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第31話 聖域の気配──揺れる想いと呼び声

光の聖域へ向かう旅は、

二日目の朝を迎えていた。


森を抜け、

小川を渡り、

北へ北へと進む。


空気は澄み、

どこか神聖な気配が漂っていた。


ガルド教官が地図を確認しながら言う。


「この先の丘を越えれば、

 光の聖域はもうすぐだ」


エレナが頷く。


「影の気配も薄いわ。

 今のところは安全ね」


ユウマは胸に手を当てた。


(でも……

 あの人の声が、少しずつ強くなっている)


――ユウマ……


(また……聞こえる)


エレナが心配そうに覗き込む。


「ユウマ?

 また胸が痛むの?」


ユウマは首を振った。


「痛みじゃないです。

 ただ……呼ばれている気がします」


エレナは少しだけ目を伏せた。


「……光の王に?」


ユウマは答えられなかった。


(あの人が“光の王”なのか……

 まだ確信はない。

 でも……俺を呼んでいるのは確かだ)


昼過ぎ、

三人は小さな丘の上で休憩を取った。


風が心地よく、

遠くには白い霧が立ち込めている。


ガルドが言う。


「見ろ。

 あの霧の向こうが“光の聖域”だ」


ユウマは息を呑んだ。


(あの中に……

 あの人が……?)


エレナがユウマの横に座った。


「ユウマ……

 少し話してもいい?」


ユウマは頷いた。


「もちろんです」


エレナはしばらく黙っていたが、

やがて静かに口を開いた。


「……ユウマは、

 光の王に会いたいんだよね」


ユウマは迷わず答えた。


「はい。

 あの人に……聞きたいことがあるんです」


エレナは寂しそうに微笑んだ。


「……そっか」


ユウマは気づいた。


(エレナさん……

 何か悩んでいる?)


ユウマは言った。


「エレナさん。

 何か……言いたいことがあるんじゃないですか?」


エレナは驚いたように目を見開いた。


「……ユウマって、

 本当に人の心を読むのが上手いわね」


ユウマは微笑んだ。


「探偵ですから」


エレナは少しだけ笑い、

そして真剣な表情になった。


「ユウマ……

 私、あなたに言っておきたいことがあるの」


ユウマは静かに聞いた。


「なんですか?」


エレナは深呼吸した。


「……私、

 あなたが光の王に会うのが……怖いの」


ユウマは驚いた。


「怖い……?」


エレナは頷いた。


「だって……

 あなたはあの人に呼ばれてる。

 あの人はあなたを守ってる。

 あなたは……

 あの人に惹かれてる」


ユウマは言葉を失った。


(惹かれてる……?

 俺は……)


エレナは続けた。


「私は……

 あなたが遠くへ行ってしまう気がして……

 それが怖いの」


ユウマは胸が締めつけられた。


(エレナさん……

 そんなふうに思っていたのか)


ユウマは言った。


「エレナさん。

 俺は……」


だがその瞬間――

風が止んだ。


空気が震え、

白い霧が揺れた。


ガルドが立ち上がる。


「……この気配……!」


エレナも剣を構える。


「影……?」


ユウマは胸に手を当てた。


(違う……

 これは……影じゃない)


――ユウマ……


ユウマの心臓が跳ねた。


(この声……

 あの人だ……!)


白い霧が丘の下から立ち上り、

風に乗って流れてくる。


ガルドが叫ぶ。


「来るぞ!!

 構えろ!!」


エレナも剣を握りしめる。


「ユウマ、後ろに!」


だがユウマは動けなかった。


(この気配……

 懐かしい……

 温かい……)


霧の中から、

赤い光がゆっくりと近づいてくる。


エレナが叫ぶ。


「ユウマ!!

 下がって!!」


ガルドも叫ぶ。


「影じゃねぇ……

 だが危険だ!!」


ユウマは呟いた。


「……違う。

 これは……」


赤い光が霧を照らし、

人影が浮かび上がる。


長い髪。

白い肌。

赤い瞳。


ユウマは息を呑んだ。


「……あなた……!」


エレナが驚愕する。


「この女性……

 王城でユウマを守った……!」


ガルドも叫ぶ。


「光の王……か!?」


女性は静かに微笑んだ。


「ユウマ……

 会いに来てくれたのですね」


ユウマの胸が熱くなる。


(本当に……

 あの人だ……)


エレナは震える声で言う。


「ユウマ……

 この人が……光の王……?」


女性はユウマだけを見つめた。


「ユウマ……

 あなたに……話したいことがあります」


ユウマは一歩前に出た。


「俺も……

 あなたに聞きたいことがある」


女性は微笑んだ。


「では……

 光の聖域へ行きましょう。

 そこで……すべてを話します」


エレナが叫ぶ。


「待って!!

 ユウマをどこへ連れていくつもり!?」


女性はエレナを見た。


その瞳は優しく、

しかしどこか寂しげだった。


「私は……

 ユウマを傷つけません。

 ただ……真実を伝えたいだけです」


ガルドが剣を構える。


「信用できるかどうかは別だ。

 ユウマを一人で行かせるわけにはいかねぇ!」


女性は静かに言った。


「あなたたちも来て構いません。

 光の聖域は……

 誰も拒みませんから」


ユウマは胸に手を当てた。


(あの人の声……

 嘘じゃない。

 俺を守ってくれている)


ユウマは言った。


「行きます。

 光の聖域へ」


エレナは唇を噛んだ。


「……ユウマ……」


女性はユウマに手を差し伸べた。


「ユウマ……

 あなたを待っていました」


ユウマはその手を取った。


(この手は……

 温かい)


エレナは震える声で呟いた。


「……ユウマ……

 あなたは……どこへ行くの……?」


ガルドは剣を収めた。


「行くしかねぇな。

 ユウマを一人で行かせるわけにはいかねぇ」


女性は静かに言った。


「では……

 光の聖域へ」


赤い光が霧を照らし、

ユウマたちは“光の王”と共に歩き出した。


その先で待つのは、

光の真実か、

影の罠か。


そして――

ユウマの運命を決める“告白”だった。

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