。余計な詮索は一切禁止とし、この事実を他言する事は控えられるように。何かあった場合の責任はそちらに全て取っていただくこととなるのでくれぐれも軽率な真似は為さら無いように。』
という内容が難しくして書いてあった。
この身分証があれば王都の王族、貴族専用の門もすいすい通れるそうだ。
なにそれっ!物凄くありがたい!!
オム様……感謝します……ありがとうございます
それから直ぐに話は終わり、帰るついでにおすすめの宿を聞いたら ぜひ神殿に! となってしまい、神殿に泊まることとなった。
まぁもぅ宿を探す体力も無いしありがたい申し出だった
身に付けているオム様からもらったローブと革鎧を脱いでそれらに『洗浄』をかける。
そして俺自身と、フォーンにも『洗浄』をかけてそのままベッドに沈み込んだ。
「オムニスリィーノル様……?
あなた、今度は何をしてきたのですか?!
ほんの少し目を離した隙に……」
「い、いやねぇ、ヒサノリが身分証が無い〜って困っていたからねぇ、自由に旅をしたいっていうヒサノリにとって冒険者ギルドだとしがらみになっちゃうから……その……ちょっと手を貸しただけだよ?」
「はぁああああ。仰りたいことは分かります。ですが何故、何故一言私に伝えて下さらなかったのですか!
あなたの降臨は三百年ぶりなのですよ?!
それに我々は大きな儀式のときに誰か一神が降臨するだけなのですよ?
それなのに、それなのにあなたは〜〜っ!」
「ご、ごめんね?」
「いえ、私もあなたの神殿に頼って身分証を得るという選択はよかったと思っています。しかし、しかしです!」
「ごめんねって」
「それに宣言まですれば…………」
「いやそれは…………!」
神界は、今日も平和でした。




