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13.オッケーの時は尾を振ろう

「もうすぐ街道に出るぞ」


 コカコ村を出発してから2時間弱、特に魔物や野犬の襲来もなく整備された路に辿り着いた。


 午前中の長閑な荒野の散策気分で歩いてきたから、はっきり言って拍子抜けだよ。命の危険性なんてどこにもないじゃないか。これなら少し長めの散歩だよ。


 振り替えれば朧気にコカコ村も臨める。街道は遥か遠く地平線の先まで伸びるような長いものだ。見渡すと、森や山に集落らしき場所も点在しているようだ。


「どうする、ハストランに一旦戻るか」

「うん、そうしよう。お昼食べて、お風呂にも浸かりたい」

「賛成だな」


 ハストランというのはコカコ村から一番近隣の町で規模もコカコ村より大きな町だ。繊維業が盛んらしく、村に安く良質な衣服を卸してくれてもいるみたいだ。


 交流はあるみたいだけど、商人や村長など役人は往き来するくらいで、コカコ村の住人はほとんど村で自給自足で生活物資を賄えるから滅多に村の外へ出ないらしい。


「どうだ、初めての旅は。意外と普通だろ」


うん。興醒めって程じゃないけどさ。


「あんたんとこの村は自治もしっかりしてるし平和でいいんだけど、少し閉鎖的っていうのかな。少し余所者を拒んでるって言うか。娯楽に乏しいって言うか」


 外から来た人にはそう映るのかな。暮らしやすい村だと思うけど。


「平和に越したことはない。辺境の村としては珍しい程非常に優良な村だ」

「飯もまずまずだしな」


 コカコ村は辺境の村か。


 村の安全は村の門兵が厳しく守っているのはそうだとしても、オレはマズマが一役買ってると睨む。多分マズマは時に村の外敵の驚異から、本当の守り神として立ち向かってると思うんだ。でなきゃ木の外壁柵しかない村で安全に暮らせないよ。オレだって簡単に柵を飛び越えられるんだもん。


「よし。ハストランのギルドで報酬貰って、それから王都を目指すか」

「イエッサー、リーダー」

「サーとリーダーは同意だ、ナノ。俺も了解だ」


 ナノはガンクに笑顔で敬礼のポーズで、イルマはニヒルな微笑を口元に刻む。


「お前もそれでいいよな、チビ」


 オレは尾を振って、同意を示す。


 村を出てからのやり取りの中で、意志疎通に関する取り決めがあった。


「お前は人間の話す言葉は大体が分かるんだっけ」


 オレは頷く。


「でも、当たり前だけど話せない、よな? 本当は人語を話せるけど誤魔化してるとかだったり?」

「うそ? 喋るねこちゃん超ファンタジーで素敵。話して喋って」


 いや、話せないって。


 ぶんぶん顔を振る。立ち止まり諦めきれないのか、ナノがオレの顔を手で包み込みじーーっ、と見てくるから怖かったよ。


 オレは首を捻って逃げ、降参の意を示そうと地面に腹を顕に見せて転がった。仲間だからな。


「どうやら話すのは無理か。俺も少しだけ期待してたけど」

「残念だわ」


 えぇ。そんなにがっかりしなくても。他のねこと比べてもこれ程人間の話す言葉を分かるねこはいないからね。天才ねこだとも呼ばれたこともあるくらいなんだからね。


「話せないのは分かったけど、{肯定}や{否定}とかの仕草を決めた方が一緒に行動するのに便利だよな」

「動物に必要以上に求めるのは酷な話だ。気紛れなねこに団体行動も困難だ。そもそも話の分かるねこがいる時点で異質だ」

「イルマは黙ってろよ。身勝手な奴が今更増えても大して変わんねーって。

 それに、こいつ利口だぜ。俺達よりも、もしかしたら頭良いかもな」


 あ、イルマ今鼻で笑ったぞ。本当に失礼極まりない奴だ。


「よし、{肯定}の時は{にゃーん}、{否定}の時は{にゃんにゃーん}て2回鳴くってのはどうだ」


 何それ面倒臭い。オレは試しに{にゃんにゃーん}と鳴いてみた。


「ヤダってよ。どうすっかな」

「尻尾を振るのはどうかな。可愛いいし。{分かった、オッケー}って時は尻尾をくるくる回すの」


 出来るかな。オレは尻尾を回転させる。普段やり慣れてないからなかなか難しいな。それに犬みたいではしたないから印象悪いな。


「お、{オッケー}って言ってるぞ。決まりだな」

「カワイイ」


 オレはナノに抱き締め上げられながら頬擦りされた。なんか勝手に決まっちゃったけど、うーん。


 意外と悪い気分はしないかも。


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