集会場の警備よっ!……あら、ホナミが来たわ。
300年前の話は全て終わったっ!
街の新たな研究棟は、前の物に比べて巨大なものだ。 今までには無かった研究所なども作られるようになり、ますます各種研究が活発化してきていた。
今までは小さくて場所が与えられていなかった研究会なども、大きな部屋を与えられることになった。 子供だけで構成する研究会なども場所を与えられるようになった。 よっしゃあ、みんなでワクワクして研究していこうぜぇっっ!!!
そんな中、冒険家のミツエダお姉さんの部屋も変わっていた。 大陸の向こう……『マーロ』まで行ったミツエダの功績は大きい。
ミツエダの部屋は、昔も割とちゃんとした部屋があったが、この新研究棟が出来るにあたって、さらに豪華な部屋に変わっていた。
部屋の中には異国の物や絵が、相変わらず所狭しと並べられている。 前は部屋の中は静かだったが、今は少し違った。 おもちゃのように動くものや、機械仕掛けのようなものまで置いてあるようにあり、ここもさらにヘンテコになってきているようだ。
部屋はドッカンと広くて大きくて、綺麗な白い石造りだった。 奥の方にはテラスがあり、青空が見えている。 部屋は高い場所にあるようで、遠くから風が通り抜けてきて気持ちがいい。
今ミツエダは仁王立ちして、外の景色を見つめていた。
……ふふん、私もいい感じになってきたな。 出世して、偉くなって、こんなに立派な研究室まで与えられた。 なんや、これからもっと偉くなって、王様にでもなってしまおうかっ?!!www ハーーッハッハッハッッ!!!wwww
……いや!!! 待てよ。
異国の物なんて、最近はしばらく見つかってないんや。 そろそろ、新しい冒険に旅立つ時っちゅうことやないかっ??!!
そろそろ平穏な日常にも飽きてきたしな。 ここらでヨウとかススキとか引っ張っていって、まったくヘンテコな場所にでも行こうか。 ……ふふ、ふはははああはっっ!!!wwww
ミツエダは一人で狂ったように叫んでいると、部屋に誰かが入ってきた。
「こんにちはー!」
「お、雨子ちゃん」
雨子が、部屋に入ってきていた。 いつものように楽しそうに、パタパタと走ってくる。
雨子はたまに、ここにやってくるんよ。 聞いた話では、雨子は色んな研究室に出入りしているらしいな。 好奇心が旺盛で、新しい情報が好きみたいなんよなー。
「なんか新しい話、ないですか?」
「んー、そうやな。 ……特に……」
2人が話を始めようとしていると、いきなり横の壁のほうから大きな音が聞こえた。 ミツエダは思わず壁のように振り向く。
どうやら向こうの部屋で、何かが起こったらしい。 静かだったのが突然騒がしくなり、人の声が壁を通してたくさん聞こえてくる。 雨子も驚いたような顔をして、横の壁を見つめている。
……なんや、変なことでもあったんか? 2人は部屋を出て、隣の部屋へ向かった。
隣の部屋は、ことば所だ。 新しい建物になり、研究所の配置なども変わっている。 ことば所には、いまはミツエダの部屋が隣接しているのだ。
ことば所はまだ新しい部屋への移行が済んでいないらしく、部屋のあちこちには整理されていない書類が山積みになっていた。
部屋を覗き込んでいくと、慌ただしい様子が目に入ってきた。 部屋の中で、職員の人たちが急いだ様子で動き回っている。 こんな平和な昼間に、いったい何の騒ぎだろう?
「なんや? ……お、どうした?」
ミツエダと雨子が怪訝そうに部屋を眺めていると、中から見覚えのある人が走ってきた。 ここで普段つとめているツムギちゃんだ。
「あぁ、雨子!」
「ツムギ。 どうしたの?」
見ると、部屋の中の人たちはみんなバタバタしているみたいだ。 入り口に走ってきたツムギちゃんは、仕事用の服を急いで脱ぎ捨てながら答える。
「また、新たな人が、乱雑に降霊されたって!」
「え? また?」
なんと、いきなりな話だ。
乱雑に降霊……。 この島で、また人が増えるような混乱が起こったってことだろうか。 それってまた前みたいに、後処理をしなきゃいけないってことっ?! ひーっ、めんどくさっっ!!!www
前回からそんなに時間がたったわけじゃないのに、もう二回目が来たらしい。 これからも、こういうことは続くということだろうか。
部屋の奥の方では、ことば所の所長が誰かと話しているようだった。 よく見ると、手に持った紙切れに向かって、電話のように声を出して話しかけている。 一見ヤバい人に見えるが、大丈夫だろうか。
入り口ではツムギちゃんが、外に出る支度を整えていた。 部屋を勢いよく出ていきながら、手伝いを頼んでくる。
「ちょっと、手伝ってくれない?」
「私も手伝うで」
ミツエダも横から名乗り出た。 面倒やけど、自然現象なら受け入れるしかない。 よーし、さっさとやってしまおうっ!!
3人は部屋を飛び出して、研究棟の外へと向かった。
そのころ街の一角では、ハナのやったことについての対処を話し合うための、会議が開かれていた。 集会場のような小さな木造の建物が立っていて、その中で話し合いが行われている最中のようだ。
近くには、建物の周りを歩いて警備をしている人たちが何人かいた。 小春もその一員のようで、建物の横をブラブラと歩いているのが見える。
小春は歩きながら、ぼんやりと遠くの景色を眺めていた。 ……あー、今日の昼ごはん、何食べるかしらねえ。
最近は城とか店で食べるのもマンネリ化してきたし、ちょっと趣向を変えてみてもいいかも。
自然の中でご飯を食べるとかしてみようかしら。 木の枝に座って森の景色を見ながら、カッ〇ラーメンとか食べてみたりね。 ズゾゾッ!つって。
そんなことを考えていると、ふと聞きなれた声がやって来た。
「小春ー」
「ん? ……あぁ、ホナミ」
振り向くと、ホナミが向こうから歩いてきていた。 今日は宙にフワフワ浮かずに、地面をしっかりと蹴って歩いているみたいだ。 普通なのになんだか新鮮で、逆に不自然なのにびっくりしてしまう。
ホナミは警備をしている私に近づいてくると、揃って歩きだした。 私がゆっくり歩くのに、歩調をそろえて歩いているみたいだ。
私が無言で歩き続けていると、ホナミはひとりごとを言うように、ぼそっと話し始めた。
「……東の海岸って、おいしい貝が取れるところがあるんだよ。 みんな知らないけど、結構大きくてね。 焼いて食べると、おいしいんだ」
「ふーん。 あぁ、そう」
私は適当に聞き流しながら、相槌を打つ。
ホナミはたまに、こんなことをする。 ふらっとやって来て、少しだけ喋りたいことを喋って帰っていくのだ。
他の人もホナミのことがよく分かんないらしいけど、まあそれは分かるわね。 私もだいぶ長く一緒にいるけど、この子のこと全然分かんないし。
「その近くは、川の水がきれいで、魚も結構泳いでてね。 昔とは少し違うけど、今も、そんなに変わってないんだ。 スズネに、その近くに生えてる食べられる草を、最近教えてきたんだけど」
放っておくと、どんどん喋る。 それにこの子、本当に散歩ばかりしてるわね。 いつものことながら、私はちょっと呆れた。
……そういえば、ホナミも300年前の出身だった。
イトや街の長のハルと同じ時代で、幼いながらも全く同じ時間を生きていたと聞いた。
でも今回の『時のはざま』の事件では、まったく影も形も無かった。 少しは手掛かりになるようなことを知ってるかと思ったけど、結局そんなこともなかった。
聞けばホナミも睡眠薬で眠らされて、蔵の中で普通にぐうぐう寝ていたらしい。
あんなおどろおどろしい事件がすぐ近くで起きてたっていうのに、この子らしいというか……。 本当にのんきなものねえ。
「あんた、相変わらずねえ。 ……それ、今度私にも教えてよ」
食べられる草のありかを、ちゃっかり聞いてみる。 ホナミは島の自然に詳しいから、もしかしたら凄くおいしいものかもしれない。
ホナミは顔を上げると、こっちを少し見つめた後に、小さく頷いた。
小春は前に向き直り、ゆっくりと歩き続けた。 息を吐いて腕を伸ばして、気持ちよく伸びをしていく。
「はー! あー、いい天気ねえ」
ホナミは隣で一緒に歩きながら、そんな小春の横顔を観察するようにじっと見つめていた。 少しして、ホナミがぼそっと呟くように言う。
「……小春、元気だね」
ひょっとして、ホナミは小春が最近元気が無いのを気にかけていたのかもしれない。 いま話をしに来たのも、それが理由なんだろうか。
しかし当の小春は気づかないのか、その言葉に振り向いて、不思議そうな顔をして答えた。
「え? 当たり前じゃない、何言ってんのよ。 私から元気取ったら、風しか残らないわよ」
キャァァァッッッ!!!! かっこいいわあぁぁぁっっっ!!!!wwwwwwwwww さすが私の姉貴分だわっっ!!! いいわよ小春、素敵いぃぃつっっ!!!www
そう思ったのかは知らないが、ホナミは笑って頷いた。
2人がそんな会話をしていると、今度はどこからかいきなり別の声が聞こえてきた。 小春の髪飾りから、通信で誰かが呼ぶ声がする。
『小春?』
この声は、スズネの声だ。 あら、何かあったのかしら。 小春は髪飾りに手を当てて、返事をした。
「スズネ? 何?」
『小春、また、降霊の乱れが起きたみたいでね!』
「え? また?」
通信で話をする小春の横で、ホナミも懐から髪飾りを取り出していっているようだった。 ホナミも一応、髪飾りは持っているらしい。
……ていうか、降霊の乱れ?! またあの混乱が起こったっていうの? まったく、面倒くさいわね。
気づくと、その場にはミツバと、物静かすぎるクルミもやって来ていた。 朝の漁の仕事が終わったのか、いつものようにゆったりとした足取りで歩いてくる。
「よーっす。 どうかしたか?」
混乱のことを知らないのか、慌ただしい様子の2人を見たミツバは不思議そうに聞いてくる。 見るとミツバは髪飾りをつけておらず、通信の声は聞こえていないらしい。 あぁ、もう! ちょっと今通信してんのよ。 後で話すから待ってなさい。
小春は近づいてくる2人を見ながら、しっしっと手を振って邪魔しないでと示しつつ、通信相手のスズネに答えていく。
「今、警備の仕事やってんのよ。 あとで行くから、先にやってて」
『あぁ、分かったー』
「……どうした?」
ミツバは顔を近づけてきて、小春の髪飾りの音を聞こうとしてくる。 ぎゃーっ!! いきなり何よ! 小春はそれに気づいて、嫌がるように体を飛びのかせた。
「ちょっと! 近づかないでよ、持ってるでしょ、髪飾り!」
「あれ、つけるの恥ずかしいんだよ……」
ミツバは顔をしかめて言う。 一応ミツバも、髪飾りを持っているらしい。 男はつけるのをためらう人が多いから、しょうがないって? 関係ないわよ、あんたもつけときなさい。
2人がイチャイチャ喧嘩していると、今度は近くで集会場の扉が開いた。
「あら、終わった?」
見ると、集会場からは人が出てきていた。 どうやら会議は終わったようだ。 街の偉そうな人たちが、喋りながら続々と出てくる。
大人の人たちに混じって、身を縮めて肩身が狭そうにしながら出てくる女の子がいた。 見るとハナだ。 話し合いを終えてどうなったかは分からないが、すぐに逮捕拘束されるというわけではないらしい。
「ハナ! あんたも、手伝いなさい!」
小春は入り口へと近づきながら、声をかけていく。 うつむきがちに歩いていたハナは顔を上げて、状況を知らないのか困惑した表情を浮かべた。
状況は、再び変わってきた。 街では新たな降霊が起こり、また混乱の状況になってきてる。 身を縮めてる暇なんてないわよっ! あんたも街の一員になるんなら、ビシバシ働きなさい。
入り口からは、別の見慣れた人も出てきていた。 街の長のハルが、相変わらず瑞々しい少女の姿でテキパキと動いている。
小春は同じようにして、ハルにも声をかけていった。
「ハル! また乱れが起きてるみたいよ!」
見ると、ハルは既に髪飾りをつけていた。 話し合いに参加している間にも、ずっとつけていたみたいだ。
すでに事態は把握しているらしく、ハルは素早く頷いて答える。
「うん、知ってる。 さっさとやっちゃおうか!」
そういって、ハルはニカッと爽やかに笑う。 それを見て、小春は手を勢いよく叩いた。
「お! そうよ、早く終わらせましょ! ……ほらホナミ、あんたも来るのよ。 よし、出発進行っ!」
小春のかけ声とともに、みんなは走り出した。 さあ、混乱なんてちゃちゃっと片づけてしまおうっ!!
俺がいい感じに収拾してやるよ。(マツリ)




