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後日談

 理由を聞かれることがあるけど、だいたい困る。

説明するほどのことじゃないし、説明したところで伝わらない。

ただ、ちゃんと見ればわかることだと思っている。


 最初に見たとき、整っていなかった。

暗い部屋で、光も足りていなくて、角度も中途半端で、視線も合っていない。

いわゆる“かわいい”とは少しずれていた。

でも、そのずれ方がよかった。

無理に寄せていない。

まだ届いていないだけで、形はもうそこにあった。


 私は、完成しているものには興味がない。

整っているだけのものは、どこを触っても変わらないから。

変化しないものは、見なくてもいい。

スクロールしていれば十分で、止める理由がない。


 でも、あれは違った。

少し触れば、ちゃんと寄ってくる形をしていた。

そういうのは、見ればわかる。

どこに余白があって、どこが動くか。逆に、どこは動かさない方がいいかも。


 ああいうのは、放っておくと変な方向にいくことがある。

周りの言葉に引っ張られて、余計なものを足してしまう。

そうなると、崩れ方が濁る。輪郭が曖昧になる。

それはあまりきれいじゃない。


 だから、少しだけ触った。

強くする必要はない。方向だけでいい。

言葉は短い方がいいし、重くしない方が残る。

考えなくても入ってくるものがちょうどいい。


『かわいいね』

それだけで十分だった。

予想通り、反応はすぐに出た。

大きくは変わらないけど、確実に寄る。

角度が少し変わって、光の使い方が変わって、表情の抜き方が整っていく。

過剰にならない範囲で、ちゃんと動く。

その過程を見るのは、嫌いじゃない。


 たまに、触る位置を間違えそうになることもある。

強くしすぎると、崩れる。弱すぎると、残らない。

その間にある位置は、だいたい決まっている。

そこに置けば、あとは勝手に進む。


 対面したときも同じだった。

余計な部分はあったけど、問題ない範囲だった。

切り分ければいいだけだと思った。

全部を残す必要はない。必要な形だけが残れば、それで成立する。


 「普通かな」と言ったのは、そういう意味だ。

あのままだと、混ざる。余計なものが残る。

だから、分けた。


「ユナは、いいと思う」

あのときはもう、ほとんど見えていた。

驚きはなかった。予定通りという感じに近い。

途中で揺れることもあったけど、それも想定の範囲だった。

揺れは悪くない。

むしろ、きれいに整うために必要なこともある。


 最終的にどうなるかは、最初の段階でだいたい決まっている。

あとは、そこに余計な歪みが入らないようにするだけだと思っている。

自分がやったことは、そんなに多くない。

少しだけ、ずれを直しただけだ。

それでも、ちゃんとそうなる。


 前にも同じことがあった。

そのときも、似たような形をしていた。

少し触れて、あとは勝手に整った。

だから今回も同じようにやっただけだ。特別なことはしていない。


 選んだ理由をあえて言うなら、あれが一番、きれいに整いそうだったからだと思う。

それだけで十分だったし、それ以上の理由は必要ない。

ちゃんと見れば、誰でもわかることだと思う。


 最後に触れたのも、同じ理由だ。

あの時点で、形はほとんど整っていた。

外から見れば、もう完成していると言ってもよかったと思う。

でも、見た目だけだと足りないことがある。

輪郭が合っていても、反応がずれていると、どこかに違和感が残る。


だから、確かめる必要があった。


 拒むかどうかじゃない。そういう問題じゃない。

触れたときに、どこにも引っかからないかどうか。

それだけ見ればよかった。


 少しだけ近づいて、触れた。

時間は短くていい。強さもいらない。

ただ、ずれがないかを確認するだけ。

離れたあと、違和感はなかった。

余計な抵抗も、迷いもなかった。

そのまま、きれいに繋がっていた。

あれで十分だと思った。あとは、何もしなくていい。


 ――ちゃんと、私の作品は完成したから


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