第41話 禁書庫の扉
宰相グラディウスが逃げ出したあと、
王城の廊下には緊張が走っていた。
エレナが剣を構えたまま叫ぶ。
「どこへ逃げたの!?
この先は行き止まりよ!」
ガルド教官も周囲を見渡す。
「隠し通路でもあるのか……?」
だがユウマは、
宰相の“逃げ方”を見て、すぐに気づいた。
(宰相は“迷いなく”走った。
つまり――
逃走経路は“前から決めていた”)
ユウマは廊下の壁を見つめた。
壁には古い装飾が施され、
その一部だけが“わずかに色が違う”。
ユウマは指で触れた。
(ここだけ……
埃の積もり方が違う)
カリナがユウマの横に立つ。
「ユウマ……
何か気づいたのですね」
ユウマは頷いた。
「宰相は“隠し扉”を使いました。
この壁の裏に通路があります」
エレナが驚く。
「そんな……
どうして分かるの?」
ユウマは壁を軽く叩いた。
「音が違います。
ここだけ“空洞”になっている」
ガルドが目を見開く。
「お前……本当にスキルなしなのか?」
ユウマは苦笑した。
「ただの観察です」
ユウマは壁の装飾を押し込んだ。
すると――
ゴゴゴゴ……
壁が横にスライドし、
暗い階段が現れた。
エレナが息を呑む。
「本当に……隠し通路……!」
カリナは静かに言った。
「この先は……
“禁書庫”です」
ユウマは驚いた。
「禁書庫……?」
カリナは頷いた。
「王国が“光と影の歴史”を隠すために作った場所。
王族と宰相しか入れません」
ガルドが眉をひそめる。
「そんな場所に宰相が逃げたってことは……
何か隠してるってことか」
ユウマは階段を見つめた。
(宰相は“鍵の本当の役割”を知っている。
その証拠が禁書庫にある)
ユウマは言った。
「追いましょう。
宰相は“証拠を消す”つもりです」
エレナが頷く。
「行こう、ユウマ!」
カリナはユウマの手を取った。
「ユウマ……
あなたが選ぶ道を、私は守ります」
ユウマは深く息を吸い、
階段を降り始めた。
階段は長く、
空気は冷たかった。
壁には古い文字が刻まれている。
エレナが言う。
「この文字……読めないわ」
ガルドも首を振る。
「古代語か……?」
ユウマは壁を見つめ、
眉をひそめた。
(この文字……
どこかで見たことがある)
カリナが静かに言った。
「ユウマ。
あなたは読めるはずです」
ユウマは驚いた。
「俺が……?」
カリナは頷いた。
「前世のあなたは“光の王の伴侶”。
光の言語を理解していました」
ユウマは壁に手を触れ、
文字をゆっくりと追った。
すると――
意味が“浮かび上がるように”理解できた。
「……“鍵は世界の均衡を決める者”……
“光にも影にも属さず、選択によって世界を動かす”……」
エレナが息を呑む。
「それって……
ユウマのことじゃない!」
ガルドも驚く。
「鍵って……
本当に世界を動かす存在なのか……?」
ユウマは続けて読んだ。
「……“鍵が光を選べば、世界は浄化される”……
“鍵が影を選べば、世界は裁かれる”……
“鍵が王国を選べば、世界は停滞する”……」
エレナが震える声で言う。
「世界が……
ユウマの選択で……?」
ユウマは壁から手を離した。
(宰相が鍵を恐れた理由……
王国が鍵を利用しようとした理由……
全部つながった)
カリナが静かに言った。
「ユウマ……
あなたは“選択者”なのです」
ユウマは深く息を吸った。
(俺は……
世界の行き先を決める存在……
でも――
俺は戦えない。
ただの学生だ)
エレナがユウマの手を握った。
「ユウマ……
あなたは一人じゃないよ」
ガルドも言う。
「お前の選択なら、俺たちが支える」
カリナは微笑んだ。
「あなたが選ぶ未来を、私は守ります」
ユウマは頷いた。
「ありがとう。
でも――
まだ“鍵の本当の役割”は全部分かっていません。
宰相はその答えを知っている」
階段の先に、
巨大な扉が見えてきた。
扉には古代語でこう刻まれている。
“禁書庫――真実を求める者のみ入るべし”
ユウマは扉に手をかけた。
(宰相はこの中にいる。
そして――
“鍵の本当の役割”の答えも)
扉がゆっくりと開く。
暗闇の中で、
誰かの足音が響いた。
宰相グラディウスが、
禁書庫の奥で待っていた。




